2010年12月20日-21日

Xenotropic murine leukemia virus-related virus

● Xenotropic murine leukemia virus-related virus
PRO/AH/EDR> Xenotropic murine leukemia virus-related virus (02)
Archive Number: 20101220.4488
 情報源 Reuters Health 、2010年12月20日
これまで慢性疲労症候群 chronic fatigue syndrome (CFS) と呼ばれる厄介な病態と関連があるとされていた,XMRV [xenotropic murine leukemia virus-related virus(異種指向性マウス白血病ウイルス関連ウイルス)] が(実際には)この疾患の原因ではなく,(疾患の原因だとした) 従来の研究結果は検査室内での混入によるものだったとする研究結果を、 University College London, the Wellcome Trust Sanger Institute and Oxford University の研究者らが 20日発表した。以前行われた研究では、患者からの細胞サンプルがマウスの DNA 内にある XMRV によって汚染されていたとしている。(CFSの)患者は XMRV には感染しておらず、発病のきっかけになった可能性はないと報告した。医学雑誌 Retrovirology に掲載されたこの論文の内容は、101人の CFS patients のうちの 62人の血液から同ウイルスが検出され、 XMRV and CFS の関連性が示唆されるとした2009年の U.S. study の結果と相反するものである。The XMRV virus は前立腺がんの患者の一部でも検出されている。今回の論文の研究者は "Our conclusion is quite simple: XMRV is not the cause of chronic fatigue syndrome, ... the sequences from the virus genome in cell culture have contaminated human chronic fatigue syndrome and prostate cancer samples." と述べている ... CFS に関する解説、The 2009 U.S. study など。
[Mod.CP- XMRV は mouse DNA 内のウイルスで、2006年に発見され、その後 prostate cancer や chronic fatigue syndrome の患者らからも検出された。Chronic fatigue syndrome は英国内におよそ 25万人の患者がいると考えられており、extreme tiredness (極度の疲労)、記憶や集中力障害、睡眠障害、気分変動などの症状がある。現在有効な治療法として認められているものはない。chronic fatigue syndrome and the virus の関連性を認めたとする論文が、2009年に第1線の科学雑誌 Science に掲載されている。今回の最新の論文 (Disease-associated XMRV sequences are consistent with laboratory contamination. Retrovirology 2010, 7:111 (20 Dec 2010) [Abstract] [Provisional PDF])では、この関連性が認められなかったと報告している : これからも論争が続けられることは間違いないが、 the negative evidence of an association の方がthe evidence for a positive association を凌いでいるようである]
関連項目
Xenotropic murine leukemia virus-related virus: blood supply probe
20100406.1100

● マラリア スリランカ,インド(2件)
スリランカ
PRO/EDR> Malaria - Sri Lanka
Archive Number: 20101221.4498
 情報源 ColomboPage 12月21日
Malaria makes a comeback in Sri Lanka
保健省は島内のマラリア the spread of malaria が25%拡大したと明らかにした。2010年の保健省の統計で850例の感染が報告された。

インド
PRO/EDR> Malaria - India (12): (Mumbai) 20101221.4496
 情報源 Mumbai Mirror 、2010年12月21日
New malaria cases in Mumbai related to building site
KEM [King Edward Memorial] hospital の研修医ら 10人が、致死性の熱帯熱マラリアに感染した。このうち3人は状態が悪化し、集中治療室に移った

● 炭疽 英国
PRO/AH/EDR> Anthrax, human - UK (27): (Scotland) 20101221.4497
 情報源 The Sun、2010年12月21日
炭疽 Anthrax 菌の混入したヘロインへの注意を呼びかけたことで、2010年のスコットランドにおける薬物使用による死亡が減った。警察の発表した数字によると、地域内で薬物に関連して死亡した人の数が、2009年の 50人から、2010年は 32人に減少した。

● インフルエンザ WHO
PRO/AH/EDR> Influenza (22): WHO update 123 20101221.4495
 情報源 World Health Organisation (WHO), Global alert ad Response (GAR), influenza 、2010年12月17日(ただしアクセスできるようになったのは20日)
要約 
前回(3日)の更新以降、欧州各地、特に英国で、インフルエンザ Influenza 感染の活動性が増しており、各国での冬期インフルエンザ感染流行期開始が示唆されている。北半球の温帯地方の、東アジアや北米でも、インフルエンザの活動性は増している。世界的に、influenza A(H3N2), B, and H1N1 (2009) viruses が、共に感染循環 co-circulating しており、優位ウイルスについては、かなりの地域差がある ... 以下、北半球温帯域の国々、熱帯域の国々、南半球温帯域の国々、ウイルス学的サーベイランス (米国内で swine-origin triple reassortant A(H3N2) viruses のヒト感染例確認)(英国内の患者での優位ウイルスは influenza A H1N1 (2009) and B で、ワクチン株に抗原性・遺伝学的にマッチしている)、FluNet reports (59カ国のインフルエンザセンターからの報告: *日本は、Influenza A(H3N2)とInfluenza B を報告)...
[Mod.CP- ... the A/H1N1 (2009) viruses には、the vaccine virus と比較して several amino acid substitutions が認められているものの、前回のパンデミック時と比較すると抗原性の有意の変化はない。 the A (H3N2) triple reassortant swine virus in humans についても、異常な重症化傾向は確認されていない。総括して the current seasonal vaccine は、well matched to the epidemic strains currently in circulation と言える]

● コレラ ハイチ、ドミニカ共和国
PRO/EDR> Cholera - Haiti (29): update & Dominican Rep. 20101220.4484
[1] ハイチ: update
 情報源 Agence France-Presse (AFP) 、2010年12月19日
ハイチ国内のコレラ感染による死者が、19日に示された公式の数字で 2500人を超え、2535人となったことが保健省から発表された。感染した 11万4497人中、およそ 5万7千人が病院で治療中である...ピーク時の 11月には、2日間で 60人から80人に達することもあった。
[2] ドミニカ共和国: update
 情報源 Dominican Today 、2010年12月17日
公衆衛生省は17日、全国で新たに 8人のコレラ患者が確認され、合計 46人となったことを明らかにした。San Juan de la Maguanaで 4人,以下 2 in Banica, Elías Pina province, 1 in Santo Domingo East and 1 in Jimaní, Independencia province.が確認された。患者の年齢は 15歳から49歳で、全員が治療後健康状態を回復している。

● デング熱
PRO/EDR> Dengue/DHF update 2010 (62) 20101220.4483
[1] ホンジュラス
 情報源 : Terra [in Spanish]、2010年12月18日
the head of the National Dengue Program of the Ministry of Health は、この30年で最悪の流行だと報道陣に述べた。1月から今週までにデング熱と確定診断された患者数は 66646人に上り、このほかに DHF の患者が 3099人あり、81人が死亡したと述べた。全国で1週間に 6000人の患者が発生したピーク時を過ぎ、発生数は急激に減少しつつあり、現在は約 90人となっている。
[2] Cases in various countries
 - オーストラリア ex Bali, Indonesia. 17 Dec 2010. more than 430 reports of dengue infections so far this year (2010), most associated with the Indonesian island of Bali. ;the 130 cases last year (2009) 、with 95 cases in 2008 and 55 cases in 2007.
 - サウジアラビア(Jeddah). 17 Dec 2010. 26 significant mosquito breeding sites in Jeddah and 2219 recorded cases of Dengue fever this year (2010).
 - メキシコ (Sonora). 19 Dec 2010. Hermosillo市の水不足から、 water storage.が増加。 州内で3157 cases ( 2744 in Hermosillo, where 3 deaths have been confirmed.)
 - ブラジル (Mato Grosso do Sul). 19 Nov 2010. between 3 Jan - 11 Dec 2010, there were 47 dengue deaths and 81 863 total dengue cases in the state.
 - ブラジル (Rio de Janeiro). 14 Dec 2010. Between 3 Jan - 4 Dec 2010, 27885 dengue cases and 39 deaths were registered in the state compared to 12 403 cases and 12 deaths during the same period last year (2009).

● 鳥インフルエンザ 日本 HPAI H5,韓国 LPAI H7N2(2件)
PRO/AH/EDR> Avian influenza (64): Japan (TY) HPAI H5, Zoo birds, OIE 20101221.4492
 情報源 OIE WAHID (World Animal Health Information Database) Disease Information 2010; 23(49) 、2010年12月20日
Highly pathogenic avian influenza, Japan
感染開始時期 2010年12月16日
前回流行時期 2009年4月1日
原因ウイルス Highly pathogenic avian influenza virus Serotype H5
新たな感染流行
発生地 高岡古城公園動物園、古城、高岡市、富山県
感染した種 野鳥 Wild species
Susceptible 14
Cases 4
Deaths 4
Destroyed 10
Slaughtered 0
Affected Population: Captive(捕獲された) wild birds 10 mute swans (4 mute swans died) 2 ducks 2 black swans
疫学情報 16日、公園職員により、堀の中で死亡した2羽の野鳥の mute swan (Cygnus olor、コブハクチョウ)が発見され、19日にHPAI の感染が確認された。16日中に県獣医学センターで、 antigen-capture kits によりインフルエンザ A ウイルスの感染が確認され、19日に国立動物衛生研究所において、HI 検査により H5 亜型のインフルエンザ A ウイルス感染と診断された。また、ヘマグルチニン接着ペプチドのアミノ酸配列が、高病原性鳥インフルエンザウイルスに一致した。現在、ノイラミニダーゼ阻害アッセイが行われている。20日、同研究所は、4週齢のヒヨコへの経静脈投与で 75%の致死率であることを確認し、同分離ウイルスが高病原性鳥インフルエンザであると断定した。今回のウイルス株は、2010年10月に北海道の野生の渡り鳥のカモの糞から分離されたウイルスや、11月の島根県の感染例と非常に近い株であった。この動物園では、18日に堀の中の野鳥を全て捕獲して処分した。死亡していたのは4羽であったが、ほかの3羽の抗原キャプチャーテストは陰性であった。
[Mod.PC- 12月にすでに発生のあった outbreak は、商業的家禽飼育場1か所での発生であり、2008年には野鳥で発生している。今回の動物園のトリ -- mute swans, black swans and ducks -- での発生により、3つの感染状況が全て出そろったことになる (trifecta)。韓国でも今年 (2010年)は、野鳥とカモ飼育場で HPAI H5N1 が確認されている。動物園で、H5 亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスが発生したことは、多くの問題を孕んでいる。動物園に集められた動物は貴重で、それらの動物を集めるには多大な努力とコストがかかっている場合も多く、保護動物が飼育されていることもある。園内で生存していた(飼養されていた)10羽が処分されたように、動物園で飼育されている鳥類も処分しなければならないとなると、非常に厄介なことになってくる]
[Mod.JW- 今回の情報には、いささかわかりにくいところがある。はじめに2羽の dead mute swans が発見されたとなっていたのに、あとでは4羽がかたまって死亡しており、このうち3羽が HPAI H5 の検査陰性だったと書かれている -- ではこの集団で死亡した3羽の死因は何だったのか?生き残っていた10羽をすべて処分したのは正解である。ウイルス陽性のmute swan の糞により堀が汚染され、飛来した鳥類の感染につながる可能性があるからである]

PRO/AH/EDR> Avian influenza (63): S. Korea (GN), LPAI, H7N2, OIE 20101220.4485
 情報源 OIE WAHID (World Animal Health Information Database) Disease Information 2010; 23(49) 、2010年12月19日
Low pathogenic avian influenza (poultry), Korea (Rep. of)
感染開始時期 2010年12月7日
前回流行時期 2010年10月17日
原因ウイルス  Low pathogenic avian influenza virus Serotype H7N2
新たな感染流行
発生地 Nohwa-ri, Gyuam-myun, Buyeo-gun, Chungcheongnam-Do 農場
感染した種 Birds
Affected Population: ducks and chickens
Susceptible 110
Cases 1
Deaths 0
Destroyed 110
Slaughtered 0

● 口蹄疫 韓国
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease - S. Korea (20): (KG Gyeonggi), update 20101220.4489
 情報源 Korea Joongang Daily 、2010年12月21日
韓国政府当局は20日、ソウル Seoul の北西部のウシ農場1か所で、新たな口蹄疫 foot-and-mouth disease (FMD) が発生したことを確認した。 19日、首都に隣接する、Goyang 市の農場1か所で、 飼育されているウシに、excessive drooling (流涎) and blisters (水疱) on the tongue などの症状が認められた。飼育されていた53頭のウシはすべて処分したと、the Ministry for Food, Agriculture, Forestry and Fisheries 当局者は述べた。

● アフリカ豚熱(豚コレラ) 中央アフリカ共和国
PRO/AH/EDR> African swine fever, Central African Republic: (MP) OIE 20101220.4486
 情報源 OIE WAHID (World Animal Health Information Database) Disease Information 2010; 23(49) 、2010年12月11日
African swine fever, Central African Republic
感染開始時期 2010年6月1日 初報告
原因ウイルス African swine fever virus
新たな感染流行
発生地  Zerengogo, Bimbo, Ombella-Mpoko 農場
感染した種 Swine ブタ
Susceptible 37
Cases 32
Deaths 28
Destroyed 0
Slaughtered 9
Affected Population: 10 adult pigs (8 females and 2 males), 20 young pigs (12 females and 8 males) and 7 piglets at an early age.

● トウモロコシの病気,Leaf stripe & stem rot maize メキシコ
PRO/PL> Leaf stripe & stem rot maize - Mexico: (VE Veracruz) new disease 20101220.4482
 情報源 Journal of Phytopathology [subscription/purchase required]、2010年12月18日
原著 A Gijon-Hernandez et al: Leaf stripe and stem rot caused by _Burkholderia gladioli_, a new maize disease in Mexico. J Phytopath 2010; DOI: 10.1111/j.1439-0434.2010.01776.
2003-2004年に、Cosoleacaque, Tlalixcoyan, and Paso de Ovejas counties, (in the state of Veracruz, Mexico) に、これまで発生のなかったトウモロコシの病気が発生した ... 症状の説明など... _Burkholderia gladioli_. であることが判明した
[Mod.DHA-_B. gladioli_ (formerly _Pseudomonas gladioli_ or _P. marginata_) は、1921年に gladioli [* 首腐病菌? gladiolus グラジオラスのこと?] and other flowers の土壌内に寄生する植物病原体 inhabiting phytopathogen として報告された。タマネギの bulb soft rot ; gladiolus グラジオラス, iris アイリス, freesia フリージアなどの花卉の scab, soft and corm rots ; orchids ランの soft rot などの原因となり、最大で 50 percent loss をもたらせる。 grain rot, panicle blight, and leaf-sheath browning of rice plants (sometimes together with other species in the genus) の原因ともなる]

● ウマウイルス動脈炎 英国
PRO/AH/EDR> Equine viral arteritis - UK (02): (England), OIE 2011220.4481
[1] Equine viral arteritis, United Kingdom,Follow-up report No. 1 (17 Dec 2010)
 情報源 OIE WAHID (World Animal Health Information Database) Disease Information 2010; 23(49) 、2010年12月9日
感染開始時期 2010年9月15日 
前回流行時期 2010年11月19日
原因ウイルス  Equine arteritis virus
新たな感染流行
発生地 East Grinstead, West Sussex, England 農場
感染した種  Equidae (ウマ):2009年11月にオランダから英国に移動させられた、 A single stallion
Susceptible
Cases 1
Deaths 0
Destroyed 0
Slaughtered 0
[2] Equine viral arteritis, United Kingdom, Follow up No. 1
Equine viral arteritis, United Kingdom

 情報源 OIE WAHID (World Animal Health Information Database) Disease Information 2010; 23(51)、2010年12月19日。
Outbreaks: There are no new outbreaks in this report

● 訃報 : Rene Le Berre
PRO> Obituary: Rene Le Berre 20101220.4487
 情報源 The Telegraph 、2010年12月20日
river blindness, or onchocerciasis (オンコセルカ症) 対策の第1人者。