2011年9月20日

ポリオ ケニア、中国、パキスタン
ダニ媒介性回帰熱 ロシア EID

● ポリオ ケニア、中国、パキスタン
PRO/EDR> Poliomyelitis - worldwide (13): Kenya, China, Pakistan
Archive Number: 20110920.2860
[1] ケニア Kenya - Western Province
Thousands of children to be immunized amid polio outbreak
 情報源 AlertNet / IRIN、2011年9月19日
ケニア西部において最近、3例野生株 1型ポリオウイルス the Wild Polio Virus Type 1 の感染患者が発生したことから、保健当局は十分注意するよう呼びかけている。このウイルスは非常に感染拡大が早いため、1例でも発生すれば an outbreak と見なされる、と当局者が述べた。the Kamagambo area of Rongo District, Western Province [複数のマップを見たが Kamagambo and Rongo District があるのは Nyanza Province - Mod.MPP] の3例で確認されたウイルスはいずれも、2010年にウガンダ Uganda's Bugiri District で確認されたウイルスと同じだった、と説明されている。このウイルスに感染した場合、最も多く見られるのは麻痺で、平均すると感染者200人に1人の割合で不可逆性の麻痺を通常は下肢に生じる。ケニアでは根絶に向けた努力が行われているものの、2006年と2009年に the northern Garissa and Turkana districts から sporadic outbreaks が報告されている。今回の流行は、隣国のソマリアと南スーダンで発生中のポリオ感染流行に関係したものであると政府当局は述べている。2009-2010年にそれまでポリオが根絶されていた23カ国で輸入されたウイルスによる再燃 re-infected が起きている。一斉ワクチン接種キャンペーン massive immunization campaign は Rongo と隣接する Homabay, Kisii, Kisumu, Nyamira, Migori and Transmara districts で実施される予定である
[Mod.MPP- 上記報告で2010年の Bugiri Uganda (20101027.3900) と同じ the WPV1 が Western Kenya で確認された点が注目される。2010年に確認されたウイルスは、 Turkana in NorthWest Kenya (20090914.202049) の患者と遺伝子型が同じ the WPV1 であり、2009 in Turkana Kenya の the WPV1 は Southern Sudan を感染循環する WPV1 と遺伝子型が同じだった。スーダンはかつて、2002年と2003年にポリオ清浄国とされていたが、2004年にナイジェリアから再びウイルスが持ち込まれ2004-2005年に広範囲での感染伝播が起き、2006年は0であったが、2007年に1例、2008年以降は感染が継続して発生している (20090226.0808)。 従って、ケニア、ウガンダ、スーダンで現在起きている出来事は、周囲の他の地域では WNV の感染が続いている中で、WPV の感染を断ち切った後に直面する不安定な状況を反映したもので、高い予防接種カバー率を維持して再導入 reintroduction of WPV transmission を防止することが重要であるのは明白だが、多くの国々にとって試練を伴うのである]
地図 Kenya showing provinces  
[2] 中国 新疆自治区、患者7人
WHO: Polio strain spreads to China from Pakistan
 情報源 USA Today、2011年9月20日
The World Health Organization は、パキスタンから中国に危険な型 'dangerous' strain のポリオが導入されたことに対し、各国への注意を呼びかけている。中国で確認された野生株1型ポリオウイルス wild poliovirus type 1と、パキスタンで感染循環するウイルスの間に、遺伝子上の関連性が確認されたことが明らかにされた。パキスタンとの国境にある新疆自治区 Xinjiang で2か月間でこれまでに7人の感染が確定診断されている。WHO の報道官は、 type 1 は type 3 に比べ麻痺を生じやすく感染力が強い点で、より危険なウイルスであると説明した。Type 2 polio は根絶されている。 [The last wild poliovirus type 2 isolated は、1999年10月のインド Aligarh, Western Uttar Pradesh とされている: Apparent Global Interruption of Wild Poliovirus Type 2 Transmission. MMWR. 30 Mar 2001. 50(12);222-4]
[Mod.MPP- 20110902.2683 の4人から7人に増え、発生地域での感染拡大が示唆される。世界で今もポリオ感染が継続する4か国のうちの1つである、パキスタンの循環ウイルスと遺伝型が同じウイルス WPV による流行である点に注目しなければならない]
[3] 中国 9例
WHO reports polio outbreak in China, warns of spread
 情報源 Reuters、2011年9月20日
1999年以来となる中国でのポリオ感染流行発生はパキスタンからの輸入によるもので、ハッジ the annual Haj pilgrimage 期間中に危険なウイルスの感染がさらに拡大する危険性が高いことが20日 WHO から示された。中国国内で合計9例の患者が確定診断され、パキスタンでは、政情不安による the Khyber tribal region を含む地域でのワクチン接種の中断により全国的にポリオ感染が拡大していると見られると WHO 報道官が述べた。Umra and the upcoming Haj による大規模な人口の移動により、パキスタンから国境を越えた野生株ポリオウイルスの導入は、今後数ヶ月間にわたってさらに拡大すると見られると述べた。
[4] 中国,パキスタンから - WHO confirmation
Confirmed international spread of wild poliovirus from Pakistan
 情報源 WHO Global Alert and Response、2011年9月20日。
現在パキスタンで感染循環するウイルスの遺伝型に関連のある、野生株1型ポリオウイルス Wild poliovirus type 1 (WPV1) が中国国内で分離されている。パキスタンは全国で WPV1 の循環が確認され、2011年のアジアで唯一3型 wild poliovirus type 3 (WPV3、アジア大陸からほとんど根絶されかけている株) 患者が確認された国である。13日現在、パキスタンで報告されている患者数は84人で、2010年同期は48例だった。2011年、パキスタンでの追加予防接種活動 supplementary immunization activities (SIAs) が、重要なハイリスク地域で十分に行えていない。the Federally Administered Tribal Areas (FATA) の特に Khyber agency の治安に問題のある一部地域の 20万人の小児が、過去2年間の SIAs から常に漏れていた。Khyber Pakhtunkhwa and FATA 以外にも、Khyber のアクセス可能な地域や  the provinces of Balochistan and Sindh を中心とする重要な感染伝播地域でも the quality of SIAs 維持に多大な困難を伴なっている。またサーベイランスの問題で検出されていない感染循環があることも否定できない。国を超えて感染が広がったとされる WPV1の広範囲の拡大と、2011年のアジアで唯一 の WPV3 確認などの要因をふまえ,the World Health Organization (WHO) はパキスタンから海外への WPV 感染拡大のリスクを 'high' にランクした。今後数ヶ月間にわたって行われる Umrah and the upcoming Hajj (pilgrimage to Mecca, Kingdom of Saudi Arabia) に伴った大規模な人口移動が見込まれるため、なおさら (注意が必要)である。パキスタン政府当局は、野生株ポリオウイルスの感染拡大への早急な対処のため大統領の支援を得て緊急対策を実施した。しかし現段階でその効果は見えていない ... ワクチン接種計画など ... アジアから地中海東部にかけての国々が、急性弛緩性麻痺 acute flaccid paralysis (AFP) へのサーベイランスを強化し、輸入されるポリオウイルスを早い段階ですべて検出し、輸入に対し迅速に対応を可能とすることが重要である。国内で、全タイプに対する追加ワクチン接種を継続して行い、ウイルス再導入の際の影響を抑えることも、同じく重要である。WHO's International travel and health の勧告にあるとおり、パキスタンへ入国または出国する旅行者は全て、ワクチン接種完了による予防が必要である。OPV を過去に3回以上接種されているパキスタンへの旅行者は、出発までに1回の追加接種を受けるべきである。接種が済んでいない旅行者は、必ず全てのワクチン接種を完了してから出発する必要がある。パキスタンから出国する旅行者は、出発までに全てのワクチン接種を完了していなければならない。ポリオ清浄国では、パキスタンからの旅行者の入国ビザの発給に当たり、ポリオワクチンの接種を要求することも可能である。Hajj and Umrah season がすでに始まり、サウジアラビア王国は、 Umrah and Hajj のための旅行者(全年齢)に対する、ワクチン接種要求を発出した。WHO's International travel and health に沿った要求に加え、ポリオ常在国からの全年齢の旅行者に対し、サウジアラビアへの旅行の6週間前の、OPV ワクチン接種証明の提示と、到着時の1回の追加接種を求めている。
[5] パキスタン Baluchistan
Polio cases at all-time high in Balochistan
 情報源 Daily Times、2011年9月20日
Pishin and Loralai districts で新たに2例のポリオ患者が確認され、 Balochistan で2011年のこれまでに確認されたポリオ患者は37人となった。ポリオの感染が分かったのは、Ghasiabad in Tehsil Dukki of Loralai district の生後12ヶ月の男児と、Union Council Karbala in Pishin の男児の2名である。Pishin district で確認された患者はこれで9人となり、患者の多く(13人) がKila Abdullah district の患者である、と当局者が述べた ... ほか、5 in Quetta, 3 in Khuzdar, 3 in Naushki, one in Kolhu Kalat, Loralai and Dera Bugti each など。

● ダニ媒介性回帰熱 ロシア

PRO/AH/EDR> Tick-borne relpasing fever - Russia: (SV) Borrelia miyamotoi 20110920.2858
 情報源 Insciences、2011年9月20日
原著 Humans infected with relapsing fever spirochete Borrelia miyamotoi, Russia. Emerg Infect Dis. 2011 Oct; (Epub ahead of print) DOI:
エール大学 Yale School of Public Health とロシアの研究者らが[比較的新しく報告された]ダニ媒介性細菌が、米国などで病気を発生させていることを発見したと the journal Emerging Infectious Diseases で発表した。

_Borrelia miyamotoi_ と呼ばれるスピロヘータで、ライム病 Lyme disease の起因菌である _Borrelia burgdorferi とは遠い関係にある。これまで日本のダニでしか確認 [1995年] されたことがなかったこのスピロヘータは、2001年にコネチカット Connecticut のダニ deer ticks でも確認されたが、ヒトに対する病原性があることは知られていなかった。この菌はその後、欧米全域のライム病を媒介するすべての種類のダニで確認されている。
研究者らは、この新たなスピロヘータによるロシアのダニ媒介性疾患の患者と、米国内のライム病患者との比較を行った。
(ロシアの) 疾患は、治療されない場合は繰り返される高熱を特徴としライム病と混同される可能性があった。現在一般的検査は市販されていないが、米当局 the National Institutes of Health (NIH) から資金を受け、診断検査法が開発されることになった。
the Northeast and Upper Midwest parts of the USA のダニの約2%で _B. miyamotoi_ が確認され、ダニからマウスへの感染実験が行われている。deer ticks により毎年2万5千人以上がライム病に感染していることから、米国内でほかにも _B. miyamotoi_ infection による疾患が発生していないかについて、研究チームは調査を急ぐことにしている。
[Mod.LL- オリジナルの投稿には何度も "new" が出て来るが、16年前に報告された new ではない病原体であり、結果として起きる病気 relapsing fever も然りである。さらに the relapsing fever group of borreliae の一員であるこの病原体が、マダニ ixodid ticks で確認されたのも初めてではない。米国西部で発生する回帰熱 Classical tickborne relapsing fever は、soft tick of the _Ornithodoros_ genus により感染が伝播される。ここで注目すべき relevant は、米国内で発生する tick-borne relapsing fever にきわめて症状が類似するが、末梢血のライト染色 the Wright stained では検出することができないという、ヒトでの臨床症状が記載されている点にある。(報告されたスピロヘータが)米国内のマダニで確認されたことから,non-endemic area で発生した回帰熱の症状のある患者では,この病原体が原因でライムボレリア症 Lyme borreliosis の所見に一致しない場合もあることを、医療従事者は知っておくべきである。私の経験ではライム病ではしばしば回帰熱で見られるような発熱が認められないことがある]

● 日本脳炎など インド
PRO/AH/EDR> Japanese encephalitis & other - India (19): (UP), RFI 20110920.2857
 情報源 The Times of India、2011年9月19日
Lucknow の北東約125kmにあるこの地区で、10日間で脳炎により少なくとも61人が死亡し、662人が入院となり、流行が発生した可能性がある。当局者は、脳炎の原因が、よどんだ水に発生する蚊族(によるウイルス感染)だと述べた ... インドではモンスーン後を中心に、新生児を含めたすべての年齢層の主な死亡原因は単純ヘルペスウイルス the herpes simplex virus による病気である、と述べた。2010年、脳炎による多数の死者が発生したのは、Bihar and UP [Uttar Pradesh) だった
地図 the Bahralch district in Uttar Pradesh state

● コレラ ハイチ、ドミニカ共和国
PRO/EDR> Cholera, diarrhea & dysentery update 2011 (29): HAITI, DR 20110920.2856
[1] ハイチ
 情報源 Voice of America、2011年9月12日
多くの地域で安全な水と良好な衛生状態が得られない中、ハイチでは今もコレラ Cholera 感染流行が発生し、2010年に確認されてから今までの患者が43万9600人に達した。当局の対応により死亡率が抑えられており、 the rolling 14-day case fatality rate は1%未満を保っている。
[2] 南東部では致死率 5.3%
 情報源 New York Times Editorial、2011年9月7日
2010年10月以降、ハイチのコレラ感染流行により6000人以上が死亡し、制圧には程遠い状態である。ポルトプランス Port-au-Prince の北部郊外で発生して以来、42万人以上が感染した。国連の平和維持部隊からの排水が the Artibonite River を汚染したことが原因と見られている。コレラは予防可能で治療も容易であるが、ハイチのように、慢性の物資の不足や欠如、安全な飲料水と良好な衛生環境の無い国の、特に初めて感染が発生し、最も大きな被害を受けている農村部では、制圧はきわめて困難である。ハイチの中でも感染に弱い南東部では、7月までの致死率が 5.3%に達している。適切な治療が受けられれば、1%未満に抑えることができる ... 政情が不安定であることなど。
[3] ドミニカ共和国
 情報源 Florida Center for Investigative Reporting、2011年9月5日
2011年、6月18日時点のドミニカ共和国内のコレラ感染が確定した患者は1681人で、58人が死亡した。ドミニカ共和国の1歳未満の乳児死亡の半数が、下痢症を原因としている ... Independencia などの場所の事態はさらに深刻で、ある 2週間に小児の 21%超が下痢を経験した。他の地域では14.7%であることが、2007年の人口統計 the 2007 Demographics and Health Report by the Dominican Center for Social and Demographical Studies で示されている。この地域の、2007年の5才未満の小児死亡率は1000人対44人で、全国平均は36% (33人?) となっている。

● ペスト 米国,敗血症性
PRO/AH/EDR> Plague - USA (04): (OR), septicemic 20110920.2855
 情報源 The News Tribune、2011年9月19日
Umatilla County, Oregon で16日、地元の男性1名が敗血症性ペスト septicemic plague で入院となったことが、保健当局により確認された。Lake County, Oregon でのハンティングの際に感染したと見られている。現在男性は治療中である。
"ペストは感染性のノミの刺咬によりヒトに感染する重篤な疾患であるが、早期であれば抗生物質により治療可能である"と Umatilla County public health administrator がのべた。
オレゴン Oregon 州でペスト感染と診断された患者は1995年以降3人しかいない。2人は 2010年に Lake County で感染し3人全員が治癒している ... ペットのノミ治療を行い、ノミ忌避剤を使用し、げっ歯類の多い地域ではソックスの中にパンツのすそを入れ、野生動物に近づかないなどの注意が必要である。
[Mod.LL- 米国内のペスト菌 _Yersinia pestis_ 感染は、ほとんどが the states of Colorado, Utah, Arizona and New Mexico の州境が集まる the Four Corners area of the USA で発生している。
the CDC (Centers for Disease Control and Prevention) は: 
"腺ペスト bubonic plague による死亡が発生するのは、感染性横痃 the infected bubo 内のペスト菌 _Yersinia pestis_ が血流に入り (septicemic plague 敗血症性ペスト)、敗血症症候群の症状を発症した場合である。 播種性血管内凝固 Disseminated intravascular coagulation (DIC) によって起きた皮下出血が、中世に黒死病 the 'Black Death' と呼ばれた由縁である。ペスト菌が肺に侵入して、二次性ペスト肺炎 (菌血症に続発する) が発生したり、髄膜に及んだ場合は髄膜炎となることもある。いずれのケースも高い致死率となり、肺炎 the secondary plague pneumonia はエアロゾルによるヒト-ヒト感染の経路となる。 
"ヒトのペスト感染で最も典型的な症状は、自発痛を伴い激しい圧痛のあるリンパ腫脹で、 "bubo(横痃) " と呼ばれる。リンパ節腫脹、発熱、悪寒、頭痛、激しい体力低下があり、感染したげっ歯類、ウサギ、ノミと接触した可能性のある患者では、腺ペスト Bubonic plague が疑われる。感染から bubonic plague の症状を発症するまで通常2-6日間である。 
"腺ペストが治療されないまま放置されると、ペスト菌が血流に侵入して血管内で増殖し、速やかに全身に波及し、重症化や死に至ることがある。ペスト菌が肺に感染すると、重症呼吸器疾患の肺ペスト the pneumonic form of plague となる。感染した患者は、高熱、悪寒、咳、呼吸困難、血痰などの症状が認められる。適切な抗生物質による治療が行われない場合、急速に進行して死に至る。米国内の全ペスト患者の約 14 per cent (1 in 7) が死亡している" と書かれている]

● 伝染病、家畜 アラブ首長国連合 対策
PRO/AH/EDR> Epizootic diseases, livestock - UAE: Control 20110920.2859
ADFCA launches campaigns to protect animal health
 情報源 The Gulf Today、2011年9月18日。
アブダビ食品管理局 The Abu Dhabi Food Control Authority (ADFCA) は17日、4種類の感染症: 口蹄疫、伝染性ヤギ胸膜肺炎、小反芻獣疫、およびヤギ ・ ヒツジ痘の感染拡大防止のための、2つのキャンペーンを開始することを発表した。キャンペーンの目的は、伝染病の根絶と、伝播する外寄生虫の駆除で、家畜の免疫を高め、家畜頭数の増加と生産性の向上につなげる狙いがある