2010年10月26日

◎ インフルエンザ D222G と重症度 Journal of Virology
E 型肝炎 英国、ブタのレバーソーセージ

◎ インフルエンザ:D222G と重症度
PRO/AH> Influenza (10): D222G & severity
Archive Number: 20101026.3881
 情報源: Imperial College London, New Release、2010年10月22日
死亡患者に関連のあった variant of last year's [2009] pandemic influenza には、気道上の異なる上皮 different subset of cells への感染を可能にする変異があったことが、新たな研究で示された。the Journal of Virology 誌に掲載のこの研究結果によると、変異したウイルスは肺の germs 排出能を傷害する可能性がある。この variant of the virus は、ウイルス表面の蛋白に D222G と名づけられた変異があり、この型のウイルスに感染すると、患者はより重症化したり死亡したりしやすくなる。
[Mod.CP- the D222G mutant virus には、the haemagglutinin molecule の222番目の位置での、アミノ酸の置換(aspartic acid is replaced with glycine)が存在する。WHOによれば、the D222G mutation があったのは pandemic influenza A(H1N1) 患者全体では1.8%以下であるにもかかわらず、死亡患者では7.1%に上っている。今回の研究によると、the D222G mutation を持つインフルエンザウイルスは、繊毛細胞と呼ばれる細胞にあるレセプターを含む、より多くの気道のレセプターに結合することが可能であった [論文の原文では micrograph showing the airway lining, with hair-like projections visible on ciliated cells] ... 繊毛による異物排除と、感染がそれを妨げることなど...]
[Mod.CP- 原著 "Altered receptor specificity and cell tropism of D222G haemagglutinin mutants from fatal cases of pandemic A(H1N1) 2009 influenza." Journal of Virology, November 2010, Volume 84, Issue 22.  
要約 
the hemagglutinin of pandemic influenza A(H1N1) 2009 viruses のレセプター結合部位の変異が確認されている(sporadically)。また Asp222Gly (D222G) substitution(置換)と重症度や死亡との関連性が認められている。今回 222G variants が培養ヒト気道上皮細胞において(nonciliated cells を標的とする 222D or 222E と比較して) 高頻度に ciliated cells に感染することを確認した。Carbohydrate microarray analyses の結果、222G variants は有毛気管上皮細胞及び肺内上皮上に発現するより広範囲の 2-3-linked sialyl receptor sequences に結合することが示された。このような特徴が 222G mutants による重症化に関係すると考えられる。
the authors' comment) 
the D222G mutation が、重症下気道感染の原因であるか、結果であるかは未解決である。しかし(この変異の)発生により疾患が重症化することは明らかである。The altered receptor specificity ならびに distinctive cell tropism (向性) of the D222G mutants of H1N1pdm は病原体の危険度の指標であり、ウイルスの変化を注意深く監視することが重要である"]

● E型肝炎 英国
PRO/AH> Hepatitis E, foodborne - UK (02): (England) background 20101026.3875
[1] Background
[Re: ProMED-mail Hepatitis E, foodborne - UK: (England) 20101023.3849]
 情報源: GIDEON (Global Infectious Disease & Epidemiology Network) 、2010年10月24日
欧州内で、E型肝炎の自所内感染例が増加しつつある。事実、イングランドと Wales ウェールズは、域内の他国と比較して、報告率が高い。
[2] コメント
 投稿者:ノルウェー・Norwegian Defence Research Institute、Lt Col Per L Lausund DVM MPH、2010年10月25日
以下の参考文献を紹介したい
Pig liver sausage as a source of hepatitis E virus transmission to humans. J Infect Dis. 2010 Sep 15; 202(6): 825-34
フランス国内で、広く食され、主に生で食べられることの多い、ブタの肝臓のソーセージである figatellu を食べた患者(7/13) の血清検体と、スーパーで売られているソーセージ(7/12)から、抗HEV IgG および IgM 、HEV RNA が検出された。食べたことのない人からは検出されなかった(0/5)。

● ポリオ インド
PRO/EDR> Poliomyelitis, vaccine derived - India: (TN) 20101026.3880
[1] 3例の新型でまれなポリオウイルスの感染患者が報告された
 情報源: Deccan Chronicle 、2010年10月26日
2010年、Tamil Nadu タミルナド州で、3例の新型でまれなポリオ Poliomyelitis ウイルスの感染患者が報告され、医療関係者を悩ませている。乳児のときにthe oral polio vaccine (OPV 経口ポリオワクチン) を接種した Tirupattur(Vellore district)の9歳の少女が麻痺を生じ、OPV 中の弱毒化した生ワクチンウイルスが変異した vaccine-derived polio virus (VDPV) ワクチン由来ポリオウイルス), type-2 が確認された。2009年には21例もの VDPV が確認されている。この小児は免疫システムが低下していたため、摂取された OPV のウイルスを長期間排除することができず、VDPV が発生したと説明されている。VDPV を防ぐ唯一の方法は、OPV を the inactivated polio vaccine (IPV 不活化ポリオワクチン) に変更することで、複数の途上国では IPV に転換されているという。
[2] cVDPV - WHO data
 情報源: Polio eradication initiative website
Circulating vaccine-derived poliovirus (cVDPV) 2000 - 2010 (as of 12 Oct 2010)
国名:型:2000 / ..中略/ 2009 / 2010 / 1st case / last case
ナイジェリア: VDPV 2: - /.. / 16 / 2  Jul 2005 / 26 Aug 2010
DR Congo: VDPV 2: - /../ 4 / 8 / 22  Mar 2008 / 13 Aug 2010
アフガニスタン: VDPV 2: - / .. / 3 / 10  Jun 2010 / 2 Jul 2010
ニジェール***: VDPV 2: - / ../ - / 1 / 28  May 2006 / 1 Jun 2010
エチオピア: VDPV 3: - / .. / 1 / 5 / 27  Apr 2009 / 17 May 2010
インド: VDPV 2: - / .. / 15 / 1   14 Jun 2009 / 18 Jan 2010
ソマリア: VDPV 2: - / ../ 4 / -   29 Jun 2008 / 24 Dec 2009
ギニア***: VDPV 2: - /../ 1 / -   [6 May 2009] / 6 May 2009
エチオピア: VDPV 2: - / -.. / 1 / - / 4  Oct 2008 / 16 Feb 2009
ミャンマー VDPV 1: - / ../ - / -  9 Apr 2006 / 6 Dec 2007
カンボジア: VDPV 3: - / ../ - / - 26 Nov 2005 / 15 Jan 2006
インドネシア: VDPV 1: - / ../ 46 (2005)/ ...-   9 Jun 2005 / 28 Oct 2005
マダガスカル**: VDPV 2: - / 1 / 4 / ...  NA / 13 Jul 2005
中国: VDPV 1: - / - / - / - / 2 ... 13 Jun 2004 / 11 Nov 2004
フィリピン: VDPV 1: - / 3 / ... 15 Mar 2001 / 26 Jul 2001
ドミニカ共和国/ハイチ: VDPV 1: 12/ 9 / ...  12 Jul 2000 / 12 Jul 2001

● デング熱・デング出血熱
PRO/EDR> Dengue/DHF update 2010 (54) 20101026.3878
[1] ベトナム (Da Nang)
 情報源: Viet Nam News (VNS)、2010年10月19日
Da Nang 市の病院で、2週間で250人以上がデング熱と診断された。2010年のこれまでの患者数は、およそ3000人となった。2009年同期の6倍増となった。
[2] ベネズエラ
 情報源: El Universal、2010年10月19日
非公式の報告ながら、2日までの疫学第39週現在、累積のデング熱患者数は97000人で死者は72人以上と発表された。64% にあたる59 967人が 7 Venezuelan states(Miranda, Zulia, Merida, Tachira, Lara, Aragua, and the Capital District)から報告されており、 もっとも多いのは Miranda with 12 628 case (13%) .... 13例に1例が DHF である。
[Mod.TY- ベネズエラのデング熱流行としては最悪と報告されている。以前の報告で all 4 dengue viruses (1,2,3, and 4) が感染循環しているとされているが、どのタイプが優位であるかは示されていない。]
地図 the states in Venezuela
[3] ブラジル (Goias)
 情報源:Terra [in Portuguese]、2010年10月23日
州保健当局が22日に発表した、1月から10月16日までのデング熱による死者数は66人であった。2009年の38人と比較し、73.3%の増加となった。患者数は99494人で、2009年同期の215%増と報告されている。
[4] ブラジル (Sao Paulo, Campinas)
 情報源: EP Campinas 、2010年10月18日
19日に発表された数字によると、 Campinas city における2010年のデング熱流行は、過去3年間で最悪であり、史上2番目に多いことが分かった。2月から6月までにデング熱と確定された患者は2563人で、4倍の患者が発生した2007年に次ぐ数字となっている。
地図 the states in Brazil
[5] 各国 : インド、ネパール、パキスタン、台湾、メキシコ、サンマルタン
 - インド (Delhi), 24 Oct 2010 : 新たに81 new cases, 合計患者数は 5063人となり, 8人が死亡した
 -  (Uttar Pradesh and Lucknow), 23 Oct 2010: この2日間, 100人超の患者が発生し、最多 (45) の地域は Lucknow 、州内では 924 with 6 deaths. 2010年の Lucknow の陽性例は 282。
 -  (Chennai), 25 Oct 2010: 2010年、州内で296人が陽性となったが、死者はなし。しかし、私立病院から死者の報告あり。
 - ネパール, 23 Oct 2010:疫学当局から 3 deaths and confirmed 350 dengue cases to date this year (2010)
 - パキスタン (Lahore), 25 Oct 2010:市当局の数字によると 689人。州全体では、807人
 -  (Sindh), 23 Oct 2010: the Sindh Health Departmentは、1639人が dengue virus 検査陽性となった。死者は 15人に
 - 台湾, 21 Oct 2010: 新たに 4才のDHF患者を含む3人の患者発生し、8月以降 658人の患者が発生: 256 imported cases
 - メキシコ (Sonora), 20 Oct 2010: from 1 Jan-15 Oct 2010, 647 confirmed
dengue cases 、2009年の10倍増
 - サンマルタン St Maarten (Netherlands Antilles), 26 Oct 2010: the Dutch side of St Maarten is "bordering on a dengue fever epidemic." 4 Oct [2010]までの確定患者は 105人

● 出血熱 パキスタン:WHO
PRO/AH/EDR> Hemorrhagic fevers - Pakistan: WHO 20101026.3877
 情報源: WHO Global Alert and Response (GAR) Disease Outbreak News 、2010年10月25日 FORTH
Crimean-Congo hemorrhagic fever and dengue in Pakistan
15日現在、the IHR [International Health Regulations] National Focal Pointである、パキスタン保健省は、死者3人を含む、26人の Crimean-Congo haemorrhagic fever (CCHF クリミアコンゴ出血熱) の患者を WHO に報告した。パキスタン国内には、CCHF およびデング熱が常在しており、季節によって患者数が増加する。しかし最近、国内のCCHF とデング熱の発生件数の増加と発生地域の拡大が見られている。先のパキスタンの洪水の影響も示唆される。

● コレラ ハイチ
PRO/EDR> Cholera - Haiti (04): (AR) 20101026.3876
[1] Emergency Operations Center (EOC) - situation report 4: cholera outbreak in Haiti
 情報源: Pan American Health Organization (PAHO)、2010年10月25日
-25日現在のコレラ患者数3342人、死者259人
-12か所: 6 in Artibonite, 1 in Central, and 5 in Port-au-Prince に治療センターを設置
-ドミニカ共和国での発生は確認されていないが、国境での監視を計画している
[2] doxycycline に耐性ではない
 情報源: Praecipio International、2010年10月25日
doxycycline に耐性ではない。doxycycline, ciprofloxacin, and cotrimoxazole に感受性を持つが、ampicillin と Bactrim に耐性である。
[* Bactrimは ST合剤の商品名で cotrimoxazole とも呼ばれている。従ってこの感受性データは、ST合剤に感受性があると同時に耐性であるという、欠陥情報である]

● トマト・トウガラシの原因不明のウイルス メキシコ
PRO/PL> Undiagnosed virus, tomato and capsicum - Mexico: (SI), alert 20101026.3884
 情報源: Noticieros Televisa [in Spanish]、2010年10月26日
農業省は、Sinaloa のトマトならびにトウガラシの生産に影響する、植物病原性ウイルスの流行に関する、植物衛生注意喚起を発表した。200ha以上にウイルスの被害が発生している。この注意喚起は、感染する可能性のあるすべての作物に対して出されている。

● 狂犬病(EBLV)、コウモリ フランス
PRO/AH/EDR> Rabies (EBLV), bat - France: Champagne-Ardenne 20101026.3882
 情報源: La Semaine des Ardennes [in French]、2010年10月25日
L'Agence nationale de securite sanitaire (The National Health Security Agency 国立健康保安局) が、Secheval [Champagne-Ardenne, ベルギー国境] で死亡していたコウモリ1匹が、狂犬病に感染していたことを確認した。ヒトや動物との接触はなかったと見られている。フランス国内では、この20年間に50例のコウモリの狂犬病が記録されている。このタイプの狂犬病は、陸上動物 (イヌ、キツネ)の狂犬病とは異なっている ... フランス国内(本土?、the territory of metropolitan France)では、1924年以降、ヒトの狂犬病感染は報告されていない ... コウモリは useful mammals であるが、脆弱で少産であるため、フランスおよび欧州内では、法律によりすべての種のコウモリが保護されている。生死に関わらず、殺傷、捕獲、取り扱い、売買のための移送は厳しく禁じられている。
[Mod.AS- The distribution of rabid bats in Europe, for the period 1990-2009 at the web-site of the Rabies Bulletin, Europe (Rabies Information System of the WHO Collaboration Centre for Rabies Surveillance and Research) : The map of France for the period 1990-2009, shows 46 cases.]