2010年10月30日

◎ カンピロバクター、クリプトスポリジウム感染症 米国 ミルク
エボラ出血熱 ウガンダ、2007年の致死率

◎ カンピロバクター、クリプトスポリジウム感染症 米国
PRO/AH/EDR> Campylobacteriosis, cryptosporidiosis, raw milk - USA: (MN Minnesota)
Archive Number: 20101030.3939
 情報源: Associated Press 、2010年10月28日
新たに7人の患者について、2010年に発生した大腸菌 [O157:H7] 感染流行の原因とされている Sibley County の農場の生ミルクとの関連が確認されたと、28日に州保健当局が報告した。生ミルクを飲んでいた3人の患者がカンピロバクター_Campylobacter jejuni_ と呼ばれる菌に感染しており、他の 4人がクリプトスポリジウム  _Cryptosporidium parvum_ という寄生虫に感染していた。情報筋によると農場名は the Hartmann Dairy Farm とされている。ほとんどの患者は、今夏にこの農場から採取された細菌や寄生虫と遺伝学的に同じ菌や寄生虫による感染であることが、検査で確認されている。いずれに感染した場合も、発熱、下痢、嘔吐などの同じ症状を発症する。クリプトスポリジウム症は、免疫力が低下した患者では死亡につながることもある。
[Mod.LL- 従来から生ミルクの摂取に関係するとされている人獣共通感染病原体には、ブルセラ菌 Brucella abortus_, _Brucella melitensis_, 非定型抗酸菌 _Mycobacterium bovis_, サルモネラ菌 _Salmonella_ species, リステリア菌 _Listeria monocytogenes_, カンピロバクター _Campylobacter_ species, エルシニア菌 _Yersinia_ species, コクシエラ菌 _Coxiella burnetii_, and 大腸菌_E. coli_ O157:H7 などがある。人獣共通感染疾患ではないが生ミルク摂取に関係するものとしては,化膿連鎖球菌 _Streptococcus pyogenes_, チフス菌 _Salmonella_ Typhi, コリネバクテリウム菌 _Corynebacterium diphtheriae_, 赤痢菌 _Shigella_ species, パラチフス菌 _Salmonella_ Paratyphi A, _Salmonella_ Paratyphi B, 黄色ぶどう球菌性エンテロトキシン enterotoxins from _Staphylococcus aureus_, and A型肝炎 hepatitis A などがある。
未殺菌のミルク摂取に関係するこの他の疾患についても記載された報告から,以下の部分を紹介する(出典:Milk and Infectious Diseases in Humans. Clin Infect Dis 2006; 43: 610-5、引用文献の数字は打ち直している);
マサチューセッツ Massachusetts 州で1996 年と1998 年に起きた2つの事例では狂犬病のウシのミルクに rabies virus が存在していた可能性があり、理論上(狂犬病ウイルスの) transmission via unpasteurized milk も起こりうる。 殺菌処理 pasteurization の温度でウイルスは死滅する。80人がこの2頭のウシから取ったミルクを殺菌処理せずに飲み、別の9人はウシの唾液に接触していた。89人全員が曝露後接種を受け、1人も狂犬病を発症しなかった。オクラホマ Oklahoma 州でも2006年に、the consumption of raw milk or cream from a rabid cow の事例が発生した。
人獣共通のアルボウイルス arbovirus 感染症であるダニ媒介性脳炎 Tickborne encephalitis は、中欧・東欧・ロシアに常在するダニ _Ixodes persulcatus_ or _Ixodes ricinus_ tick(刺咬)により感染する事が多い。しかし tickborne encephalitis に感染したウシやヤギのミルクからもウイルスが検出され、未殺菌ミルクの摂取によるヒトへの感染伝播の可能性も指摘されている。ただし1編の case-control study においては oral transmission を証明できなかった。
後に Brainerd diarrhea と命名された1983-1984年にミネソタ州 Brainerd の住民122人に起きた下痢症症候群では、超急性に発症し、全身症状を伴わず、一般的な治療や抗生物質に反応せず、平均病悩期が長期化する(16.5か月)という特徴を持っていた。この症候群は、1か所の農場からの生ミルク摂取と関連していた。etiologic agent は一切検出されなかった。この農場から出荷される全ての乳製品を diverted(回避?転換?)し、殺菌 pasteurized したことで、the outbreak of Brainerd diarrhea が鎮静化した ... その後の  Illinois and Texas 州の例では、ミルクとの直接の関連性はなかったが、感染伝播の原因としてウシのいた場所付近の井戸水が疑われている。生ミルクとは無関係であったが Brainerd-like diarrhea は cruise ship visiting the Galapagos Islan(エクアドル Ecuador)の乗客 58人(15% of 394 passengers)に発生している]

● エボラ出血熱 ウガンダ 致死率
PRO/AH> Ebola hemorrhagic fever - Uganda: (BN), CFR 20101030.3934
 情報源: CIDRAP News 、2010年10月28日
Ebola studies detail fatality rate
2007年 Uganda's Bundibugyo district において発生した、新たな株 strain のエボラウイルスによる感染流行に関する詳細な報告によると、他の2種類のヒトへの病原性をもつウイルス株と比較して(このウイルスによる感染流行の)致死率 case-fatality rate (CFR) が低いことが明らかになった。米 CDC とウガンダ政府当局の研究者らが27日、Emerging Infectious Diseases において報告した [Case Fatality Proportion of Deaths for Infection with Ebola Hemorrhagic Fever, Uganda ]。
Zaire および Sudan Ebola strains による感染流行時のCFRは 50-90% の範囲にあるが,Bundibugyo strain と呼ばれるウイルスによる2007年の流行時の CFR は40%(17/43)だった。ヒトにとって危険な他の2種類のウイルス株同様,Bundibugyo strain は高齢者での致死率がより高かった。致死率がやや低いものの、この新たなウイルス株は公衆衛生上の懸念であり、ヒト-ヒト感染が認められた点を研究者らは指摘している。
[Mod.CP- これまでの報告には、実際の患者数と死者数が示されていなかった。しかし、確定患者数が以前の数字より少ない]

● コレラ ハイチ
PRO/EDR> Cholera - Haiti (07): strain analysis 20101030.3938
[1] 国連キャンプ内でコレラ感染が発生したという証拠はない
 情報源: NPR 、2010年10月30日
米国 CDC において、ハイチのコレラ Cholera 菌の詳細な分子学検査が行われているが、その由来の同定には至っていない..コレラによる致死率は、当局の目標値は1%未満であるが、およそ6%(330/4700) にとどまっている。ハイチでは、感染流行の中心地にある町の首長が、ネパール人兵士が、母国から近郊の国連平和維持軍キャンプ地に持ち込んだとの内容をほのめかしたため、コレラ菌の由来が話題になっている。ネパール国内では今夏コレラ感染が流行してはいるが、国連キャンプ内でコレラ感染が発生したという証拠はない ...
[2] コレラの検査を受けたのは81人、34人が陽性
 情報源: Sify 、2010年10月20日
... 保健省当局者によると、4714人の患者のうち、コレラの検査を受けたのは81人のみで、このうち34人が陽性であったことを明らかにした。確定患者のうちの26人は outbreak の中心となっている the Artibonite Valley の住民である。

● Largemouth bass virus 米国
PRO/AH/EDR> Largemouth bass virus - USA: (VA) 20101030.3940
 情報源: Richmond Times Dispatch (Virgina)、2010年10月29日
Officials looking into Briery Creek die-off
この報告を読者から受け取ったのは around late June 2010 のことで : Briery Creek Lake で魚が死んでいる。"Have you heard anything about this?" と言う内容の電子メールだった ... the die-offs の原因として現在考えられているのは a combination of intense heat と largemouth bass virus (LMBV) 感染症 ...

● 口蹄疫 ネパール
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease - Nepal: susp., RFI 20101030.3943
 情報源: The Himalayan Times、2010年10月29日
Rara VDC in Mugu で今週、foot-and-mouth disease [FMD 口蹄疫] により50頭以上の家畜が死亡した。当局者は FMD が Rum, Gilaha, Kucche, Kalai, Bista Danda and Jaisi villages of wards numbers 1, 2, 3, 4, 5 and 6 at Rara VDC に感染が広がっていることを明らかにした。数百頭のウシが感染しているという。ヤギ40頭とウシ10頭、oxen5頭が死亡した。

● 訃報:Graham Elmore Kemp, 1927-2010
PRO/AH> Obituary: Graham Elmore Kemp 20101030.3937
 投稿者:Tom Monath、2010年10月30日
アフリカの人獣共通ウイルス感染症のカナダ人研究者