2011年5月19日

◎ ブタ連鎖球菌 健康なブタの口蓋扁桃に保菌
◎ 手足口病 enterovirus 71
ラクダ痘 人獣共通感染 Vet Microbiol

◎ ブタ連鎖球菌、ヒト ベトナム
PRO/AH/EDR> Streptococcus suis, human - Viet Nam: Ho Chi Minh City
Archive Number: 20110519.1517
 情報源 Sai Gon Giai Phong (SGGP) Daily [in Vietnamese]、2011年5月17日
ホーチミン市 Ho Chi Minh City 熱帯病院から 16日、新たなブタ連鎖球菌 _Streptococcus suis_ or "pig bacterium" の感染患者1名が報告され、2011年初からの患者数が11人となった。Ninh Thuan Province 在住で、高熱と臓器障害のために入院となった、57歳のこの患者は、医師の説明によると、pig-blood curd(豚の血の塊?) を食べて _S. suis_ に感染した。患者の状態は改善傾向にある
[Mod.TD- グラム陽性菌の _S. suis_、特に serotype 2 による感染症は人獣共通感染症である。ブタに感染した場合には、敗血症、髄膜炎、関節炎、離乳後の幼ブタでは突然死を起こすことがあるが、上気道だけに感染し気管支肺炎を起こす場合もある。
_S. suis_ はブタのほか、反芻動物、ネコ、イヌ、シカ、ウマなどの動物にも感染し、ブタにおいては、鼻や口から伝播されて、発病もしくは健康ブタの口蓋扁桃保菌される。ヒトの感染で最も重要な危険因子は、ブタとの接触と調理不十分なブタ食品の摂取である。ヒトへの感染伝播がもっとも起こりやすいのはキズを通じた感染である。感染の潜伏期間は数時間から最大3日間である。ヒトでの感染予防対策はブタの間の感染予防にかかっている。キズのある人は生の豚肉の取り扱いの際には手袋を着用し、調理の際には必ず手と調理用具の洗浄を心がける必要がある。感染したブタの肉や内臓の生食でも感染することがあるが、ヒトからヒトへの感染の発生はないと考えられている。
今回の感染源は the consumption of pig blood curd と報告されているが、それが生だったかどうかは報じられていない。ベトナムやタイでは、生の豚肉や、ニワトリ、ダック、ガチョウ、ブタの生血の摂取が伝統的に広く行われており、これに伴う infection with _S. suis_ がしばしば報告されている。ヒトの感染において最も多いのは髄膜炎であるが、トキシンを産生する場合にはトキシックショックも起こる。またより少ないが、菌血症、肺炎、敗血症性の関節炎と心内膜炎などが起きることもある]
[Mod.ML- 症状のない健康なブタの大部分が、多数種のある豚連鎖球菌 _S. suis_ のキャリアである。出産の際の腟分泌物からの菌や哺乳によって、保菌動物 colonized となる。保菌状態にある子豚によって、飼育場 the nursery 内に菌が持ち込まれる。群れの間での感染伝播の多くは、健康なキャリアブタの移動により生じる]
地図 

◎ 手足口病 米国
PRO/EDR> Hand, foot & mouth disease - USA: (AR) 20110519.1513
 情報源 4029tv.com、2011年5月16日
[Fort Smith , Arkansas 州の] 医師らによると、今シーズンは手足口病 Hand-foot-mouth disease (HFMD) の患者が多いという ...
[Mod.CP- 手足口病 HFMD はエンテロウイルス属ウイルス the genus _Enterovirus_ による感染症で、同ウイルス属の中には the polioviruses, coxsackieviruses, echoviruses, and enteroviruses などが含まれる。近年の米国内における HFMD の原因としてコクサッキーウイルス Coxsackievirus A16 が最も多いが、他の coxsackieviruses も検出されている。enterovirus 71 など他のエンテロウイルスは、特にアジアにおける outbreaks of HFMD に関係する。世界中で Individual cases も outbreaks of HFMD も発生している。温帯地域では、夏や秋のはじめに最も発生が多い。coxsackievirus A16 による HFMD は一般的に a mild disease で、何ら治療を必要とせずに 7-10 日間で治癒する。
しかし1997年以降、アジアと豪州で outbreaks of HFMD caused by enterovirus 71 が報告され、より高率に神経症状 neurologic involvement や脳炎による死亡例の発生が認められている。しかし、これら重症例の発生はきわめてまれであることに変わりない。
HFMD infection は direct contact によって from person to person に感染伝播し、感染者の鼻腔や咽頭分泌物、唾液、水疱内容液、便中などから Infectious virus が検出される。ウイルスに汚染された手を洗わないことで汚染された環境表面からウイルスが広がることが多い。発症から1週間以内の患者の感染力が最も強いが、症状消失後も他者への感染源となりうることもある。合併症はまれであるが; 無菌性髄膜炎 "aseptic" meningitis がまれに発生し、発熱、頭痛、項部硬直、背部痛を引き起こす。一部の患者は、短期間の入院を必要とすることもある。脳炎などの他の重篤な合併症もまれであるが、脳炎では死亡する可能性がある。主に小児に発生した、HFMD の発症から4週間以内の爪甲脱落症の報告がある (see: 20080729.2317 20080709.2099 and 20080711.2120)。当時は爪の脱落 the reported nail loss が感染によるものかどうか分かっていなかったが、temporary で治療を必要とせず回復した]

● ラクダ痘 インド

PRO/AH/EDR> Camelpox - India: northwest, zoonotic cases 20110519.1515
 情報源 Vet Microbiol. (Epub. ahead of print) 、2011年4月22日
Zoonotic cases of camelpox infection in India.
要約 
2009年のインド北西部における dromedarian camels (_Camelus dromedaries_) の間の感染流行時に発生した、ラクダ痘ウイルスによる初めての人獣共通感染の確定診断例 the 1st conclusive evidence of zoonotic camelpox virus (CMLV) infection in humans について報告する。
CMLV infection は、通常ラクダだけの限局性皮膚病変や、時に発生する全身型の感染に限られている。しかし、今回の流行において、camel handlers and attendants にも感染し、手や指の紫斑、水疱、潰瘍から痂皮形成に至る臨床症状が認められた。ラクダにおいては、体毛のない部分全体に広がる the pock-like lesions が認められた
[Mod.CP- これまでは、ワクチンを接種されていないラクダ使い unvaccinated camel handlers が、いくら感染極期?のラクダ痘感染例 (のラクダ) florid cases of camelpox infection と接触しても、ヒトでの感染は発生しないと考えられていた ... camelpox virus は系統発生学上、the genus _orthopoxvirus_ の中のどのウイルスよりも天然痘ウイルス variola virus [smallpox virus] に近いが、ゲノムの構造に大きな違いが存在する。インド北西部のラクダのラクダ痘ウイルスと、これまでヒトでの感染が知られていない地域のウイルス株に、どの程度の違いが認められるのか、についての解明が望まれる]

● 日本脳炎 インドネシア
PRO/AH/EDR> Japanese encephalitis - Indonesia: (BA)
Archive Number: 20110519.1524
 投稿者 独・Bernhard Nocht Institute for Tropical Medicine、Jonas Schmidt-Chanasit, MD、2011年5月19日
18日、54歳の女性1名が日本脳炎 Japanese encephalitis (JE) と診断された。現在ドイツ国内の病院で治療中である。血清および髄液のウイルス学検査が the Bernhard Nocht Institute for Tropical Medicine で行われた。この女性は夫ともにインドネシアのバリ島で2週間(15-30 Apr 2011)を過ごし、様々な観光地や内陸部を回ったが安宿 particularly low budget accommodations は利用していなかった。JE ワクチンは接種していなかった。2日に原因不明の発熱となり3日間継続した。一旦回復したが9日より再び熱が上がり、言語障害、気力低下、失調を伴ったため日本脳炎が疑われた。この女性は現在回復傾向にあり、重篤な後遺症は残らないと見られているが、判断を下すのは時期尚早である。夫の健康状態は問題ない。我々の知る限りでは、ドイツ人のバリ島旅行者としては初めての日本脳炎診断確定例である。ドイツ政府当局は今回の症例に関するすべての情報を開示しており、ドイツ人旅行者の JE vaccination strategies の改定に利用されたい。
[Mod.TY- 全旅行者に JE ワクチン接種を勧めるかどうかについては、悩ましいところである。蚊族の刺咬を回避するようアドバイスすることは必要である。インドネシアからの日本脳炎ウイルス感染の報告は、比較的少ない。1997年 (19970613.1243) の報告: "Java and Bali,、そしておそらく Lombok において JE ウイルスが enzootic であるとの確かな証拠がある。Flores Island からも1件のウイルス分離の報告がある"。 JE virus infections in people on Bali の報告では  "Japanese encephalitis (JE) は endemic in Bali, Indonesia. と考えられる ... All 94 serologically confirmed JE cases (cases) ... identified in Bali during 2001-2004 were included in the study." とある]

● エボラ出血熱 ウガンダ
PRO/AH/EDR> Ebola hemorrhagic fever - Uganda (03): (LW) WHO 20110519.1511
 情報源 World Health Organisation (WHO), CSR, Disease Outbreak News、2011年5月18日 FORTH
2011年5月13日、ウガンダ保健省 (MoH) は、中央部の Luwero 地区の 12歳の少女のエボラ出血熱 Ebola hemorrhagic fever の症例について WHO に通知した。彼女は 5日前からの出血を伴う発熱を主訴として、6日 Luwero 地区 Zirobwe の個人病院を受診後、Bombo General Military 病院に紹介されたが、間もなく死亡した。Entebee のウガンダウイルス研究所 (UVRI) における検査により、エボラウイルス (スーダン種) による感染であることが確認された。米アトランタの CDC で、さらに解析と塩基配列決定が行われることとなっている ... WHO はウガンダへの渡航や商取引を制限することを推奨していない。
[Mod.CP- WHO のこの声明で、病原ウイルスが a member of the virus species _Sudan ebolavirus_ であったことが確認できた。新たな症例についての報告はない]
地図 Luwero in Western Uganda
関連項目
Ebola hemorrhagic fever - Uganda (02): (LW) 20110516.1489

● 原因不明の疾患 インド
PRO/EDR> Undiagnosed disease - India: (OR) RFI 20110519.1510
 情報源 Xinhua News Agency、2011年5月16日
インド東部のオリッサ Orrisa 州 Malkangiri district の複数の村において、この10日間で、少なくとも小児14人を含む16人が死亡する原因不明の病気が発生していることが、16日に報じられた ... 口やその他の身体の部分にこぶ lumps が見られる事から、炭疽や栄養不良ではないかと見られている。アクセス不能で、交通手段としては the Balimela reservoir をモーターボート (? motor-launch) で横切るしかないような地域で、医療も施されず、'quacks' (偽医師) や薬草による治療に頼るものがほとんどである。
[Mod.MHJ- 大人のような職業上の曝露がないため小児の炭疽感染は少なく、まれと言っていい; 16人中14人が小児である点が注目される。また "mouth lumps" と言うのも、典型的な皮膚病変ではない。口腔咽頭炭疽 (感染) Oropharyngeal anthrax は重症で死亡することが多いが lumps on the mouth と同義語ではない。Orissa 州のヒトやウシにおいては、常に炭疽が確認されている。栄養不良によって、炭疽に感染しやすくなったり、炭疽に感染したり死亡したりした動物の肉を食べる可能性が高くなったりはする。しかし、これらの初期診断の価値は低いと言わざるを得ない]
[Mod.LM- ... GIDEON (Global Infectious Disease & Epidemiology Network) を使って、以下の診断基準: India / severe (hospitalized, hemorrhagic fever, fatal, etc) / ears, nose, throat, and oral cavity / oropharyngeal mass/ subcutaneous or soft tissue lesion(s) or abscess に従って検索すると -- 類鼻疽 melioidosis (infection with _Burkholderia pseudomallei_) がトップに出てくる。典型的な臨床症状や地理的条件ではないが、インドでも時に発生している。口腔咽頭領域での Lumps に一致するものとしてアクチノマイセス感染症 actinomycosis があるが、死亡は多くない]

● チクングニア セーシェル、否定
PRO/EDR> Chikungunya (13): Seychelles, NOT 20110519.1522
 投稿者 Seychelles、Srdjana Janosevic、2011年5月19日
政府保健当局 the Seychelles Ministry of Health は、領域内においてチクングニア熱 Chikungunya 患者を一切確認していない。Grand Isle or "Grande ile" in French はマダガスカルの別称であり、セーシェルにはそのような地名は存在しない。セーシェルでは、2006年以降、1人のチクングニア熱確定患者も発生していない。2011年のこれまでに、数例の臨床的に感染が疑われる症例が発生したが、域外の検査機関で実施された検査により、ウイルス感染が否定されている ... 20110421.1239 は当局の公式発表ではなく、マダガスカルのフランス語サイトの稚拙な翻訳による記事である。

● クリミア・コンゴ出血熱 インド
PRO/AH/EDR> Crimean-Congo hem. fever - India (04): (ND) alert 20110519.1518
 情報源 New Kerala.com、2011年5月14日
Gujarat の住民の間で発生したクリミア・コンゴ出血熱流行 outbreak of Crimean-Congo haemorrhagic fever (CCHF) の報告を受け、家畜及び獣医学当局 the Nagaland Department of Veterinary and Animal Husbandry は州内の全獣医管区に警戒するよう呼びかけた

● カキの病気,Ostreid herpes virus 1 欧州、大洋州
PRO/AH/EDR> Ostreid herpes virus 1, oysters - Europe, Oceania: emerging 20110519.1521
 情報源 Bloomberg News、2011年5月17日
フランスの沿岸地域に蔓延る致死性ウイルスにより、2008年以来、カキの稚貝の60%以上が死滅した。2009年の日本の種ガキの80%を生産した宮城県の水産業が、2011年3月11日におきた自然災害の発生により壊滅し、フランス政府は Miyagi's Pacific oyster species の輸入・ 繁殖計画の見直しと、新たな解決策を模索する必要に迫られている。2010年のフランス国内のカキの漁獲量が 38%減少したため、2010年10月と 2011年2月に young Miyagi oysters を輸入して、a variant of Ostreid herpesvirus 1, or OsHV-1 への抵抗性が検査されており、5月に結果が判明することになっていた。しかし、日本で 3月に起きた大惨事が、日本ルートの将来性を変えてしまったと、農業省の担当者が述べた。日本は、核物質による汚染と言う点でも、その価値が低くなっている。フランスだけでなく、アイルランド、イングランド、オーストラリアでも、OsHV-1 による影響が発生している
関連項目 20101223.4520

● 馬ヘルペスウイルス 米国、カナダ
PRO/AH/EDR> Equine herpesvirus - North America: (USA, Canada) 20110519.1516
[1] 情報源 The Miami Herald, Associated Press (AP) report、2011年5月17日
米国内西部州やカナダから、ユタ Utah [USA] 州に感染が拡大しつつある馬ヘルペスウイルス equine herpesvirus-1 への不安が高まっている。the USA (Idaho, Utah, Colorado, California, Washington) and Canada で17頭のウマが感染し、少なくとも3頭が死亡した。ヒトには感染の危険はないが、空気感染やえさ、草、物などを通じて感染するため、ウマ、アルパカ、ラマの間で容易に感染が広がる可能性がある ...
[2] 情報源 Q2 News, KTVQ.com、2011年5月17日
モンタナ州当局 The Montana Department of Livestock は、複数の州のウマの死亡原因となっている、outbreak of equine herpesvirus (EHV-1) への監視を行っている ...

● ナツメヤシの病気,Al-Wijam disease エジプト
PRO/PL> Al-Wijam disease, date palm - Egypt: 1st report 20110519.1512
 情報源 Archives of Phytopathology and Plant Protection、2011年5月
原著 Genetic variance between some Egyptian date palm cultivars using PCR-based markers with emphasis on the prevalence of Al Wijam disease. Arch. Phytopathology and Plant Protection. 2011; 44: 732-42; DOI: 10.1080/03235400802246929
Date palm はエジプト国内の主要農産物の1つで、世界第2位の生産国でもある。栽培地域に害虫や Al-Wijam disease. の被害が発生している。今回、各地の品種ごとの genetic variance を明らかにし、the aetiology and the prevalence of Al-Wijam.の分子学的診断方法を確率を目的とした調査を行った