2011年5月10日-11日

チクングニア熱-ニューカレドニア
コレラ O75 -米国,生ガキ
狂犬病-米国

● 水痘-インド
PRO/EDR> Chickenpox, children - India: (AS)
Archive Number: 20110511.1453
State witnessing spurt in chickenpox cases

 情報源 The Assam Tribune、2011年5月9日。
Guwahati をはじめとする州内各地で、小児の水痘 chickenpox [varicella] 患者が急増している。小児で多数の患者が発生している。感染力が強く、直接患者と接触がない場合でも感染する恐れがある。くしゃみや咳などによって空気感染する病気で、原因は、成人の帯状疱疹の原因ウイルスと同じ varicella-zoster virus [now human herpes virus 3] の感染による ...
[Mod.CP- ... Chickenpox は highly infectiousであり、直接の接触のほか、感染患者の咳やくしゃみによって空気中から感染したり、 皮膚病変からのエアロゾル化されたウイルス aerosolization of virus from skin lesions. によっても感染が起きる。chickenpox の患者は、発疹が現れる1-2日前から、すべての水疱が痂皮化するまで、感染性 contagious を有している。曝露後、発病までに10-21日間かかる。小児では、病悩期間がおよそ5-10日間であることが多い。高熱、激しい掻痒、不快な発疹 uncomfortable rash、脱水や頭痛などが認められる。さらに、ワクチンを接種されていない小児が感染すると10人に約1人の割合で合併症が起きる。合併症としては、皮膚病変の感染、嘔吐や下痢による脱水、より重篤なものでは肺炎や脳炎がある。成人、乳児、青年、長期のステロイド使用や病気による免疫低下のある患者らのグループは、より重篤な合併症を伴って重症化しやすい。重篤な合併症としては、皮膚、皮下組織、骨、肺、関節、血液などさまざまな部位の細菌感染や、ウイルス肺炎、出血、脳炎など、ウイルスの直接的な関与によるものがある。一部の国々では、ワクチンが使用できるがインドでは入手できない。MMR ワクチンと一緒に2回接種することで、小児では high degree of protection が得られる]

● 肺線維症-韓国
PRO/EDR> Pulmonary fibrosis - South Korea: (Seoul) RFI 20110511.1447
 情報源 Korea Joongang Daily、2011年5月11日。
国内各地で8人の患者が原因不明のウイルスに感染し、このうちの1人が10日死亡した。妊娠9か月のこの36歳の女性は、肺線維症 Pulmonary fibrosis を契機に起きた多臓器不全と脳卒中により、ソウル市内の病院で死亡した。当局 The Korea Centers for Disease Control [KCDC] and Prevention は10日、死亡まで1か月間にわたってソウル市内の総合病院で集中治療が行われていたことを明らかにした。赤ん坊は救命されている。the KCDC によると、この患者は、同じ病院で治療中の、原因不明の同じウイルスによると考えられる、様々な程度の症状の患者8人のうちの1人で、いずれも当初は別々の病院で治療を受けていたが、その後同院に転送された。1つの病院内で感染が起きたわけではない、と説明されている。8人の患者のうち、死亡した患者を含む7人が妊婦、もしくは最近出産した患者で、1人は40歳代の成人男性である。1人が治療後退院し、もう1人が、治療が成功しなかったため、肺移植を受けている。死亡した36歳の患者は、4月8日にひどい風邪かインフルエンザのような症状のため医療機関を受診した。同11日にソウルの病院に急送された。治療が行われたが、急速に肺線維症 pulmonary fibrosis, or scarring of the lungs が進行した。脳出血を起こした後、5月10日に死亡した。この原因不明の疾患について不安が広がる中、保健当局は、細菌感染症や免疫疾患など、他の可能性についても調査を行っている。病院で行われた検査では、2人の患者に、かぜのウイルスである adenovirus and coronavirus が見つかっている ...
[Mod.TY- ウイルス疾患とした根拠が見当たらない]
[Mod.CP- Pulmonary fibrosis には様々な原因があり、慢性炎症 chronic inflammatory processes (sarcoidosis, Wegener's granulomatosis)、感染、環境因子 environmental agents (asbestos, silica, exposure to certain gases)、放射線曝露 exposure to ionizing radiation (such as radiation therapy to treat tumors of the chest)、慢性疾患 chronic conditions (lupus, rheumatoid arthritis)、薬剤などである。過敏性肺臓炎 hypersensitivity pneumonitis と呼ばれる病態では、吸入されたダストや職業上の化学的曝露に対する、過剰な免疫反応によって、肺の線維化が進行する。吸入されるダストに、細菌、真菌、動物製品が含まれていると、より発生しやすい。一部の患者では、特定の原因が無く、肺の慢性炎症や線維化が進行することがある。このような患者の多くが、治療抵抗性の特発性肺線維症 idiopathic pulmonary fibrosis (IPF) と呼ばれる疾患の患者であり、一部は、免疫抑制療法による治療の効果が期待できる、非特異的間質性肺臓炎 nonspecific interstitial pneumonitis (NSIP) などの患者である。 (より詳しい情報)このソウルの病院内の8人の患者が、ウイルスなどの感染症が原因とされる直接的証拠がない]

● チクングニア熱-ニューカレドニア

PRO> Chikungunya (12): New Caledonia 20110511.1446
 投稿者 Institut Pasteur of New Caledonia Laboratoire d'Epidimiologie Moleculaire、Myrielle Dupont-Rouzeyrol、2011年5月11日。
2月末,ニューカレドニア域内で初めての自所内感染例 (20110308.0759)があった。系統発生学的解析により 3 distinct lineages of CHIKV strains が存在すると考えられている: West Africa, Asia, and East/Central/South Africa (ECSA)。インド洋の島嶼のウイルスは the ECSA group 由来と考えられる。strains of Indian Ocean Islands の E1 遺伝子の塩基配列解析で、position 226 (E1-A226V) の alanine が valine に置換されていることが示されている。この置換により、インド洋の島々に続いてアジアや欧州 (イタリア) において、ヒトスジシマカ _Aedes albopictus_ によるチクングニアウイルス CHIKV の感染伝播が起こりやすくなった (潜伏期間 extrinsic incubation period の短縮と、ベクター内でのウイルス増殖率の上昇)。このような変化が、これらの地域の the transmission and spatial distribution of CHIKV をもたらせた。ニューカレドニアにはヒトスジシマカがいないため、ベクター the putative vector of CHIKV はネッタイシマカ _Aedes aegypti_である。Institut Pasteur, Paris において the 1st New Caledonian autochthonous isolate of CHIKV のE1 遺伝子を解析した結果、The New Caledonia/2011 CHIKV strain は、position E1-226 に alanine を有していた。系統発生学的解析により、このウイルスは the Asia lineageに属し、the Indonesian origin of the imported cases であることを裏付ける結果となった。(20110226.0631

● コレラ O75 -米国,生ガキ

PRO/EDR> Cholera O75 - USA: (FL) raw oysters, warning 20110511.1443
 情報源 Agence France-Presse (AFP)、2011年5月10日。
フロリダ Florida 州北部でコレラ Cholera 菌に汚染された生ガキを食べて、11人もの人々が発病したと10日当局が発表した。New Orleans からメキシコ湾沿いに約480km離れた、Apalachicola Bay (near Panama City in northern Florida,) で採取されたカキで、当局 the FDA はこれを摂取しないよう注意を呼びかけている。患者は11人と報告されているが、the FDA がこれまでに確認しているのは8人で、"原因はコレラ菌 O75 toxigenic _Vibrio cholerae_ O75 によるもので... 入院したり死亡したりした人はいない" と当局者が発表した。2000年から2010年の期間中、toxigenic _V. cholerae_ O75 infection による患者の報告は合計17人で、水温が上昇する季節に最も多いという。FDA によるとカキが採取されたのは3月21日から4月6日までの期間の Area 1642 in Apalachicola Bay で、4月29日以降この地域でのカキの採取は禁止されている ... この地域では、州内の約10%のカキが採取され、主に Florida, Georgia, and Alabama で消費されていた。
[Mod.LL- _V. cholerae_ serotype O1 and O139 と違い、the non-O1,non-O139 _V. cholerae_ (NCV) がコレラの感染流行に関係することはないが、sporadic cases or small outbreaks of gastrointestinal disease と関係することがある。しばしば、腸管外感染、たとえば創感染や敗血症の原因となることもある。数種類の NCV strains は、cholera enterotoxin を産生し、脱水を伴う大量の下痢を引き起こす。他の数種は、別の毒性遺伝子 other virulence genes を有しており、より軽症の消化器症状を惹起する。 NCV infection において、典型的な米のとぎ汁様の便や脱水症状を起こすことはまれで、むしろ cholera enterotoxin production を疑わせる。
米国初の O75 感染の集団発生報告: Severe diarrhea caused by cholera toxin-producing _Vibrio cholerae_ serogroup O75 Infections Acquired in the Southeastern United States. Clin Infect Dis. (2008) 47(8): 1035-40]

◎ 狂犬病-米国

PRO/AH/EDR> Rabies - USA: (CA California) 20110511.1442
 情報源 The Times-Standard、2011年5月10日。
Humboldt County の保健当局は9日、郡内では初めて狂犬病 Rabies 患者発生が確認されたことを受け、全面的な調査を開始した。Willow Creek の住民であるこの患者は、現在 the UC Davis Medical Center に入院中で危険な状態にある。6日 The Centers for Disease Control and Prevention により狂犬病と診断され、7日の2度目の検査でも同じ結果となった。当局者の知る範囲では Humboldt County 初の狂犬病患者であるという。狂犬病を感染させた動物の種類については分かっていない ...
[Mod.TG- 狂犬病は予防可能な哺乳類のウイルス性疾患で、狂犬病に感染した動物の咬傷により感染伝播されることが最も多い。the Centers for Disease Control and Prevention (CDC) に報告される狂犬病症例の大多数が、アライグマ、スカンク、コウモリ、キツネなどの野生動物である。狂犬病ウイルスは中枢神経系に感染し、最終的に脳の病気を発症し死亡させる。ヒトの感染の初期症状は、ほかの多くの病気と違いがなく、発熱、頭痛、全身衰弱、不快感などである。進行すると、より特徴的な症状が現れ、その中には不眠、不安、意識障害、軽いまたは部分的な麻痺、興奮、幻覚、混乱、流涎 hypersalivation 、嚥下困難、強水症 hydrophobia などがある。これらの症状が発現すると、確実に数日後に死亡する。強水症は水を恐がることを意味するが、これは患者が水を怖がっているのではなく、咽頭の筋肉が麻痺しているために、水などの液体を飲み込めないことによることを指摘しておきたい。唾液を飲み込むこともできないため、流涎が過剰になる。米国内のヒトの狂犬病は、1990年以降に報告されたのが約27例と極めてまれであるが(東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど)他の地域ではこれよりもずっと多い。ヒトの感染例は動物の間での発生数に比例する。米国など先進各国では、動物における疾患対策が大きな成果を上げたことが、そのままヒトの狂犬病症例数減少につながった。米国内でのヒトの狂犬病症例数は非常にまれであるが、一方で狂犬病の可能性のある動物に曝露したことによる予防治療を受ける人は毎年16000人から39000人いる。死亡後の狂犬病の診断は、脳からの組織 (髄膜 medulla、小脳 cerebellum、海馬 hippocampus など)の検査によって行われる。剖検が狂犬病診断の重要な位置を占めている。剖検を行うことで、狂犬病が疑われるが確定診断されていない患者や、臨床症状からは全く狂犬病を疑われていなかった患者に (狂犬病の確定) 診断が下されることによって、1) 疫学調査 the public health investigation 2) 市民が注意喚起され、3) 曝露が起きた際の受診の重要性が再認識され、4) 狂犬病に関する情報の蓄積される、 ことにつながる。診断が確定されている場合には、治療法の検討に対する病理学的情報を与えてくれる。狂犬病の疑い例や確診例の死体との接触は不安材料ではあるが、これまでに、ヒト及び動物の死後剖検を行った人の狂犬病感染例の報告はない。生前の患者であっても、ヒト-ヒト感染伝播の報告は、臓器や組織移植による非常にまれなケースに限られている。狂犬病ウイルスの空気感染については、research laboratory setting を除いて、確実に記述された報告はない。CDC と WHO はともに、狂犬病の患者から医療従事者への感染リスクは、他のウイルスや細菌感染と同じかそれ以下としている。さらに曝露例に対しては暴露後感染予防 rabies PEP がある。とはいえ、狂犬病によりほとんどすべてが死の転帰をたどることから、両機関とも、狂犬病の患者や死体と接触があったすべての人々に対して、recommended precautions に従うよう求めている。剖検時のわずかな狂犬病感染リスクは、careful dissection techniques と N95 or higher respirator, full face shield, goggles, gloves, complete body coverage by protective wear, and heavy or chain mail gloves (?) to help prevent cuts or sticks from sharp instruments or bone fragments などの防護によって、より小さくすることができる。oscillating saw 電動ノコギリではなく handsaw 手動のものを用い、頭蓋骨の除去時にのこぎりが脳組織に触れないよう注意することで Aerosols を最小限にすることができる。作業中および作業後の環境や器具の消毒には10%の次亜塩素酸ナトリウム溶液が推奨されている。(入室は)作業に直接関わる人だけに限るべきである。剖検の作業に当たって事前のワクチン接種は勧められていない。患者の唾液や他の感染性部位(神経組織など)に、キズや粘膜が触れた場合には PEP (post exposure prophylaxis) of autopsy personnel を勧めている。出典]

● 野兎病 ドイツ,トルコから
PRO/AH/EDR> Tularemia, imported - Germany: (Berlin) ex Turkey, alert
Archive Number: 20110510.1441
Tularemia in Berlin -- 2 independent cases in travelers returning
from Central Anatolia, Turkey, February 2011
 情報源 Eurosurveillance 2011; 16(18) 5月5日
This report describes 2 epidemiologically independent infections with _Francisella tularensis_ subspecies _holarctica_ detected in Berlin in February 2011 that were acquired in central Anatolia, Turkey. 

● ペスト 米国
PRO/AH/EDR> Plague - USA (02): (NM) bubonic
Archive Number: 20110510.1439
 情報源 NY Daily News 5月8日
ニューメキシコ New Mexico 州の58歳男性が最近腺ペスト bubonic plague の治療を受け,2011年初の感染例となった。

● C型肝炎 カナダ
PRO/EDR> Hepatitis C - Canada: (QC)
Archive Number: 20110510.1438
Hepatitis C epidemic -- 1000 cases per year
 情報源 Le Journal de Montreal [in French] 5月9日
Little known before the early 2000s, hepatitis C virus (HCV) infection has reached epidemic levels in the Montreal area. There have been about 1000 new cases annually during the past 4 to 5 years

● デング熱(19)ブラジル,ボリビア,アルゼンチン,サウジアラビア,米国
PRO/EDR> Dengue/DHF update 2011 (19)
Archive Number: 20110510.1437

● 鳥インフルエンザ FAO
PRO/AH/EDR> Avian influenza (43): world update, FAO 20110511.1445
At a glance: the latest HPAI outbreaks for the period 1-30 Apr 2011
 情報源 FAOAIDE (Animal Influenza Disease Emergency) News, situation update 77、2011年5月10日。
アフリカ
 -エジプト: 30 H5 HPAI positive cases were reported in 13 governorates: Behera (5), Beni Suef (1), Damiyatta (2), Fayoum (5), Gharbia (1), Helwan (1), Luxor (1), Menoufia (6), Minya (1), Kafr
el-Sheikh (1), Qena (2), Sharqia (1), Sixth of October (3) Governorates (number of outbreaks in brackets).
28 were in backyard poultry (chickens, ducks, and geese) and 2 were in commercial chicken farms
 -南アフリカ: H5N2 HPAI outbreak was reported in 9 ostrich farms in Western Cape Province.
近東
 -イスラエル (A marsh harrier (_Circus aeruginosus_) tested positive for H5N1 HPAI)
アジア
 -バングラデシュ: A total of 12 H5N1 HPAI outbreaks
 -インドネシア: H5N1 HPAI outbreaks occurred from 30 March to 6 April 2011 in 18 villages in Gorontalo Province in the north of Sulawesi Island
 -韓国: An outbreak of H5N1 HPAI occurred on 6 Apr 2011 in a layer farm with 13 200 chickens in Yeoungcheon-si, Gyeongsangbuk-do.
 -ベトナム: H5N1 HPAI outbreaks in 6 provinces were reported in: the Red River Delta Provinces of Ha Nam; the North East Provinces of Bac Kan; the North Central Coast Provinces of Quang Tri; the South Central Coast Provinces of Quang Ngai*; the Central Highland Provinces of Dak Lak; and the Mekong River Delta Province of Vinh Long*.
[Mod.AS- On Wed 20 Apr 2011, "The Jakarta Post" published a report titled "Avian flu outbreak hits Klungkung after religious ritual" の報告がある ... タイや中国で感染ベクターとなった、闘鶏を含む儀式に関連するとの見方がある。これまでに Klungkung (Bali) での感染が報告されたことはないので確認が急がれる]