2011年6月13日

原因不明のウイルス熱-インド
チクングニア熱-コンゴ共和国 
狂犬病-米国  ヒト、生存例
◎ 淋菌-米国 アジスロマイシン耐性,CDC
大腸菌 O104 -EU (17) ECDC,WHO

● 原因不明のウイルス熱-インド
PRO/AH/EDR> Undiagnosed viral fever - India: (BG), RFI
Archive Number: 20110613.1809
 情報源 Times of India、2011年6月13日。
Kolkata city の Ballygunge, Alipore and parts of central Kolkata を中心に、数千人がウイルス熱に感染している。重症の肺感染を伴う高熱から、しばしば重症呼吸不全を起こしている。通常なら季節の変わり目に発生するが、このように遅い時期に流行が発生したことに、専門家らは驚いている。医師らによると、過去に比べ、今回の新しいウイルスはより強力な別の種類のウイルスであると説明している。"呼吸器を攻撃するため、より危険であり、呼吸障害に激しい関節や筋肉痛を伴なっている。死亡患者は二次性細菌感染で命を落とす。マラリアとの同時感染がある場合は重症化する,"と熱帯医学の専門家は述べた ... 以下、症状の説明など ... Kolutola, College Street, Taltala, Beniapukur and parts of Tollygunge などのマラリア危険地域では、血液検査の20-25%でマラリア陽性となっているが、マラリア感染流行には達していない。高温によりウイルスが死滅する、夏のピーク時にウイルス感染が流行することは、通常では起こらないが、(今回のウイルス感染流行は) 5月に発生した、a heat-resistant variety によるものである ...
[Mod.MPP- the GIDEON database で、febrile illness with arthralgias and pneumonia で候補に上がる診断名としては、マイコプラズマ _Mycoplasma pneumoniae_、インフルエンザ influenza、エンテロウイルス enterovirus、アデノウイルス adenovirus の各感染症となる。マラリア、呼吸器ウイルス、チクングニア熱などの感染例が混じっているのでは]

● デング熱/デング出血熱 ブラジル、フィリピン
PRO/EDR> Dengue/DHF update 2011 (24) 20110613.1807
ブラジル in Portuguese
 - Brazil (Sao Paulo State). 11 Jun 2011. 5ヶ月間の州内のデング熱感染者数は、2010年と比較して69.8%減少した
 - Brazil (Rio Grande do Norte state). 9 Jun 2011. Rio Grande do Norte, in Santa Cruz.で4型デングウイルス感染が確認された。州内で14000人近いデング熱患者が報告されている
フィリピン (Negros Occidental). 9 Jun 2011.2011年の州内のデング熱による死者が5人となった

● チクングニア熱-コンゴ共和国

PRO/EDR> Chikungunya - Africa: Republic of the Congo 20110613.1806
 情報源 Xinhuanet [in French]、2011年6月12日。
コンゴ共和国 Brazzaville の南部地域から、この数日間に480人を超えるチクングニア熱 Chikungunya 患者が報告されていることを、11日、保健当局者が明らかにした。"480人超の患者のうち、死者は報告されていない。重症あるいは中等症の患者がいる major, intermediate symptoms,"と説明されている ... Mali, Senegal, Cote d'Ivoire, Cape Verde and, very close to us, Gabon など、アフリカ各地で発生していると述べられている。
[Mod.TY- the Republic of the Congo から初めて、チクングニア熱 chikungunya [CHIK] outbreak が報告された。これまでに CHIK virus outbreaks の報告があったのは、セネガル in 1966, 1977, 1975, 1983, 1988, 1990,1992, 1996 and 1997 で、ダカール地方 the Dakar area.を含む多くの地域で発生した。隣国のガボンから、2007、2008、2010年に流行が報告されていることから、コンゴ共和国での発生は驚くには当たらない。上記報告にあるが、ProMED-mail では報告されたことがない、マリ、コートジボワール、カーポベルデの発生状況に関心がもたれる]

● C 型肝炎-インド、血液銀行
PRO/EDR> Hepatitis C, blood bank - India: (PB) 20110613.1805
 情報源 Daily Bhaskar、2011年6月12日。
Ludhiana city は、大病院の血液銀行 the blood banks of big hospitals が開示した情報にショックを受けている。C 型肝炎 Hepatitis C の感染が、市内の多くの人々に広がっていることが明らかになった。最も関心が集まっているのは、市内の各病院でボランティアの献血を行った人々に、C 型肝炎の感染が知らされていない点にある。血液検査を行った病院側も驚いている。the Punjab State AIDS Control Society (PSACS) は、市内の各血液銀行に対して、C 型肝炎に関する知識を啓蒙するよう求めている。また、感染のある血液は、手順に従って安全に廃棄することも指示した。献血全体に占める C 型肝炎陽性率の全国平均がわずか 0.44% であるのに対し、Ludhiana 市の陽性率は、0.81ないし 2.13%であった。

● 手足口病-ベトナム
PRO/EDR> Hand, foot and mouth disease - Viet Nam (04): HCM 20110613.1804
 情報源 Sai Gon Giai Phong (SGGP)、2011年6月12日。
The Preventive Medicine Department は11日、2011年初以来、国内で7300人以上が手足口病 Hand, foot and mouth disease に感染し、26人が死亡したと報告した。2010年同期に比べ、40%増加し、患者のほとんどが幼児であったと説明している。先週の1週間だけで、28の省で1200人以上の感染が発生している。南部のすべての地域で流行しており、24人が死亡する結果となっている。北部地域では14人が感染したが、死者はいない。

● E 型肝炎ウイルス-ウガンダ
PRO/AH/EDR> Hepatitis E virus - Uganda: Karamoja 20110613.1803
 情報源 Outbreak News、2011年6月8日。
エボラウイルスのニュースが一段落したあと、保健当局は、少なくとも1件、おそらくは2件の Karamoja における [E 型肝炎 Hepatitis E] 感染流行の問題に直面している。保健省は7日、Kaabong, Moroto, and Kotido districts of the Karamoja sub-region of Uganda において、ウイルス肝炎のアウトブレイクが発生したことを確認した。この地域で、908例のE 型肝炎感染が発生し、Kaabong Hospital.に入院となった ... このほかにも、Karamoja において、黄熱が疑われる感染流行の報告があり、同省は調査を開始した、との情報がある ... E 型肝炎の一般的な解説。
[Mod.JFW- 2010年にも Karamoja region から、感染流行が報告されている。基本的に、妊娠第Ⅲ期の患者以外は軽症であるため、908人の入院患者は考えにくい。今後の流行中も、大部分の患者は入院を必要としないだろう]
関連項目 20100227.205783

● 狂犬病-米国  ヒト、生存例

PRO/AH/EDR> Rabies - USA (04): human, survival 20110613.1802
 情報源 Health Canal、2011年6月12日。
20110527.1619 の内容に対する追加情報あり。
農村部 Humboldt County の8歳の女児1名が、UC Davis Children's Hospital スタッフの懸命の治療の結果、米国内では3人目となる、ワクチンを接種されずに狂犬病 Rabies に感染したが回復を遂げた患者となった。感染経路は明らかになっていないが公衆衛生の当局者は、Trinity County との境に近い同郡 Willow Creek, California にある小学校付近の野良ネコから感染したと見ている。この女児は、曝露の日時や形態が不明であったため、感染後接種される抗ウイルスワクチンによる予防措置 post-exposure prophylaxis [PEP] を受けていなかった。狂犬病感染では通常、PEP の処置がなければ死に至る。女児の血液及び髄液検体について行われた、the state Encephalitis and Special Investigations Section of the California Department of Public Health での検査により、5月5日に女児の狂犬病ウイルスへの感染が判明した。
[Mod.TY- the Wisconsin protocol の有効性に関しては、議論がある。確かに今回の症例では有効であったようだが、主治医の言葉にあるように、患者の強力な免疫反応が寄与したことは疑いない。患児は、集中治療室から出られるまでに回復した。確定診断に至った検査方法についての記載がない。血液中や髄液中の狂犬病特異抗体があれば、狂犬病ウイルスへの曝露が示唆される。女児に後遺症が残っていないか、情報が望まれる。20110606.1728 の中で、狂犬病ウイルスに感染し発病した患者が回復し生存することを期待してはいけない not a reasonable expectation と警告している。このことは、動物から咬傷を受けた際に、暴露後接種を適切な時期に行う timely post-exposure treatment (PET) ことへの必要性が強調されることでもある。この患者には、動物咬傷の既往がなく、そのため PET が行われなかったということである]

◎ 淋菌-米国 抗生物質耐性、アジスロマイシン

PRO/EDR> Antibiotic resistance: Neisseria gonorrhoeae - USA (CA) azithromycin 20110613.1800
_Neisseria gonorrhoeae_ with reduced susceptibility to azithromycin - San Diego County, California, 2009
 情報源 CDC. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2011; 60(18); 579-81、2011年5月13日。
感受性のある淋菌 _Neisseria gonorrhoeae_ による泌尿生殖器感染症の治療薬として、2g のアジスロマイシン azithromycin の単回投与が有効であり、セファロスポリンにアレルギーのある合併症のない淋病の治療にも用いられてきた。しかし、アジスロマイシンに対する耐性発生が懸念されるため、単独療法は推奨されなくなっている。それに代わり、セファロスポリン(250mg のセフトリアキソン ceftriaxone 、使用できない場合は 400 mg のセフィキム cefixime)との併用療法において、1g のアジスロマイシンの単回投与が推奨されている ... 症例報告、分子学的解析の結果、発育阻止濃度が高い high MICs 分離菌、編集部注 ... 原文参照願います。
[Mod.ML- the US CDC recommendations for the treatment of gonorrhea in the USA: CDC STD Treatment Guidelines 2010; より。
淋菌の感染患者はしばしば、クラミジア _Chlamydia trachomatis_ にも感染していることが多い; このため、淋菌感染の治療においては、常に _C. trachomatis_ infection に対する治療も平行して行うことが勧められている。子宮頸部、尿道、直腸の、合併症のない淋菌感染で推奨される治療法は、250 mg of ceftriaxone 1回筋注 intramuscular (IM) dose もしくは 400 mg of cefixime [now available in the United States] 1回経口、に加え、[treatment of chlamydia として] azithromycin 1g orally in a single dose または doxycycline 100 mg orally twice a day for 7 days.(の併用療法)である。Ceftriaxone in a single injection of 250 mg によって、高い血中濃度が持続し、published clinical trials. の結果、いずれの感染部位においても、curing 99.2 percent of uncomplicated urogenital and anorectal (泌尿生殖器および直腸) と、98.9 percent of pharyngeal infections (咽頭) の治癒率が報告されている。1) 感受性の低下した菌が分離される地域が拡大しつつあり、2) ceftriaxone による治療失敗例の報告があり、3) (不顕性感染の多い)咽頭感染への効果が高まり、4) 感染部位によらない、わかりやすい勧告のメリットを考慮し、125mg単回投与ではなく、250mg 単回投与がより望ましいとされた。A 400 mg oral dose of cefixime では、the 250 mg dose of ceftriaxone による治療によってもたらされるほどの、高濃度、持続性、殺菌レベルは得られない。published clinical trials では、cured 97.5 percent of uncomplicated urogenital and anorectal (95 percent CI = 95.4 percent-99.8 percent) and 92.3 percent of pharyngeal gonococcal infections (95 percent CI = 74.9 percent-99.1 percent).と報告されている。 cefixime は経口で摂取できるものの、咽頭感染の治療効果が限定的あるため、そのメリットは相殺されてしまう。治療に当たっては、 oral sexual exposure の有無を確認し、申告があった場合は、咽頭感染で良好な成績が報告されている ceftriaxone を用いるべきである。cephalosporins が使えない患者には、Spectinomycin が有用であるが、高価であり、注射を必要とし、米国では入手できない。published clinical trials では、uncomplicated urogenital and anorectal gonococcal infections. の治療において、98.2%の治癒率が報告されているが、咽頭感染については、治療効果は乏しい (51.8 percent; 95 percent CI = 38.7 percent-64.9 percent)]

● 大腸菌 O104 -EU (17)

PRO/AH/EDR> E. coli O104 - EU (17): case update, medical care stretched 20110613.1798
[1] Epidemiological update, 12 Jun 2011, 11:00
 情報源 European Center for Disease Control (ECDC)、2011年6月12日 FORTH より
5月22日にドイツ政府は志賀毒素産生性大腸菌 (STEC) による溶血性尿毒症症候群 (HUS) と血性下痢症の患者数が顕著に増加していることを報告した。5月2日以降、HUS 809例と、非 HUSの STEC 感染症 2,447例 (このうちドイツ国内では HUS 773例、非 HUS の STEC 感染症が 2,387 例) が欧州連合の加盟国により報告された。EU 加盟国内では、23人が HUS によって死亡し、12人が非 HUS の STEC 感染により死亡した(下表参照 )。従来、STEC 感染による HUS は、5歳未満の小児に見られることが多いが、今回のアウトブレイクでは、ほとんどの症例は成人のもので、約2/3が女性であった。ほとんどの症例はドイツ北部 (主としてSchleswig- Holstein 、Lower Saxony、North-Rhine-WestphaliaとHamburg) で発生したものか、当地への渡航歴のある人によるもので、EU/EEA 内では、オーストリア、デンマーク、ドイツ、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデンおよび英国でHUS の症例を報告し、他の5カ国は、非 HUSの STEC 症例のみを報告している。検査機関における検査の結果、血清型 O104:H4 の STEC (Stx2陽性、eae陰性、hly陰性、ESBL、aat、aggR、aap) が原因となる病原体であることが判明した。派するフィールドゲル電気泳動 PFGE [pulsed field gel electrophoresis] 法を行ったところ、ドイツの7株の O104:H4 と、デンマークの 2株は、いずれも同じパターンを示した。STEC とは、志賀毒素を産生する病原性大腸菌の一種であり、ヒトの腸管および全身に重篤な疾患を引き起こす。この病気の臨床症状は非常に重篤なものとなる可能性がある。
12日現在の、EU/EEA 加盟国ごとの HUS および非 HUS の STEC 症例数ならびに死亡者数
EU Member State: HUS cases (deaths) / Non-HUS STEC cases (deaths)
オーストリア: 1 (0) / 3 (0)
チェコ: 0 (0) / 1 (0)
デンマーク: 8 (0) / 12 (0)
フランス: 0 (0) / 2 (0)
ドイツ: 773 (22) / 2387 (12)
ギリシャ: 0 (0) / 1 (0)
ルクセンブルグ: 0 (0) / 2 (0)
オランダ: 4 (0) / 4 (0)
ノルウェー: 0 (0) / 1 (0)
ポーランド: 2 (0) / 0 (0)
スペイン: 1 (0) / 1 (0)
スウェーデン: 17 (1) / 30 (0)
英国: 3 (0) / 3 (0)
合計: 809 (23) / 2447 (12)
(以下は、ProMED-mail には掲載されていないが、FORTH ウェブサイトに翻訳が掲載されている部分)
6月8日以降、新しい欧州連合の症例定義に従って加盟国が報告を行うようになり、フィンランド(症例数0に変更)、フランス、スウェーデン、オランダおよび英国の5加盟国において、数値が補正された。ドイツ保健衛生当局は、国内のニーダーザクセン州 の特定の生産者に由来する食品が感染を媒介している可能性が高いと述べており、この生産者が生産した全ての食品 (ビーンスプラウト bean sprouts およびその他の野菜類) が市場から撤去されることになると発表した ... 過去にドイツ保健当局が行っていた、ドイツ北部におけるキュウリ、トマトおよびレタスの摂食を回避するとの勧告には従う必要はなくなった。最初の感染源調査は、現在も続けられている。ドイツ保健衛生当局は、新たな患者の発生数が減少していると報告している。
[2] WHO update
Enterohemorrhagic _E. coli_ (EHEC) outbreak: update 14
 情報源 WHO, Regional Office for Europe, International Health Regulations、2011年6月11日 FORTH
10日現在、ドイツ政府当局は、疫学や食品流通調査を積み重ねた結果、(fenugreek, 緑豆 mung beans, レンズ豆 lentils, 小豆 adzuki beans, and アルファルファ alfalfa などの) スプラウト bean and seed sprouts が、ドイツの食中毒感染流行の原因食品と見られる、と発表した。10日、the Robert Koch-Institute (RKI), the Federal Institute for Risk Assessment (BfR) and the Federal Office of Consumer Protection and Food Safety (BVL) は共同で、通常あまり見られない腸管侵襲性ベロ細胞毒産生性大腸菌 enteroaggregative verocytotoxin-producing _Escherichia coli_ (EAggEC VTEC) O104:H4 bacterium による、ドイツでの感染流行の原因食品が、スプラウトと考えられるとの見方を公表した。現在も、感染流行の中心はドイツにある ... 以下、当局の勧告、HUS 発生状況、EHEC 感染者数、他国の発生状況、原文参照願います。
[3] Medical care in the wake of the epidemic
 情報源 US National Public Radio (NPR), Associated Press (AP) report、2011年6月11日。
医療従事者にかかる、過大な負荷のレポート、原文参照願います。

● 原因不明の病気、ポテト-ブータン
PRO/PL> Undiagnosed disease, potato - Bhutan: (MO) 20110613.1808
Doom for potato farmers
 情報源 Kuensel Online、2011年6月9日。
葉が萎れる premature wilting 上に、茎にも感染が広がる原因不明の病気のため死滅していると、Mongar のポテトの主要生産地域の農家が訴えている


● ダックウイルス性腸炎-英国、ハクチョウ、アヒル
PRO/AH/EDR> Duck viral enteritis - UK (03): (England) swans, ducks 20110613.1801
20110609.1748 20110610.1771 について。
 投稿者 英・International Zoo Veterinary Group、Mark Stidworthy MA VetMB PhD FRCPath MRCVS、2011年6月13日。
ハクチョウでの感染報告に加え、われわれが診断に関わっている多数の鳥園や動物園の中では、2011年の今シーズンに、ハクチョウとアヒル ducks の DVE [duck viral enteritis] 感染例が散発的に確認されている。典型的には、死亡例は単発であり、ごく少数だけに感染するのが普通である。トリには、the classical gross and/or histological lesions (?) が認められた。他の疾患については検討されなかった。これらの種?collections で、通常は大量死は起こらない。