2011年9月14日

ビブリオ・バルニフィカス感染症 台湾、生ガキ
リステリア症 米国,マスクメロン

● ヒト、家畜の死亡 ブルキナファソ
PRO/AH/EDR> Human, livestock fatalities - Burkina Faso: (SH), anthrax susp. RFI
Archive Number: 20110914.2806
[1] 3人の小児が中毒となり、2人死亡
 情報源 lefaso.net [in French]、2011年9月9日
動物資源大臣 the Minister of Animal Resources は、小児 3人が中毒をおこしうち 2人が死亡した Essakane 村のある the Sahel [Oudalan province] を訪れたことを明らかにした。住民らは、ほかにもウシ、ヒツジ、ヤギなど多数の動物が死亡したと報告している。炭疽 'charbon' (anthrax) が確認されているが、検査により確認されなければならない、と述べた。村から 500mの the Essakane gold mine 金鉱山での精錬用の物質への不満を述べる住民もある。さらに敷地内を横切る家畜の移動に関係した牧畜業者と農家、また農家同士の間の争いなども報告されている
[2] 炭疽 'charbon' が疑われる
 情報源 burkina24.com [in French]、2011年9月9日
保健相と動物資源相は Essakane における死亡例について言及した。同名の金鉱山付近の村で、動物の死亡が発生し、この動物の肉を摂取した小児2人も死亡している。炭疽 'charbon' [anthrax] が疑われるため、現在検査が実施されている。
[3] ウシ1頭、ヤギ5頭、ヒツジ2頭の死亡
 情報源 lefaso.net [in French]、2011年9月8日
動物資源相は6日、Essakane における動物とその清掃動物 scavengers、および小児2人の死亡に関する調査のため、 the Sahel region での視察を行った。 ウシ1頭、ヤギ5頭、ヒツジ2頭の死亡報告を受けて行われた、Karafala/Essakane への訪問により、有効な感染対策が実施可能となる。このほか、食肉処理場で 30羽以上の scavengers [ハゲタカ vultures] が発見された。これ以前には、発病から 6日後に小児 2人が死亡している ...
[Mod.MHJ- 金鉱山のあるところには、常に水銀中毒の危険性があり、排水の適切な管理が行われないことが多いことで有名である。よって、確定されるまで 'suspect' anthrax outbreak の範疇となる。ただし、食肉処理場付近で 30羽のハゲタカの死体が発見されたことは、炭疽以外の原因であることを強く示唆する。アメリカダチョウ rheas とダチョウ ostrich を除くすべての鳥類と同様、ハゲタカも炭疽菌 _Bacillus anthracis_ には感染しない。従って、このような突然の大量死は、何らかの共通の毒素への曝露を意味する]
[Mod.TG- 金の抽出には cyanide extraction と呼ばれる工程があり、岩石から微小な金を取り出すためにシアン化物 cyanide が使われる。銀を取り出すときにも使われる。シアン化ナトリウムは、ただ単に岩石に接触させる simple application のではなく、抽出工程全体で使用される。過去これらの廃棄物質の貯蔵施設が損傷した時に、数トンにおよぶシアン化物が流出し多数の死者が発生した。死体やシアン産生性植物からのシアン化物によって、多数の種類のハゲタカや他の肉食禽類の被害にあっている]

● ビブリオ・バルニフィカス感染症 台湾
PRO/AH/EDR> Vibrio vulnificus, fatal - Taiwan: (TW) raw oyster 20110914.2804
 情報源 Central News Agency、2011年9月9日
たった1個の生ガキを食べた男性1名が48時間後に死亡したことを受け、台中 Taichung Tzu Chi Hospital は、シーフードのバーベーキューは十分加熱するよう注意を呼びかけている。12日までの the Mid-Autumn Festival の期間中、バーベーキューが好んで行われる風習があるためである。この50歳の男性は、8月下旬に発熱があるため、風邪を心配してこの病院を受診した。診察中は意識があったが、まもなく血圧が低下したため、医師らはビブリオ菌 _Vibrio vulnificus_ の感染を疑って治療を開始した。男性はアルコール性肝硬変の患者で、2日後にショックと多臓器不全のため亡くなった。感染しても通常の場合は、下痢もしくは蜂巣炎 (腫脹、熱感、発赤、痛みを特徴とする皮膚の感染症) を起こす程度であるが、この患者は、肝機能の問題で解毒作用が十分でないため、細菌感染に耐えられなかった。台湾南西部の沿岸地域や養殖業者らの間では、しばしばこの細菌が確認されている。糖尿病や肝臓病のある患者では、感染が重症化するリスクがあるため、魚介類などのシーフードの生食を避けることが重要である。
[Mod.LL- ビブリオ・バルニフィカス菌 _V. vulnificus_ 感染のすべてが生ガキの摂取によるものではない、と言う点を指摘しておくことは重要である。海水への曝露自体でも感染が起きるし、アサリ clams などの二枚貝軟体動物 bivalve molluscs でも発生している。 _Vibrio vulnificus は、ラクトース発酵性、好塩性、の日和見感染性グラム陰性菌で、河口付近に見られ、プランクトン、魚介類 (カキ、アサリ、カニ)、魚類など多くの海洋生物に関係する。暖かい水域 the warmer waters で確認されることが多い。汽水湖でも発生する。シーフードおよび環境中の菌 members of _V. vulnificus_ の発生を支配するのは、温度、pH、塩分濃度、溶解有機物濃度 dissolved organics の増加などである。開放創が菌を含む海水によって汚染されたり、サンゴや魚などによりキズを負ったりすることで創感染が発生する。健康な人が菌を嚥下すると胃腸炎になる。菌を含んだ生のシーフードの摂取による原発性敗血症 "primary septicemic" 感染を起こすのは、慢性疾患、特に肝臓疾患を持つ患者である。損傷した皮膚から菌が侵入した場合、血流中に入り、敗血症性ショックをおこし、多くの患者が急速に死に至る (致死率約50%) 。70%以上の患者に特徴的な distinctive bulbous skin lesions が認められる。 
大事な点が2つある: ビブリオ菌は温度の高い塩水の常在菌 normal flora で、発見が汚水による汚染を意味するのではないこと。ほとんどの生命に関わる疾患 (の発生) は、基礎疾患のある患者に限られること。]
参考情報 20070719.2317

● 日本脳炎など インド
PRO/AH/EDR> Japanese encephalitis & other - India (17): (BI) 20110914.2803
[1] ビハール
 情報源 Yahoo News, Indo Asian News Service (IANS) report、2011年9月14日
ビハール Bihar 州において新たに6人の小児が死亡し、脳炎によると見られる疾患で死亡した小児が25人となったことが、14日当局から報告された。Patna から約 100km の Gaya にある Anugrah Narain Medical College and Hospital (ANMCH) で、2日間に6人の小児が死亡した ... Gaya では 2005, 2007, 2009年にも、脳炎と見られる疾患が発生し、多くの小児が死亡している ... 2ヶ月前に Muzaffarpur district で51院の小児が死亡しているが、当局は脳炎による死亡であると認めていない。
[2] NVBDC statistics as of 13 Sep 2011
 情報源 NVBDCP (National Vector Borne Disease Control Program) India 、2011年9月14日

● レジオネラ症 イタリア
PRO/EDR> Legionellosis - Italy: (VR) travelers 20110914.2802
 情報源 Nova Clinical Services、2011年9月8日
the European CDC によると、7月以降北部の町 Lazise, Verona Province (Veneto Region) への旅行者11人のレジオネラ症 legionellosis が確認されている。感染の原因は分かっていないが、4つの宿泊施設のうちの3か所が中心部の南に集中している。2週間以内の Lazise への旅行者で発熱と肺炎がある場合、レジオネラ症を考慮する必要がある。

● セレウス菌感染症 米国

PRO/AH/EDR> Bacillus cereus - USA: (Chicago) laboratory exposure 20110914.2801
 情報源 Chicago Tribune, Associated Press (AP) report、2011年9月14日
シカゴ大学 The University of Chicago [UC] は、研究者の1人が実験に使われていた食中毒菌のセレウス菌 _Bacillus cereus_ と同じ菌に皮膚感染したとして、研究室の1つの使用を中止している。この研究者は8月後半に入院となり、感染組織の切除手術を受けその後退院している。2年前にも米国で、弱毒化したペスト菌を使用していた研究者が感染し死亡している。大学側は患者により大きく異なると話している。感染経路は解明されていないが、念のため研究施設の消毒作業を行い、衛生当局に連絡をおこなった。
[Mod.MHJ- セレウス菌 _Bacillus cereus_ は、東南アジアを中心として下痢症の主な起因菌となっている。皮膚病変を生じたことから your cousin's _B. cereus_ [よく知られている菌の意?] ではなく、テキサス Texas 州のオイルパイプ溶接工の感染に関係した plasmids を持つ菌株であろう。研究者の皮膚感染発生により、大学の実験手順 UC laboratory protocols や常に手袋が使用されていたか、かなり進行してから受診し、医師は切除を選択しなければならない結果を生じる程感染のリスク認識がなかったのか、などに疑問が生じた。残念ながら、実験中の病原体による実験室感染はまれではない。この点で最も危険性が高いのはブルセラ菌 the brucellae である。1940年代から50年代の炭疽菌研究の全盛期の Fort Detrick, Maryland において多数の感染者が発生したが、その他の地域での発生は確認されていない。セレウス菌の皮膚病変は炭疽感染に似ているため the UC medics が不要である切除を行ったと考えられる。積極的に排膿すれば、ほとんど痕跡だけを残して炎症は治まる。20051209.3546 で米国 Georgia の士官候補生 military cadet の頭部の感染の集団発生について読んでおかれることを勧める。抗生物質の服用開始から 48時間以内に全員の病変が消失 cleared up している]

● リステリア症 米国

PRO/AH/EDR> Listeriosis, fatal - USA (03): cantaloupe susp. 20110914.2800
[1] 3人が死亡し、ほか6人が入院中
 情報源 KOB.com、2011年9月13日
リステリア症流行 listeriosis outbreak の発生に、ニューメキシコ New Mexico 州保健当局者らは警戒を強めている。州内ですでに Bernalillo County の男性2名と Curry County の女性1名の3人が死亡し、ほか6人が入院中である。コロラド Colorado 州でも11人の患者が確認されている。マスクメロン cantaloupe による感染が疑われている。NM 州保健局は確証を得ていないが,コロラド州の専門家は Pueblo, Colorado の東97kmにある the Rocky Ford growing region 産の cantaloupe による疑いが強いと述べている ... 現時点で60歳以上の高齢者、妊娠女性、乳児と免疫の低下した患者の、4つのハイリスクグループの人々に対し、マスクメロンを避けるよう注意が呼びかけられている。
[2] 情報源 Forbes.com, Associated Press (AP) report、2011年9月13日
保健当局 the Centers for Disease Control and Prevention [CDC] は、コロラド州とニューメキシコ州で4人が死亡したとされる細菌流行の発生を受け、コロラド州内の名産地からのマスクメロン Rocky Ford cantaloupes への注意を呼びかけており、栽培農家に影響が出ている。5つの州 の16人 (11 from Colorado, 2 from Texas, and one each from Indiana, Nebraska, and Oklahoma.) がリステリア菌に感染したことを受けての対応となった。米国内でマスクメロンに関係してリステリア症流行が発生したのは初めてと説明している。デンバー Denver の南東約200kmの the old Santa Fe Trail 沿いの地名から、Rocky Ford cantaloupes と呼ばれ、平均糖度が高いことで有名である ... The CDC は、自宅にあるメロン the Rocky Ford region 産であるかどうかを確認し、もしそうである場合、 vulnerable group. の人々は食べないよう呼びかけている ...
[Mod.ML- 6月の outbreak of listeriosis occurred in Colorado (20110605.1719) では、3人の患者のうち 2人が死亡し,3人はいずれもヒスパニックもしくはラテン系の祖先を持ち、チーズ soft Mexican-style cheeses のリステリア菌汚染が原因であるとされていた。
今回のリステリア症流行は8月に始まり、当初死者2名を含む13人の患者 (20110909.2746) と報告されている。上記の2つのニュースによると、アウトブレイクは 25人に拡大し、複数の州で 4人の死亡が確認されている。患者からの分離菌に対する genotyping が行われていることが望まれる。一部あるいはすべての患者で一致すれば、共通の感染源があったことが示唆される。ヒトから分離された菌と、疑われる感染源からの分離菌の genotypes が一致することで、感染源が特定できる。the Rocky Ford region of Colorado のマスクメロンが感染源として疑われているが、何をきっかけとして this fruit/vegetable が疑われることとなったのかについては示されていない。マスクメロンはこれまでにも消化管の病原体 enteric pathogens、特に1991年~2011年に北米で発生した3件のサルモネラ菌 _Salmonella_ species 感染流行:1991年 (MMWR)、2002年 (20021123.5884)、2011年 (20110325.0948) の感染源であるとされてきた。マスクメロンは地上で蔓に成り、皮の部分 rind が汚染された土壌や肥料・水などによって病原体 enteric pathogens に汚染される可能性がある。流通過程で汚染されることもある。皮をよく洗わないと、外の皮を切る時に中身 the pulp of cantaloupe まで菌で汚染されてしまうため,カットする前に丁寧に外の皮を洗うことが大切である。しかしリステリア菌は冷蔵庫内温度でも増殖するため、メロンの中身に付いたリステリア菌が少量でも、冷蔵庫内の食品を高度に汚染する可能性もある]

● A型肝炎 エストニア
PRO> Hepatitis A - Estonia (02): (VD), background 20110914.2807
 情報源 GIDEON (Global Infectious Disease & Epidemiology Network)、2011年9月14日
20110913.2790 に関し。
最近 Viljandi において発生した流行は、1990年代以降バルト海沿岸地域 the Baltic region で hepatitis A and hepatitis B の発生率が減少している事実に相反する。
エストニアで最後に A 型肝炎が大流行したのは、1998年のことである (989 cases)。

● 炭疽 米国、コメント
PRO/AH> Anthrax, human, 2001 - USA (06): comment 20110914.2798
 投稿者 Council on Foreign Relations、Laurie Garrett、2011年9月13日
2001年に曝露した小児1人の両親から聞いた話の内容を  "I Heard the Sirens
Scream" として出版した。この子どもは10年前にほとんど死にかけたが、今は元気である

● ヒトスジシマカ 米国
PRO/AH/EDR> Aedes albopictus, USA: (CA) 20110914.2805
 情報源 San Gabriel Valley Mosquito & Vector Control District、2011年9月12日
Asian tiger mosquitoes (_Aedes albopictus_、ヒトスジシマカ) が先週、El Monte 市内 the 11 000 block of Dodson St. で発見された。日中にヒトを襲う攻撃性のあるこの蚊族は、本来カリフォルニア California 州には生息しておらず、2001年以降、 the San Gabriel Valley で目撃されたことは無かった。このときは、東南アジアからの植物 _Dracena_ spp. or "Lucky Bamboo"の積荷と共に誤って輸入された。現地の蚊族対策当局 The San Gabriel Valley Mosquito & Vector Control District は、関係各機関と協力し、繁殖地域の調査と拡大防止策に懸命に取り組む予定である ... the San Gabriel Valley に元からいる種の蚊族と異なり、およそ 6 mm と小型で、はっきりとした白黒の胴体を持つこの蚊族は、非常に攻撃的な "day-biter."である。日没や明け方にも活動することがあるが、日中に刺咬する点が際立った特徴となっている ... 東南アジア原産だが、1985年に初めて米国内で発見され、その後南東部と東部に広がった。 ヒトスジシマカ _Aedes albopictus_ は、デング熱、黄熱、チクングニヤ熱など、脳炎を起こす様々なウイルスのベクター efficient vector (transmitter) で、最近では、フロリダ Florida 州南部、テキサス Texas、ハワイ Hawaii の各州で、1946年以来アメリカ本土での発生が確認されていなかったデング熱の感染流行の原因となった。 [正確には in Florida in 2009 and 2010, 20100915.3345]

● 粘液腫症、ウサギ オランダ
PRO/AH/EDR> Myxomatosis, rabbit - Netherlands
Archive Number: 20110914.2808
 情報源 Dierennieuws [in Dutch]、2011年9月13日
(Zoetermeer 市の) 議会は、各地の公園におけるウサギの病気発生について報告を行った。ウサギは、蚊族やノミが媒介する天然痘 smallpox と関係のあるウイルスの病気、粘液腫症 myxomatosis に感染していた。この病気は、眼瞼、口、肛門が腫脹する特徴を持つ。眼の周りが腫れるため、ウサギは見ることができなくなり、鳥類などの天敵に簡単にやられてしまう。自然界で感染すると5-10%しか生き延びることができない。行楽地 the recreation (area) の周辺で飼われているウサギの飼い主に対してワクチン接種が勧められている。
[Mod.AS- Myxomatosis は the Poxviridae family・Myxoma virus による the European rabbit の重要な疾患で、臨床型を問わずウイルスの分離同定もしくは抗原検出によって診断される。液性免疫の陽性反応によって軽症型の後方視的診断が可能で、個体群内での感染蔓延の割合を示す。皮膚の大きな粘液腫病変が特徴である。人獣共通感染症ではない]

● 慢性消耗性疾患、シカ科 米国
PRO/AH/EDR> Chronic wasting disease, cervid - USA (09): (WV) update 20110914.2799
 情報源 WTRF.com, The State Journal report、2011年9月11日
DNR: chronic wasting disease contained in 2 West Virginia counties
ウエストバージニア (WV) 州のシカの慢性消耗性疾患 Chronic wasting disease [CWD] の発生は Hampshire and Hardy counties に限局されていると見られているが、当局は引き続き監視を続けている

● ボツリヌス症 米国,鳥類
PRO/AH/EDR> Botulism, avian - USA: (CO) 20110914.2797
 情報源 The Denver Post、2011年9月9日
Dozens of dead ducks found in Aurora park
Utah Park で、8月中旬から下旬にかけて、約 40羽の mallard duck の死体が回収された。野生動物の当局者は、暑い時期に最も多くなる、鳥ボツリヌス症 outbreak of avian botulism が原因であるとの見方を示した。