2010年11月24日-25日

原因不明の疾患 イエメン
Nairobi fly リベリア

● 原因不明の疾患 イエメン
PRO/EDR> Undiagnosed disease - Yemen: (HU) RFI 20101125.4246
[1] 人口の 40%が罹患したが、死者は報告されていない
 情報源: Yemeni Times 、2010年11月22日
発作性の高熱を伴う原因不明の病気が、首都サヌア Sana'a から 200km西の Hodeida [Al Hudaydah] の複数の地区に広がっていると、現地医師が伝えている。夜間に解熱するこの感染流行が、荒地で低温になりやすい、Hodeida の農村部一帯に広がり、特に30歳以上の成人が最もかかりやすいと説明している。2009年にも、この地域に同じような病気が発生したが、今年 (2010年) は特にひどく、2009年は人口の 1%だった患者が、2010年にはおよそ 40%になったとされている。これまで死者は報告されていないが、麻痺を発症する可能性があり、発熱により、関節痛や頭痛が起きると、この医師は説明している。しかし、現地衛生当局は、通常の発熱 (感冒) であり、心配する必要ないとしている。
[2] Strange epidemic ravaging western Yemen
 情報源:? (translated from Arabic)、2010年11月21日
イエメン西部 Hodeidah 州の多くの地域に、原因不明の病気が流行し、5人が死亡し、さまざまな年齢層の患者 ・ 数千人が発生している。現地の情報によると、感染が流行し始めたのは 1か月前で、現在は the "Zabid -- Beit al-Faqih --Nectarine" まで拡大している。これまでに、the Nectarine city で 5人が死亡し、ほか数千人の感染が発生しており、その多くが昏睡 coma に陥っている。市民らはパニック状態にある...死者が発生したのは、医療事情の悪い農村部で、その地域では "Almkrvs" と呼ばれる病気であることが分かった。この病気は、高熱が出て、治療しない場合は昏睡に陥ってしまう。インフルエンザ様症状のほか、頭痛や顔面・関節の腫脹、身体の震えなどの症状が報告されている。口、鼻からの出血と、皮下出血、下痢、嘔吐、立位や歩行困難なども報告されている。患者に対する医学的調査で、血液中からあらゆる感染症が見つかっているとの情報がある。治療としては、グルコース、ビタミン、鎮痛剤の投与などに限られている。2004年の調査によると、この地域の住民は 210万人であるが、全人口が感染する危険性もある...
[Mod.SH- 2つの報道には、詳細もトーンにも違いがあり、可能性のある原因が想定しにくい。患者が多いという点は一致している。死者は 0 もしくは少数のようである。]
[Mod.CP- 最近のイエメンでは、マラリア、デング出血熱、インフルエンザの大規模な流行が発生している。]
[Mod.EP- 短期間 (数ヶ月) のスパンを持って、限局した地域に大規模な流行をもたらせていることから Crimean Congo haemorrhagic fever, hantavirus, or Rift Valley fever などのベクターによる人獣共通感染症は考えにくい。新たな型のウイルス導入によるデング出血熱も候補ではある。髄膜炎菌感染症は、敗血症、DIC、粘膜出血などを伴うが、髄膜炎ベルト以外での大規模流行の可能性は低くいものの、高い致死率の説明は可能である。レプトスピラ症でも DIC を発症することがあるが、大規模流行には通常水系の暴露が関係するので、今回のケースでは、すべての地区にいて飲料水の汚染が発生したという説明が必要となる。空気中の炭疽芽胞による伝播では散発性となることが多く Alkhurma virus はまれで、感染動物との直接的な接触による拡大となるので、このような多数の患者発生を説明できない]
地図 the provinces and cities of Yemen

● Blister beetle (Nairobi fly) リベリア
PRO/EDR> Blister beetle (Nairobi fly) - Liberia: (CM) RFI 20101125.4252
 情報源: The Inquirer 、2010年11月23日
Skin disease spread in Grand Cape Mount County
Robertsport(in Grand Cape Mount County [Liberia] )市内一帯で、伝染性の皮膚病の自然感染拡大が発生し、当局は患者である市民に対して、感染拡大防止のため一切の移動を控えるよう求めている。患者数は増加しており、最新の報告によるとこの皮膚病の患者は75人を超えている。病院への取材で、この病気の原因は、"Nairobi fly" とよばれるハエであることがわかった。専門家の話によると、この病気が初めて確認されたのがケニアのナイロビ Nairobi 市であることからこの名前がついたという。リベリアでは3件目の報告であり、シエラレオネからも報告されたことがある。
[Mod.EP- Beetles of the genus _Paederus_は East Africa では Nairobi fly と呼ばれており、皮膚に接触した際に acute, painful toxic epidermolysis (表皮融解) を生ずる (Fox R. Paederus (Nairobi fly) vesicular dermatitis in Tanzania. Trop Doct. 1993; 23(1): 17-9 and Poole TR. Blister beetle periorbital dermatitis and keratoconjunctivitis in Tanzania. Eye (Lond). 1998; 12(Pt 5): 883-5). ]

● コレラ ハイチ
PRO/EDR> Cholera - Haiti (24): update, WHO
Archive Number: 20101125.4256
[1] Latest morbidity and mortality
 情報源: Global News, Agence France-Presse (AFP) report 、2010年11月25日
25日現在、コレラによる死者は、2日間で1415人から1523人に増えた。
[2] WHO update
 情報源: WHO Global Alert and Response (GAR) 、2010年11月24日 FORTH より
2010年11月20日の時点で、ハイチ保健人口省(MSPP)は、全国で1,415の死亡例を含む、累積60,240例のコレラ症例が生じたことを報告しました。 全国の病院での致死率は2.3%で、死亡例の67%は公共医療機関で死亡し、33%は地域で死亡しています。ポルトープランスおよび首都地域(Carrefour, Cite Soleil, Delmas, Kenscoff, Petion Ville, Tabarre, Croix des Bouquets)では、95例の死亡例を含む5,778症例が報告されました。
11月19日に、ドミニカ共和国保健省は、2症例が検査でコレラ陽性と確認された、と報告しました。 1例は入院しており、そして、もう1例はサントドミンゴ(Santo Domingo)州の自宅で治療を受けています。

● 狂犬病 インドネシア
PRO/AH/EDR> Rabies, human - Indonesia (18): (Bali) 20101125.4254
 情報源: Malay Peninsula Standard, via Bali Animal Welfare Society 、2010年11月24日
Rabid dogs kill 2 people
Banjar Gentong, Tegallalan の 13歳の少年 1名が、23日に狂犬病で死亡した。3ヶ月前の 8月 17日の運動会中にイヌに咬まれた。父親によると Gentong で狂犬病で死亡したのは 2人目で、1人目は 35歳の男性だという。当局より Banjar Gentong から野良犬を一掃するよう指示が出されている。医師は、狂犬病患者の多くが、暴露後接種や創処置を受けていないと説明した。2008年末から 2010年にかけて 123人の狂犬病が疑われる患者が治療を受け、うち 75人が死亡した [Mod.CP- 生存者は狂犬病に感染していなかったのだろう] 。 23日の時点で、別の 2人の狂犬病疑い患者が Nusa Indah Hospital で治療を受けている ... イヌには咬まれていないが、ネズミによる咬傷を受けたという患者は、3日前にバイクから落ち、狂犬病のような痙攣の症状があるという。
[Mod.CP- 寄せられたコメント; バリ島の狂犬病患者の正確な数字は今もはっきりしていない。2日前の報告では、”疑い患者は現在 106人で、うち 46人が検査の結果狂犬病陽性であった” とされている。現在、手元に 79人の狂犬病による死者の年齢、性別、発生場所の記録があるが、130人に及ぶ可能性もある。ラットは感染すると直ちに死亡するため、狂犬病ウイルスのベクターとなることはまれである。しかし、鼠族退治には、主にイヌが使われていたのだが、イヌが駆除されてしまった地域では、ネズミによるヒト咬傷の機会が増加することとなる ... この患者の診断は未定であるが。The Bali Animal Welfare Association は支援を得てワクチンプログラムを計画しているが、用語の解釈の齟齬による、多くの戦略上の誤解がある。たとえば先日一部の担当者から "ring vaccination" (vaccinating around an outbreak) と "circle vaccination" (vaccinating in the outbreak area and surrounding radius) の違いについての説明を求められた。ほかにも混乱させるものとして、何年も前から注射の "shot" と銃射撃の "shot" が混同されてきた。私見ながら、ワクチン接種を ”shot” と呼ぶ人には vaccinated (事前に周知する?) しなければならないのではないだろうか]

● 腎症候性出血熱 ロシア
PRO/AH/EDR> Hemorrhagic fever w/renal synd. - Russia (09): (TT) 20101125.4253
 情報源:Tatar-Inform News Agency [in Russian]、2010年11月20日
Increase of hemorrhagic fever with renal syndrome in Tatarstan
タタルスタン Tatarstan 共和国で12日から 18日にかけて、新たに 12人の haemorrhagic fever with renal syndrome (HFRS 腎症候性出血熱) 患者が発生した。Rospotrebnadzor [Federal Agency for Consumer Protection and Welfare] 当局によれば、首都カザン Kazan の 3人、Almetevsk regionの 2人と、7地方の各 1人ずつである。
[Corr.VM、Mod.CP- 20101029.3928 では、10月末の累積患者数が 17人であったところ、1週間だけで 12人の患者が発生したことから、Tatarstan では HFRS の流行シーズンに突入したと考えられ、主要キャリアである vole の繁殖活動が活発化したことを反映している .. Puumala virus is the specific hantavirus responsible for this outbreak of HFRS in Tatarstan, and the rodent reservoir is the bank vole (_Myodes glareolus_)]

● 麻疹 パキスタン
PRO/EDR> Measles - Pakistan: (SD) 20101125.4244
 情報源: The Muslim news, IRIN report 、2010年11月24日
南部のシンド Sindh province Dadu district では、すでに 11人が麻疹 Measles により命を奪われている。農村部の多くで、助産師は医師の役目も担っており、医療器具は乏しい。国連の関係機関の担当者は、Eid-al-Adha [17 Nov 2010] までに、ワクチン接種活動を開始するとしている。
地図 Sindh province showing the location of Dadu

● ハンタウイルス-チリ
PRO/AH/EDR> Hantavirus update 2010 - Americas (38): Chile 20101124.4232
 情報源 Canaldenoticias.cl [in Spanish]、2010年11月23日
今週末に the Collipulli Hospital で死亡した若年患者について、ハンタウイルス Hantavirus 感染が疑われている。保健当局は、検査結果未到のため確認できないとしている。死亡したのは 23歳の女性で、Colipulli 近郊の the San Andres rural area に幼い 2人の子どもと暮らしていた。
[Mod.TY-この地域におけるハンタウイルス肺症候群の原因ウイルス the hantavirus responsible for HPS [hantavirus pulmonary syndrome] は Andes virus と考えられる]
地図 Collipulli is part of the Malleco Province in the Araucanía Region in southern Chile

● インフルエンザ WHO
PRO/EDR> Influenza (15): WHO update
Archive Number: 20101124.4243
 情報源 WHO Global Alert and Response (GAR) 11月22日

● 口蹄疫 ザンビア
PRO/AH> Foot & mouth disease - Zambia: (NO) 20101125.4245
 情報源: OIE 、2010年11月24日
感染開始時期 2010年9月22日
前回流行時期 2009年12月
原因ウイルス foot and mouth disease virus Serotype: O
新たな感染流行
発生地 Chizombwe, Mbala Central, Mbala, Northern 農村
感染した種/ 頭数 / 感染数 / Deaths / Destroyed / Slaughtered
ウシ / 2920 / 72 / 0 / 0 / 0
現在 FMD 発生中のタンザニアとの国境沿いで、感染発生

● Fowl pox 鶏痘、鳥類-ニュージーランド: ペンギン
PRO/AH> Fowl pox, avian - New Zealand: penguin 20101124.4233
 情報源 Otago Daily Times、2010年11月24日
Avian diphtheria hits yellow-eyed penguins
Otago Peninsula 南部の yellow-eyed penguins に avian diphtheria の流行が発生している。ヒナが孵化したばかりの大事な時期に発生したもので、当局による保護が必要とされている。
[Mod.TG- Fowl pox (avian diphtheria, pox, canker) は、世界中のあらゆる年齢のあらゆる鳥類に発生する。 avian pox viruses の感染が原因である。Pox viruses は、single, linear, double stranded DNA viruses で all species and age の家禽の慢性疾患の原因となる。蚊族の刺咬や、キズ、目などへの機械的なウイルス伝播が主な感染経路で、野鳥がウイルスの保有宿主となっている。潜伏期間は 4-10日間で、2種類の病型が知られている; the cutaneous (dry) or diphtheritic (wet)]
写真 yellow-eyed penguins

● 鳥インフルエンザ、家禽か渡り鳥か アジア
PRO/AH> Avian influenza, poultry vs migratory birds (06): Asia 20101124.4231
 情報源 CIDRAP News, FAO、2010年11月22日
Satellite tracking suggests wild birds may spread H5N1 in Asia
衛星を使ってアジア地域の野鳥を追跡した結果、H5N1 鳥インフルエンザは、春の北帰行の際に、インドやチベットからモンゴルにもたらされることが示唆されることが、国連機関 the United Nations Food and Agriculture Organization (FAO) からの最近の報告により明らかになった。16日の FAO AIDE News において、2005年に 6000羽以上の野鳥が鳥インフルエンザにより死亡した、中国の青海湖 China's Qinghai Lake にたびたび現れる水禽を追跡した結果、この結論に至ったと述べられている。この大流行のあと、FAO と米国の地勢調査機関が、11か国で 525羽の水禽に GPS transmitters を装着し、その移動を追跡した。青海湖で死亡したトリの半数近くが、bar-headed geese であった。調査の結果、青海湖でタグをつけられた bar-headed geese のほとんどが、チベットのラサ the Lhasa region of Tibet もしくは インドで冬を過ごしていた。H5N1 のアウトブレイクが発生していたその地域で家禽と接触しており、ウイルスが家禽から野鳥に感染伝播したものと FAO は見ている。もしそうであるなら、中アジア飛行路 the Central Asian Flyway の東側にいる野生の水禽が、毎年春に the Qinghai-Tibetan plateau を北方及び東方に超えて、H5N1 高病原性鳥インフルエンザをモンゴルに運んでいたことになる、と記事に書かれている。最も興味深いのは、毎春、渡りの経路の北側の終着点で、野鳥のアウトブレイク発生が繰り返されるというパターンは、ほかの渡りの経路では見られない点で、このことが、野鳥が果たす鳥インフルエンザの疫学上の役割を理解することを難しくしている、とも説明されている。FAO の図によると、モンゴルで初めて H5N1のアウトブレイクが報告されたのは 2005年 8月のことであり、最新の流行は 2010年 5月に発生している。OIE は、2006年と 2009年にもモンゴルで H5N1が流行したと報告しており、いずれも野鳥での発生であった ...