2010年11月2日-3日

原因不明の麻痺性疾患 コンゴ共和国

● 原因不明の麻痺性疾患 コンゴ共和国
PRO/AH/EDR> Undiagnosed paralytic illness - Rep of Congo: (PN), RFI 20101102.3973
 情報源 Casafree [Trans. ]、2010年11月2日
Congo: 8 dead in Pointe-Noire in an epidemic related to poliomyelitis
2週間近く前から、ポリオ類似の感染流行がコンゴの経済と産業の中心である Pointe-Noire を襲っている。すでに8人が死亡し、20人の患者が報告されている。2日コンゴ保健省が発表した。インフルエンザ様症状で入院となった患者らが、足から上肢へと拡がる麻痺を発症したと、保健大臣である教授が説明した。今回の流行では、小児が感染することの多い(通常の)ポリオと異なり、10歳代若年成人の間に感染が広がっていると説明した。the DG of Health は消化管に感染するウイルスの1種が原因である可能性があるとしている。すでに WHO には報告されている。
[Mod.MPP- 上行性の麻痺という短い記載からは、末梢神経の炎症性脱髄を伴う自己免疫疾患の Guillain-Barre syndrome (GBS ギラン・バレー症候群) のようでもある。GBS はしばしば、呼吸器や消化器の病気 (特にカンピロバクター症 campylobacteriosis) に続発することがある。亜急性の進行性・対称性の手足の筋力低下 weakness に腱反射の消失を伴う。知覚異常や脳神経病変、呼吸筋麻痺なども起こりうる。good supportive care ができる地域では致死率は低い。GBS とポリオとの明らかな鑑別点 notable distinctions としては、ポリオウイルス感染に伴う麻痺患者の90%に residual paralysis(麻痺が遺残する)のに対し、GBS ではおよそ90%の患者が麻痺を残さず完治することがある。ほかに、ポリオでは純粋な motor deficit 運動障害で知覚は保たれるのに対して、典型的な GBS では the motor impairment を伴った知覚鈍麻 significant sensory deficits が見られる点である。GBS が有機リン中毒 organophosphate poisoning に伴なって発生することもある。この報道記事には麻痺が flaccid (弛緩性)なのか spastic (痙性)なのかについての情報がない。spastic (痙性)ならば、キャッサバイモのシアン毒による konzo と呼ばれる病態にも関係する。enterovirus 71 による灰白髄炎や、Echovirus 7 感染によるポリオ様麻痺も報告されている。
Pointe-Noire は沿岸部にある都市で、シーフードに含まれる paralytic shellfish poisoning やtetrodotoxin などによる可能性も考えられる。特に the outbreak が  "raging" と表現されていることから、急速に拡大していることが示唆される。an outbreak of a poliomyelitis-like illness で最も可能性の高い原因(the most common etiology)は、野生株ポリオウイルス wild poliovirus (WPV) 感染である。teenagers と adults に多い事も intensive National Immunization Days(全国一斉予防接種デー)の実施により WPV 感染循環が途絶したことで起きる、より年長者での the accumulation of pockets of susceptibles(ある年齢層での感染感受性のある患者の蓄積)で十分説明できる。コンゴで最後に WPV 感染によるポリオが報告されたのは2000年 (WPV1 date of onset 29 Sep 2000 and WPV3 date of onset 28 Nov 2000) である。報告された致死率 CFR が28.6 percent or 40 percent(死亡患者8人が、患者20人に含まれるのか含まれないのか、はっきりしない)と高いことは、ポリオ polio としてもギラン・バレー症候群 GBS としても異常である。the ProMED-mail archives を検索すると,2006 年に Maranhao Brazil で原因不明の麻痺性疾患により7人が死亡し、ほか24人が入院している(20060622.1727) 。集団発生のあった Maranhao 州の貯蔵米の citreoviridin-producing _Penicillum citreonigrun_ による large outbreak of beriberi -- thiamine deficiency ビタミンB1 欠乏、脚気-- であるとの調査結果が報道されている]
[* 20101104.3996(2010年11月4日)でポリオと確認]

● コレラ ハイチ(2件)
PRO/AH/EDR> Cholera - Haiti (10): increased cases
Archive Number: 20101103.3986
 情報源 Agence France-Presse 、2010年11月3日
3日、ハイチ国内のコレラ Cholera 感染による死者が442人になった。10月30日以降、新たに105人の死者が発生し、患者数は40%増加したとの数字が、10月29日に保健省から発表された。
[Mod.LL- The tropical storm Tomas は勢いを弱めているようであるが、予想されている降水量は4-6インチで、感染流行を深刻化させる可能性がある]

PRO/EDR> Cholera - Haiti (09): PAHO 20101102.3968
[1] PAHO report
Emergency Operations Center (EOC) - situation report 9: cholera outbreak in Haiti
 情報源 Pan American Health Organization (PAHO) 、2010年11月1日
MSPP [Ministere de la sante publique et de la population/Ministry of Public Health and Population] から、患者数に関する新たな報告は発表されていない。最新のデータ( Sat 30 Oct 2010)によると: 4764 cases and 337 deaths, reported in 4 different departments.となっている。
[2] Biosurveillance blog report
Haiti: operational biosurveillance
 情報源 Biosurveillance.typepad.com 、2010年11月1日
10月29日の時点で、PAHO は4700人超の患者と、330人超の死者を報告している(粗致死率は約7%)。MSPP から1日の新たな発表が行われないため、PAHO は最新の数字を発表することができない。メディアから出された数字から、死者の数が340人に近いことが示唆される。コレラ感染患者のうち、臨床症状を示すのが25%とすると、実際の患者数は19000人近くになる。報告されていないものも含め、およそ4万人が感染したとわれわれは見ている
[3] Commentary
 情報源 David Thomson 、2010年10月30日。

● 炭疽 英国
PRO/AH/EDR> Anthrax, human - UK (24): (England) 20101103.3985
 情報源 UK Health Protection Agency 、2010年11月3日
The Health Protection Agency (HPA 健康保護局) は Kent の病院で3日、炭疽 Anthrax 感染治療中の患者1名が死亡したことを確認した。薬物使用者の間の数あるリスクの1つとなっている、重症感染症によるものと説明した
[Mod.MHJ- 2010年イングランドで4例目の患者となった: London の2名(February and March 2010; one died), と the Northwest (August 2010, Leicestershire) および the East Midlands (February 2010, Blackpool) の2名(両名とも死亡) である]

● ポリオ アフリカ、WHO-AFRO
PRO/EDR> Poliomyelitis - worldwide (24): Africa, WHO-AFRO 20101103.3978
[1] ナイジェリア (Kano, Sokoto, Katsina): suspected
Fresh polio fear hits Kano, Sokoto, Katsina
 情報源 Leadership Editors 、2010年10月30日
ナイジェリア政府当局と国際機関がポリオとの闘いでの勝利を喜ぶ中、北西部3州でのポリオが再興した可能性がある。各州1例ずつの、野生株3型ポリオウイルスの患者の発生が疑われているのは、Kano, Sokoto, and Katsina States である...
[Mod.MPP- "suspected" と記載しながら、wild poliovirus type 3 (WPV3) の感染が疑われるとしていることから、疑い患者が laboratory identification of the WPV3 があったことが示唆される]
*All 3 states mentioned (Kano, Katsina, and Sokoto) are in the north and border with Niger.
[2] WHO-AFRO multicountry update
 情報源 World Health Organization Regional Office for Africa (AFRO)、2010年10月26日
Africa seizes chance against polio

アフリカ15か国で小児7200万人を対象とした a synchronized mass immunization campaign について

● チクングニア熱 インド
PRO/EDR> Chikungunya (32): India (UP Uttar Pradesh) 20101103.3977
 情報源 The Indian Express、2010年11月1日
デング熱ウイルスと同じ蚊族により伝播される、チクングニア熱 Chikungunya の州内初の患者が Lucknow から報告された。Shyama Prasad Mukherjee Civil Hospital(Apoorva)から搬送されたこの患者は、チクングニアウイルス感染の検査で陽性となった。州内での患者発生は2年ぶりとなる。
[Mod.TY- この地域では最近死者も発生した原因不明の発熱疾患 "mystery fever" が報告されていた。マラリアやデング熱も示唆されていたが、診断検査が行われたのはごくわずかだった。一部はチクングニアウイルス感染も関係していると考えられるが、死亡例には関係していないと思われる。2010年、Delhi, Tamil Nadu, and Maharashtra states でチクングニア熱が報告されている]

● セントルイス脳炎 米国
PRO/AH/EDR> St. Louis encephalitis - USA (03): (TX) conf. 20101103.3975
 情報源 Corpus Christi Caller Times、2010年11月1日
Nueces County の男性1名が、蚊族の刺咬により感染が伝播される St. Louis encephalitis [SLE セントルイス脳炎] のため治療を受けている。2010年に入って2例目の患者となっている。この男性は入院したが、現在は自宅から通院していると公衆衛生当局が述べた。2週間前の10月18日の週に当初ウエストナイルウイルス West Nile virus 感染の患者とされていた男性が、実際はセントルイス脳炎の患者であったと発表されている。1990年以降、テキサス Texas 州内で74人の患者がセントルイス脳炎ウイルス感染の検査で陽性となっている。ウエストナイルウイルスと違い、セントルイス脳炎には spurts (消長)があり、何年間もヒトでの感染は発生していなかった。1995年を最後にテキサス州では死亡は発生していない。
[Mod.TY- 20101021.3811で、州内で2例目の Nueces County の SLE ウイルス感染が疑われる患者について報告していたが、回復して何よりである。SLEV は野鳥から _Culex_ mosquitoes (イエカ属蚊族)を介してヒトに感染し,sporadic outbreaks を起こしたり、 areas where it is endemic で散発性の感染を発生させてたりしている]

● 出血熱 パキスタン
PRO/AH/EDR> Hemorrhagic fevers - Pakistan (02) 20101102.3974
[1] シンド Sindh province
Crimean-Congo hemorrhagic fever virus detected in 2 patients
 情報源 Samaa News 、2010年11月2日
カラチ Karachi の私立病院に入院中の患者2名からクリミア・コンゴ出血熱 Crimean-Congo hemorrhagic fever (CCHF) virus が10月28日に確認された。これまでに全国で29人の CCHF ウイルス感染患者が確認されているとの情報がある...
[Mod.CP- 10月26日にパキスタン保健省と WHO から26 cases of CCHF and 3 deaths. が報告されている。Karachi (Sindh province) から今回新たに2人の患者が報告された。別の1人の死亡患者はカウントされないままとなっている。]
[2] Khyber Pukhtoonkhwa province
Hemorrhagic fever deaths in Abbottabad

 情報源 The Express Tribune 、2010年11月2日
Crimean-Congo hemorrhagic fever (CCHF) と[もしくは?] デング熱の感染により、4人が死亡したと報告されている。国立保健研究所は、さらに4人の CCHF ウイルス感染患者が the Ayub Teaching Hospital Abbottabad (Khyber Pukhtoonkhwa province) にいることを確認している。以前の CCHF 患者ら4人はすでに退院した。Abbottabad ではこれまでに、150人以上のデング熱患者が確認されている。
[3] パンジャブ Punjab province
CCHF virus: Health Ministry unaware of 12 deaths
 情報源 Online News 、2010年11月2日
保健省は Crimean-Congo hemorrhagic fever (CCHF) virus infection による死者12人を把握していなかったことを認めた。Holy Family Hospital Rawalpindi (Punjab province) の医療関係者9人を含む12人が、ウイルス感染により死亡した。

● 小反芻獣疫 アフリカ南部 : FAO からの警告
PRO/AH/EDR> Peste des petits ruminants - Southern Africa: FAO warning 20101103.3988
 情報源 FAO Press release 、2010年11月2日
タンザニアで2010年に爆発的流行が起きている、致死性ウイルス性疾患の Known as Peste des Petits Ruminants (Small Ruminants' Plague 小反芻獣疫、PPR) の感染がアフリカ南部にも波及し、15か国の50万頭以上のヒツジとヤギが死亡する可能性があると、2日 FAO が警告した。PPR に感染したヒツジやヤギの致死率は100%とも言われ、ヒトへの直接の影響はないものの、社会経済的な大打撃をもたらせる...

● ブルータング 欧州
PRO/AH/EDR> Bluetongue - Europe (05): declining 20101103.3987
 情報源 Farmers Guardian 、2010年11月2日
Bluetongue [BT ブルータング] が欧州本土からほぼ一掃された見られることが,the European Commission が発表した統計から判った。the BTV8 strain と中心とする感染流行が2007及び2008年の欧州全体を席巻した。フランスでは2008年だけで32000頭が感染している。この数字が2009年に大きく減少し、ひきつづき2010年にはさらにその数を減らしている。the European Commission から発表された incidence of BTV 8 はわずか2件となり、他のウイルス株も同様の傾向が見られている。
The breakdown by serotype and member state for this year [2010] is as follows:
BTV 1: Spain 36 cases, Italy 4, Portugal 2, France 1
BTV 2: Italy 12
BTV 4: Italy 2, Spain 2
BTV 8: Italy 2 (both near French border)
BTV 9: Italy 3
BTV 16: Greece 2

● 小麦の病気,Wheat stem rust, Ug99 ケニア
PRO/PL> Wheat stem rust, Ug99 - Kenya: (RV), update 20101103.3976
 情報源 UN Integrated Regional Information Networks (IRIN) News 、2010年10月28日
Wheat stem rust hits Rift Valley (RV) farmers
Wheat stem rust Ug99 (小麦さび病)による Kenya's Rift Valley region の農家に対する脅威が続いている。2009年11月から続く湿潤(Wet and misty)気候 が Ug99 への対応を一層困難なものにしている。小麦農家の80%に被害が及んでいる。spraying を行っても the rust が発生すると、農業関係者は嘆いている。およそ11 000種類の wheat varieties (品種)を調べたところ,some resistance to Ug99 を有するものは2%に満たなかった。
[Mod.DHA- Wheat stem は真菌の_Puccinia graminis_ f. sp. _tritici_ を原因とするが、 New races が新興しており、現在最も危険な菌は strain Ug99 (discovered in Uganda in 1999) である。現在の耐性品種に使用されている the major resistance gene Sr31 も感染を防ぐことができなかった。ウガンダでの発見後、ケニア、エチオピア、イエメン、イランでも発見されており、新たな耐性品種にも感染するさらに強力な variants of Ug99 が、Kenya's Rift Valley in 2009 (20090312.1019). などに発生している。最近、南アフリカから A new source of Ug99 strains が報告され、南半球に新たな routes of transmission と increasing the threat がもたらされた(20100602.1834)]

● 粘液腫症、ウサギ スペイン
PRO/AH/EDR> Myxomatosis, rabbit - Spain: (CE) 20101102.3969
 情報源 El Faro Digital [in Spanish]、2010年11月2日
セウタ Ceuta 自治市の Animal Health area 内の2か所 MonteHacho and Garcia Aldave で、野生のウサギの粘液腫症 the myxomatosis outbreak が発生した。9月末に Monte Hacho で死亡して発見されたウサギの検体の検査でわかった。