◎ グラム陰性菌、薬剤耐性:NDM-1、KPC

Colistin と tigecycline が治療薬の唯一の選択肢となることもある
PRO/EDR> Gram negative bacilli, resistant, update (01): NDM-1, KPC 20101028.3908
中国、イスラエル(インドで交通事故により入院)、ブラジル、米国からの報告
[Mod.ML- New Delhi metallo-beta-lactamase-1 (NDM-1) 産生_Enterobacteriaceae_ 腸内細菌はこれまでに、英国、米国、カナダ、オーストラリア、日本、スウェーデン、ベルギー、オランダ、台湾、そして今回の中国とイスラエルから報告されている。感染あるいは保菌患者の多くが、インドやパキスタンに美容整形などの治療のために渡航して母国に持ち帰ったものである。このような症例が母国で入院すれば NDM-1 産生菌の院内感染が起きる可能性がある。NDM-1 は carbapenems (imipenem や meropenem などの βラクタム系抗生物質) に耐性を示す一部の _Enterobacteriaceae_ から産生される酵素で、aztreonam (monobactam 系薬剤) を除くすべての他の βラクタム系抗生物質に対しても耐性を示すとされる。さらに NDM-1 産生の分離菌は aztoreonamに対しても耐性を示すことが多く、他のメカニズムが関与していることが示唆される。NDM-1 は同時に、フルオロキノロン fluoroquinolones やアミノグリコシド aminoglycosides といった抗生物質に対しても耐性を示すことがあり、NDM-1 producing bacteria に対して効果を示すのは Colistin tigecycline だけと言う事もあり得る。これらの薬剤には深刻な副作用があり、より簡便な治療法に比べ使用されにくく(inferior )費用もかかる。_Enterobacteriaceae_ のカルバペネム耐性は NDM-1 によるものだけではなく、the Verona integron-encoded metallo-beta-lactamase (VIM) carbapenemases や the _Klebsiella pneumoniae_ carbapenemases (KPC) という別のメカニズムによるものもある。これらのcarbapenemases により、多剤耐性グラム陰性菌による数々の感染症治療の切り札であった 抗生物質カルバペネムの効果が脅かされている。NDM-1 と同様、KPC ならびに VIM も、カルバペネム以外の penicillins や cephalosporins などの他の βラクタム系抗生物質の効果をも失わせる。KPC を産生するのは、肺炎桿菌 _K. pneumoniae_ や大腸菌 _Escherichia coli_ などの腸内細菌科の菌が多いが、他にも緑膿菌 _Pseudomonas aeruginosa_ やアシネトバクター_Acinetobacter_ といったグラム陰性菌からも産生されることがある。そもそもは緑膿菌からクローンが分離された the VIM-1 gene が腸内細菌でも見つかったという経緯がある。NDM-1, KPC, and VIM を規定する遺伝子は mobile genetic elements (可動遺伝要素) 上に存在するため、同種のみならず、異種 different species のグラム陰性菌への移動が可能で、抗生物質耐性の拡大の主因となっている。対策としては、臨床検体の培養により carbapenem-resistant _Enterobacteriaceae_ が確認されれば、保菌者・感染患者ともに隔離し、場合により、point prevalence surveys または ハイリスク患者の active-surveillance testing を行うとされている (CDC: Guidance for control of infections with carbapenem-resistant or carbapenemase-producing _Enterobacteriaceae_ in acute care facilities. MMWR 2009; 58: 256-60)]