2011年3月9日-10日

髄膜炎菌性髄膜炎 チャド WHO
プリオン病 Atypical/Nor98 scrapie infectivity PLoS Pathogens

● 髄膜炎菌性髄膜炎 チャド
PRO/EDR> Meningitis, meningococcal - Chad: WHO 20110309.0763
 情報源 WHO Global Alert and Response (GAR)、2011年3月8日 FORTH
Meningococcal disease in Chad
チャドの保健省は、2011年1月1日から3月6日にかけて57の死亡例を含む923 例 (致死率 6.2%)の髄膜炎菌性 meningococcal 疾患の疑い患者症例がみられたことを報告した。 今までのところ、主として Logone Occidental 地域の 5つの地区(Benoye, Kello, Laokassy, Melfi, Moundou)で流行が起こっており、Boussou と Sarh の2つの地区が警戒地域とされている。流行地域では、ラテックス凝集試験で A群髄膜炎菌が優位であることが確認されており、流行領域で他の血清型の髄膜炎菌は特定されていない。Benoye, Kello, Laokassy, Melfi, Moundouの感染地域で大規模なワクチンキャンペーンを行うため、75万2000回分の二価 (AC) ポリサッカライドワクチンが提供されている
[Mod.ML- チャドは中央アフリカ内陸部の貧困国で、リビア、スーダン、中央アフリカ共和国、カメルーン、ナイジェリア、ニジェールと国境を接している。国土の大部分が砂漠で、the Sudan's Darfur region からの28万人、中央アフリカ共和国からの55000人、国内の17万人の各難民を受け入れている。首都はヌジャメナ N'Djamena で、the 22 regions of Chad が 53 departments に分かれ、さらに sub prefectures に分割されている 。
地図 1 Logone Occidental, which is a region in southwestern Chad, includes the sub prefectures of Benoye, Laokassy, Moundou, and Sarh
地図 2 Melfi is a town in the Guera Region
地図 3 Kelo is in the southwestern Tandjile Region
アフリカのサハラ以南地域は、毎年乾期 (12月から 6月まで) に発生する髄膜炎菌性髄膜炎の感染流行に悩まされてきた。チャドはアフリカ大陸の東岸から西岸までを横切る " 髄膜炎ベルト meningitis belt" の真ん中にあり、Burkina Faso, Benin, Chad, Democratic Republic of the Congo, Ethiopia, Ghana, Ivory Coast, Kenya, Mali, Niger, Nigeria, Sudan, Togo, and Uganda の各国がこの中に含まれる。周期的に発生する髄膜炎流行中の有病率 Attack rates は人口 10万人対100から 800人の範囲にあるが、各国ごとの報告では1000人に達する場合もある。流行レベルの閾値は,集団ワクチン接種や患者管理などの対策強化に踏み切る際の、流行発生の確定に用いられる; definitions of epidemic thresholds ... 今回の報告で、致死率が 6.2% と報告されているが、WHO は successful epidemic control を致死率 10% 以下と定義している]

● プリオン病
PRO/AH/EDR> Prion disease update 2011 (03) 20110309.0764
[1] 英国: National CJD Surveillance Unit - monthly statistics as of Wed 9 Mar 2011 - new vCJD case
 情報源 UK National CJD Surveillance Unit, monthly statistics、2011年3月9日
9日、新たに definite or probable vCJD による死者が1名増え、171人となった。
[2] フランス: Institut de Veille Sanitaire - monthly statistics as of Tue 1 Mar 2011 - no new vCJD cases
 情報源 IVS - Maladie de Creutzfeldt-Jakob et maladies apparentees [in French]、2011年3月1日
[3] 米国: National Prion Disease Pathology Surveillance Center - cumulative case numbers for 2010 up to 1 Nov 2010 - no vCJD cases
 情報源 US National Prion Disease Pathology Surveillance Center、2011年11月1日
[4] 英国: HPA biannual update
Creutzfeldt-Jakob disease (CJD) biannual update (2011/1)
 情報源 Health Protection Agency (HPA) report, 5(6) 、2011年2月11日
[5] Prions in peripheral tissue
 情報源 PLoS Pathogens、2011年2月10日
出典 Andreoletti O, Orge L, Benestad SL et al: Atypical/Nor98 scrapie infectivity in sheep peripheral tissues PLoS Pathog. 2011; 7(2): e1001285. doi:10.1371/journal.ppat.1001285
要約
1998年、ノルウェーにおいて初めての Atypical/Nor98 scrapie が確認された。現在では、世界中の小型反芻動物の病気であると考えられ、欧州内で確認される伝染性海綿状脳症 the detected transmissible spongiform encephalopathies (TSE) cases の相当部分を占めている。Atypical/Nor98 scrapie cases が報告されたのは、BSE やその他の small ruminants TSE agents に高い抵抗性を持つ ARR/ARR sheep であった。自然界の保有動物における、the Atypical/Nor98 scrapie agent の生態や病原性 The biology and pathogenesis については、ほとんど分かっていない。しかし、感染個体の末梢組織内の、detectable abnormal PrP が欠失していることから、ヒトや動物が this specific TSE agent に曝露するリスクは低いと考えられる。
今回の研究では、natural and/or experimental Atypical/Nor98 scrapie cases の、リンパ組織、神経、筋肉から abnormal PrP は検出されなかったものの、感染性は蓄積されることが示された。他の TSE agents と比較して、Atypical/Nor98 scrapie infectivity を有する検体であっても、PrPSc negative のままである可能性がある。このことは、自然界での Atypical/Nor98 scrapie cases の同定方法に影響し、現在の評価方法を見直す必要があると考えられる ...続きます。
[6] 台湾 suspected case statement
Department of Health censured for downplaying probable human mad cow disease death
 情報源 Focus Taiwan, Central News Agency (CNA) report、2011年2月15日
保健局 The Department of Health (DOH) の2010年の a probable case of death from [variant] Creutzfeldt-Jakob disease (CJD) への対応の不備について,2月15日に the Control Yuan [see comment below] は非難した。この事例に関しては、真実が明らかにできず、また市民の疑いを払拭することもできていないことから、保健局の対応に問題があったとされた。1989年から1997年まで英国に在住した台湾人男性1名が、2010年5月 vCJD と見られる原因で死亡した。記憶障害や過眠の症状があったこの患者は、2009年3月に a suspected CJD case として保健当局に報告されていた。男性の家族は解剖を承諾しなかったが、MRI や EEG 所見から医療関係者は an "extremely likely case" of [variant] CJD との判断を下した。しかし保健局は、男性の死亡から6か月が経過しメディアによる報道が行われた2010年12月まで詳細を公表しなかった ...
[Mod.CP- The Control Yuan は台北 Taipei にある台湾行政府の one of the 5 branches で、他の政府組織の監視を行う業務を担っている。the Court of Auditors of the European Union, the Government Accountability Office of the United States, or a standing] ...]
関連項目 20110110.0119

● マラリア インド,ミャンマー(2件)
インド
PRO/EDR> Malaria - India: (CT)
Archive Number: 20110309.0769
 情報源 Headlines India、2011年3月9日
2010年、Chhattisgarh で47人もの人々がマラリア Malaria 感染により死亡したと、保健当局者が8日に述べた。患者数は、農村部を中心に15万人あまりに上った。2009年は13万人弱の感染者と死者11人であった。
[Mod.EP- この地域の人口はおよそ2000万人で、15万2千人が感染したと報告されていることから、推定発生率は、人口1000人対7.6人となる]

ミャンマー
PRO/EDR> Malaria - Myanmar: (CH) 20110309.0767
 情報源 ReliefWeb、2011年3月8日
2010年、 Chin で最も多く報告された病気はマラリアで、およそ3万人の患者が報告された。
[Mod.EP- マラリアに関する詳しい解説 ... the WHO report of Malaria situation in the South East Asia Region によると、マラリアはミャンマー国内の重要な公衆衛生上の問題となっていて、4000万人余りが感染のリスクにさらされている。最も感染の危険性が高い (感染に弱い vulnerable)のは、森林内の宝石の採掘、森林伐採、農業、建設などに従事する、マラリアに免疫を持たない移民労働者たちである。毎年20万人が感染し、1200人がマラリア感染により死亡する。ミャンマーからマラリア感染者数増加が報告されている。2000年の12万人から、2008年に44万7千人、2009年も41万4千人と報告されている。一方、入院を要する患者数は減少していることから、ミャンマー国内のマラリアに関する状況が、改善していることが示唆される]
地図 

● チクングニア熱 ニューカレドニア
PRO> Chikungunya (07): New Caledonia, comment 20110309.0768
 投稿者 仏・Laveran Military Teaching Hospital、Dr Fabrice Simon、2011年3月9日
急性のチクングニア熱 Chikungunya と考えられる発熱患者に対して、昆虫忌避剤を含浸させた蚊帳 impregnated bed nets の使用を特に勧める。チクングニア熱では(最大 10 to the 9th-10th to the 12th RNA copies/mL) の高レベルのウイルス血症が通常7日間持続する。ヒトのウイルス保有者は非常に重要な役割を持ち、感染流行中に指数関数的に増える。このため、個人個人の昆虫忌避剤の使用が重要であるが、1週間のあいだ1日数回塗布し続けることは難しい。そこで、発病から最初の1週間はベッドもしくは自宅にいる多くの患者にとって、蚊帳の力を借りることが現実的な代替手段である。
関連項目
Chikungunya (06): New Caledonia 20110308.0759

● ラッサ熱 スウェーデン
PRO/AH/EDR> Lassa fever, imported - Sweden: (LG) ex West Africa 20110309.0766
 情報源 The Local (Swedish News in English)、2011年3月8日
国内東部 Linkoping University Hospital の集中治療室で、ラッサ熱 Lassa fever と診断されたスウェーデン人女性1名が治療を受けている。この女性は a humanitarian aid organization での仕事を行っていた西アフリカで感染した。女性の状態は落ち着いているが、今後数週間は隔離されたままとなると病院関係者が説明した。30歳代のこの女性は、医療用移送機で7日に帰国した。"アフリカでの検査でラッサ熱と診断されており、われわれも、いくつかの検査を行っているが結果はまだ判明していない。深刻な病気として治療を行っている" と説明された。
[Mod.CP- Importation of Lassa fever from West Africa into Europe and the United States の事例は、過去にも時々起きている。今回のケースでは、西アフリカ(国名は明かにされていない)でラッサ熱の診断がついており、患者は治療目的にスウェーデンに移送されている]

PRO> Lassa fever, imported - Sweden (02): (LG) background
Archive Number: 20110310.0778
20110309.0766 に関して
Chronology
1969 - the 1st reported case of Lassa fever was that of an American nurse working in Lassa, Nigeria. ...
2010 - an American traveler acquired Lassa fever in Liberia; and a South African civil engineer died of Lassa Fever in Sierra Leone.
2011 - a Swedish woman acquired Lassa fever in West Africa 

● レジオネラ症 米国
PRO/EDR> Legionellosis, nosocomial - USA (02): (OH) 20110310.0775
 情報源 Dayton Daily News、2011年3月8日
Miami Valley Hospital において、9人目の患者のレジオネラ症 Legionellosis 陽性が確認された。さらに1人についても現在検査の結果が待たれている

● ハンタウイルス チリ
PRO/AH/EDR> Hantavirus update 2011 - Americas (11): Chile (AI) 20110310.0772
 情報源 El Dividadero [in Spanish]、2011年3月9日
保健当局 the Health SEREMI [las Secretarias Regionales Ministeriales de Salud; Regional Ministerial Secretariat] からの情報によると、同地方で2011年初のハンタウイルス Hantavirus 感染が the Public Health Institute において確定診断された。the Coyhaique Hospital で回復しつつある 26歳の男性と3歳の娘である。the La Lomita area of Guadal の自宅で感染したと見られている。男性は1日に入院となり、重症呼吸不全と肺水種のため人工呼吸器を装着されていた。続いて男性の妻と娘の検査が行われたが、娘は2月13日に発熱と呼吸器症状があり、18日に the Cochrane の病院で治療を受けていた。
[Mod.TY- ハンタウイルス感染が疑われて、男性と同じ the Cochrane Hospital に入院した Osorno の20歳の学生1名について触れられていないのは不思議である (20110304.0715) 。おそらく、学生については診断が確定されていないためであろう]

● 病原大腸菌 O157 北アメリカ
PRO/AH/EDR> E. coli O157 - North America: hazelnut, alert, recall 20110310.0777
[1] 米国: CDC report
 情報源 CDC, _E. coli_ Outbreak Investigations、2011年3月5日
DeFranco & Sons of Los Angeles, California is voluntarily recalling bulk and consumer-packaged in-shell hazelnuts and mixed-nut products containing hazelnuts. 
[2] "Smoking" nuts
 情報源 CIDRAP (Center for Infectious Disease Research & Policy) News、2011年3月9日
[3] カナダ: possible cases
 情報源 CBC (Canadian Broadcasting Corporation) News、2011年3月5日

● ボツリヌス症 カナダ
PRO/EDR> Botulism - Canada: (BC) watermelon jelly, alert, recall 20110310.0776
 情報源 CBC (Canadian Broadcasting Corporation) News、2011年3月8日
ブリティッシュコロンビア州疾病対策局 The British Columbia Centre for Disease Control [BCCDC] は、2010年夏に州内周辺のチャリティー charity booths で販売された jars of watermelon jelly にボツリヌス菌が混入した疑いがあるとして注意を呼びかけている。Vancouver Island のまれなボツリヌス症 Botulism の症例の発生をきっかけに、Jamnation Fine Foods 社製の 120 ml jars of the jelly の回収が開始された。このジェリーは the British Columbia Huntingtons Research Foundation charity booths in Duncan で販売されたもので、州内の他の地域でも販売されている可能性があるとされている。

● 口蹄疫 ボツワナ
PRO/AH> Foot & mouth disease - Botswana: (NW) OIE 20110310.0774
 情報源 OIE, WAHID (World Animal Health Information Database), weekly disease information 2011; 24(10)、2011年3月8日
Foot-and-mouth disease, Botswana; immediate notification
感染開始時期 2011年2月4日
前回流行時期 2009年11月17日
原因ウイルス Foot and mouth disease virus Serotype: SAT 2 
新たな感染流行
発生地  Kaepe crush, Okavango, Ngamiland, Maun [North-West district] 、村
感染した種 Affected animals
Species / Susceptible / Cases / Deaths / Destroyed / Slaughtered
ウシ Cattle / 250 / 14 / 0 / 0 / 0

● ココアの病気,原因不明の疾患 カメルーン
PRO/PL> Undiagnosed disease, cocoa - Cameroon: (SW) update 20110309.0762
 情報源 Tradingcharts, Dow Jones Newswires via COMTEX、2011年3月4日
Government slow to tackle mystery cocoa disease
カメルーン国内のココアの主要生産地域である South-West region において、栽培ココアを死滅させている原因不明の病気 [20101003.3584] は、政府の対応の遅れにより今後数年間の収穫にも影響を与える可能性がある。9か月間で少なくとも12000-15000本のココアが死滅した
[Mod.DHA- カメルーンから報告されているような、root rot and dieback symptoms on cocoa の原因となる病気は数多くあり、その多くが真菌の病原体による]