2011年6月5日

大腸菌 O104  EU,スプラウト、抗生物質治療の問題

● 大腸菌 O104 EU(2件)
PRO/AH/EDR> E. coli O104 - EU (11): case update, poss. sprout source
Archive Number: 20110605.1720
 情報源 Associated Press、2011年6月5日。
簡易検査 Initial tests の結果、5日までに22人の死者と2200人以上の感染者が発生した an _E. coli_ [O104:H4] outbreak の原因が、ドイツ北部で栽培されたマメのスプラウトであった可能性があることが確認された。Hamburg and Hanover 両市にはさまれた the greater Uelzen area の1か所の有機栽培農場から出荷された、数種類のスプラウト sprouts が、ドイツ国内の5か所の州の感染患者と関係する可能性があることが分かった、と州農業当局長 Lower Saxony Agriculture Minister が述べた。次々にこの農場に関連する証拠が浮かび上がっていると述べた。大腸菌のアウトブレイクに苦しんでいる多くのレストランに、このスプラウトが配達されていたことが明らかにされ、農場は5日閉鎖されている。農場の従業員1名も感染している。sprouts of beans, broccoli, peas, chickpeas, garlic lentils, mungo beans and radish など、18種類のミックススプラウトが疑われている。これらのスプラウトは、サラダ用に使用されることが多く、当局は、結果が判明する6日までスプラウトの摂取を控えるよう呼びかけている。当局は、現在も他の原因である可能性を排除できていないため、ドイツ国民に対し、引き続きトマト、キュウリ、レタスの摂取を控えることを求めている。Sprouts については、これまでにも、1996年に日本で発生し死者12人と感染者12000人以上を出した _E. coli_ outbreaks などとの関連性が示唆されてきた
写真 Mung bean sprouts

PRO/AH/EDR> E. coli O104 - EU (10): USA commentary 20110605.1718
[1] 症例報告
 情報源 BBC、2011年6月4日。
欧州の保健当局者らによると、_E. coli_ [O104:H4] によるアウトブレイクは、鎮静化する兆しが見られ始めている。流行の震源であるドイツ国内で、6月に入って2日間で新たに200人近い患者が発生したものの、感染発生率は減少する傾向にある。しかしその割合はわずかで、終息したわけではない、とある医師は警告する。5月1日に初めて患者が確認されてからこれまでに、18人が死亡し、1836人の感染が明らかになっている。患者のほとんどがドイツの患者で、重症例に対し輸血が必要となっているため、ドイツ国内の医師ら献血を呼びかけている。ドイツ政府の疾病センターである、The Robert Koch Institute (RKI) は3日、前日までの2日間で新たに199人の患者が発生し、合計の感染者数が1733人になったと発表した。また、The WHO は、このほかに12か国で103人の感染が確認されているとしている; 1人を除く全員が、ドイツ北部への旅行者もしくは出身者であった。ドイツ腎臓学会長は、最も発生数の多い北部の病院で、1日当たりに報告される新たな感染者数が減り始めていると述べた ...
[2] Restaurant investigation
 情報源 MSNBC 、2011年6月4日。
食事をした客ら17人が発症した、ドイツ北部の町 Lubeck の1軒のレストランについて、ドイツの専門家らによる調査が始まったことが、4日の新聞紙上で報じられた。University Medical Center Schleswig-Holstein の細菌学者は、レストランが問題となっているのではないが、食材の流通経路から重要なヒントがもたらされる可能性がある、と述べた。このレストランで食事をしたドイツ人女性1名が、大腸菌感染による死亡し、感染した患者の多くが、死亡する可能性のある溶血性尿毒症症候群 hemolytic uremic syndrome (HUS) を発症した ...
[3] Antimicrobial Issue(抗生物質の使用)
 情報源 Nature、2011年6月3日。
腸管出血性大腸菌 enterohemorrhagic _E. coli_ [O104:H4] による未曾有の数の患者発生が、今も欧州で続いている中、米国の医療関係者ら American medics の間に、今回のアウトブレイクに対するドイツの対応に疑問を投げかける意見が出されていることが、the New York Times の記事で明らかになった。記事によると、"米国内で広く受け入れられている医学知識 the accepted medical wisdom では、腸県出血性大腸菌感染 EHEC _E. coli_ infections に対して、抗生物質による治療を行ってはならない (should not be treated with antimicrobial agents at all) とされており、耐性菌に感染している患者に対して抗生物質による治療を行うことは、耐性菌に有利に作用してしまうため特に危険である " と、ワシントン大学の小児科医師は指摘している。また、理由は明らかにされていないが、抗生物質の使用により、腎不全の発生率が高まるとの記載もされている。 (抗生物質によって、重症感染例の腎不全を惹起する Shiga toxin の細菌からの放出が増えることがその理由である) 
ドイツの医師や細菌学者らは、重要であるが以前から分かっているこのことを十分承知している。ドイツ政府保健当局は当初から、今回の菌が通常とは異なる抗生物質耐性を有していることを明らかにしてきたが、同時に、それらの薬剤を治療には使用していないことを繰り返し主張することも行っている。アウトブレイクの感染経路や細菌の毒性の調査にあたっている疫学者や細菌学者らは、耐性遺伝子から有用な情報を得ている。EHEC infections が否定できない重症下痢症や腎不全の標準的治療は、補液と透析である。しかし、今回のアウトブレイクで発生した重症患者の救命に、従来からあるこれらの方法の効果は十分ではなかった。10日前からドイツの医師らは eculizumab と呼ばれる新たなモノクローナル抗体による治療法を採用し始めた。the Hannover Medical Clinic の腎臓内科医は、現在までに200人の患者が eculizumab により治療され、十分効果が期待できる with promising outcomes としながらも、回復が保証されると結論付けることは、今の段階ではできないとしている。
しかし、この2日間に一部のドイツ国内の病院で、抗生物質による治療が行われ始めており、 "十分な議論の末、患者への効果を慎重に見極めながら、一部の患者らに抗生物質の使用を勧告するとの結論に至った" と the Robert Koch Institute は述べている。感染生態学会 German Association of Infection Biology (DGI) は3日、抗生物質の使用に関する見解の中で、 (fluoroquinolones and aminoglycosides などの) toxin secretionis を促す特定の抗生物質については、今後も EHEC infections の患者の治療に際しての使用を勧めないと述べた。
一方で、カルバペネム系 the carbapenem family of antimicrobials は、神経系の合併症や二次感染のある患者での使用は差し支えない、との意見を明らかにしている。 "in vitro tests では、カルバペネム系抗生剤が大腸菌に有効であり、かつ、使用による大腸菌からの more Shiga toxin 放出の増加は認められなかった" としている。また、例外的に持続感染例 exceptional cases of EHEC persistence については、抗生物質の rifaximin による、腸管内細菌のターゲット除菌 targeted reduction of intestinal bacteria が望ましいとの意見も記載されている。
強毒性の可能性に言及する研究者など ...
[Mod.LL- the carbapenem family of antimicrobial agents (including ertapenem, meropenem and imipenem) は、多剤耐性グラム陰性桿菌に対しても、有効であることが多いが、ペニシリンと同じく細胞壁合成を阻害し、より多くの toxin を産生させることはないが、放出させてしまう結果となる可能性を持っている。Rifaximin は非吸収性 rifamycin antimicrobial agent で、旅行者下痢症の治療に用いられるが、EHEC disease に対する治療に関しては懐疑的 speculative である。抗生物質の使用については、プラスマイナス両面から、厳密にモニターされることが望ましい。ヒトモノクローナル抗体 eculizumab (補体成分に作用) についても研究が行われている。HUS 自体は自然寛解するので、その効果の判定は困難かもしれない]

● リステリア症 米国,死亡
PRO/EDR> Listeriosis, fatal - USA: (CO) 20110605.1719
 情報源 9news.com、2011年6月2日。
コロラド州公衆保健環境局 The Colorado Department of Public Health and Environment [CDPHE] によると、リステリア症 Listeriosis 感染流行により2人が死亡した。5月20日以降に報告されている、いずれも Hispanic or Latino heritage である3人のリステリア症患者について調査を進めており、死亡したのは、30歳代の男性と60歳代の女性各1名である。年間10例程度しか発生しないところ、1週間で3人もの患者が発生したことを懸念する、と当局はコメントした。感染流行の原因はまだ分かっていない ... ハイリスクの食品 ( ) 内に記載された種類以外は食べない; チーズ(feta, queso blanco, queso fresco, brie, Camembert, blue-veined, or panela (queso panela については、pasteurized milk 製品であるとラベルに表示されているもの)、肉 (hot dogs, luncheon meats, cold cuts, other deli meats (e.g., bologna), or fermented or dry sausages については、内部まで十分に加熱されたもの)、シーフード ("nova-style," "lox," "kippered," "smoked" or "jerky."などとラベル表示されることの多い、salmon, trout, whitefish, cod, tuna and mackerel などの冷蔵スモークについては、加熱された料理、あるいは缶入りや shelf-stable product の製品)
関連項目 20071230.4186

● 原因不明の疾患、ブタ繁殖呼吸器障害症候群 ミャンマー
PRO/AH/EDR> Undiagnosed disease, porcine & porcine reprod. & resp. syndrome - Myanmar: RFI 20110605.1722
[1] 情報源 DVB - Democratic Voice of Burma、2011年6月2日。
ビルマ国内で多数のブタを死滅させている病気が、ウシやその他の家畜、イヌネコにも広がっている ...
[2] 情報源 Mizzima.com、2011年6月2日。
政府保健当局者は、Rangoon で発生中のブタの死亡原因の調査を行っている。Insein, Hlaingthayar and Hlegu townships の小規模養豚場で死亡したブタについて、細菌感染であことが示唆されているが、blue ear disease が除外され、はっきりとした原因は不明のままである ...

● 口蹄疫、ウシ バーレーン、イラン
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease, bovine - Bahrain, Iran: serotype Asia 1, alert 20110605.1721
 情報源 WRLFMD Quarterly Report January-March 2011 [accessed 5 Jun 2011]、2011年5月5日。
2011年に、バーレーンとイランで、口蹄疫 [FMDV serotype] Asia 1 が発生し、パキスタンからのウイルスとの関連性が認められている。