2011年9月20日ー21日

狂犬病ワクチン 種類,有害反応
ダニ媒介性回帰熱 ロシア EID

● 狂犬病ワクチン インド
PRO/AH/EDR> Rabies vaccine, serious adverse events - India: RFI
Archive Number: 20110921.2869
 情報源 Times of India、2011年9月21日
Moti Bagh にあるニューデリー市立病院 the New Delhi Municipal (NDMC) Charak Palika hospital で19日、狂犬病に対するワクチン Rabies vaccine を接種された患者2人が、重篤な呼吸障害心停止を起こした。45歳の男性と52歳の女性で、危険な状態にあるため Safdarjung hospital's ICU に転送された。全てのワクチンのバイアルは封印され、聞き取り調査が行われている。一見するとアレルギー反応のようだと匿名の病院医師は語った。45歳男性は市職員で、52歳女性は Moti Bagh 在住の主婦であった。接種後すぐに激しい胸痛を訴え、救急室で心臓内科医や麻酔科医らが治療に当たったが状態が悪化したため転送された。女性の家族は、3回目のワクチン接種だったが突然心停止となり、昏睡状態で生命維持装置につながれていると述べた。男性患者も危険な状態にあり、人工呼吸器を装着されている。市保健当局者によると、19日にこの2人を含む12人の患者に抗狂犬病ワクチンが接種され、他の患者らに異常は認められていない。胸痛と心停止を訴えた2人には、新しいバイアルのワクチンが接種された ... 狂犬病ワクチンによる重篤な副反応は、まれであると述べた。使用期限は2013年で、同市では毎月500人以上に狂犬病のワクチンが接種されている。デリー The Municipal Corporation of Delhi (MCD) では毎月1万人に接種される。
この当局者は "狂犬病ワクチンの副反応による死亡は経験したことがない。調査により the particular batch of vaccine に問題があるとすれば、接種の見直しを行う" と述べている ...
[Mod.MPP- the WHO 2010 position paper on rabies vaccines によると、インドで1年間に発生する狂犬病による死亡がおよそ2万件に上るとされている。ヒトに対して使用可能なワクチンには2種類あり、神経組織ワクチンと細胞培養ワクチンである。WHO は全ての国に対しできるだけ早く、神経組織ワクチン nerve tissue vaccines の使用を止めて、細胞培養による、より有効性と安全性が高いワクチンの開発に切り替えるよう求めている。過去、インドでは神経組織ワクチンが使用されていたが、細胞培養ワクチンに切り替えられている。狂犬病予防の上で、濃縮・精製 concentrated and purified された細胞培養 cell-culture (CCV) および発育鶏卵培養 embryonated egg-based (EEV) rabies vaccines (まとめて CCEEVs と呼ばれる) が安全かつ有効とされている。神経組織ワクチンはこれまでより重篤な副反応に関係し,the CCEEVs と比較して免疫原性が強く more immunogenic、WHO はもはやこれを推奨していない。CCEEVs はヒト二倍体細胞 human diploid cells(胎児線維芽細胞 embryonic fibroblast cells)、アカゲザル胎児二倍体細胞 fetal rhesus diploid cells、ベロ細胞 Vero cells(サル腎細胞 African green monkey kidney cells)、初代ハムスター腎細胞 primary Syrian hamster kidney cells、初代ニワトリ胚細胞 primary chick embryo cells または発育カモ卵 embryonated duck eggs などで培養された propagated  狂犬病ウイルスが含まれている。より新しく開発された chick embryo cells and Vero cells を用いて製造されたワクチンは,the human diploid cell vaccines と比較して、安全かつ有効で費用もかからない。細胞培養(または発育鶏卵)の個体別培養で増殖 growth させた後、ウイルス浮遊液 the viral harvest には、濃縮、精製、不活化、凍結乾燥 lyophilized が行われる。 the CCEEVs の一部にはヒトアルブミンや処理ゼラチンが安定剤として用いられている。WHO prequalified rabies vaccines にはチメロサール thimerosal などの保存剤使われていない
暴露後に関する勧告は、狂犬病が疑われる動物との接触の程度により異なる。 
category I exposure (触ったり、エサをやったり、傷のない皮膚をなめられた licks ) の場合は、予防措置 prophylaxis は不要である: 
category II (露出した皮膚をかじられた nibbling 、出血の無い小さな引っかき傷や擦り傷) では、直ちにワクチンを接種する: 
 category III (皮膚を穿通する咬傷や引っかき傷、唾液による粘膜汚染、キズをなめられた、コウモリと接触があった) 場合はワクチン vaccination とともに抗狂犬病免疫グロブリン注射 administration of rabies immunoglobulin が勧められている。
狂犬病ワクチン接種後の副反応に関する WHO data によると、およそ接種された人の 35-45 percent が、軽度で一過性の紅斑、接種部位の痛みと腫脹を、特に皮内への追加接種に伴なって訴えている。 軽症の全身症状として、15%の接種者に一過性の発熱、頭痛、めまい、 消化器症状が認められている。より重篤な --主にアレルギーや神経学的な-- 副反応が起こることはまれとされている。新しく開けられた同じバイアルからのワクチンを接種された2人に起きた重篤な副反応に関する記述から、接種前にワクチンのバイアルに添加されていた何かによって急性発症の胸痛と呼吸困難が生じたことが示唆される。狂犬病ワクチンは凍結乾燥されていることから、ワクチン調整時の汚染や溶液の間違いにも注意しなければならない。同日、同じクリニックでほかにもワクチンを接種された患者がいて、おそらくワクチンの調整には同じものが使われたと考えられる点にも注目すべきである。まれな重症アレルギー反応が2人続けて発生する可能性が無いわけではないが、その頻度は非常に低い (the incidence of post-vaccine allergic reactions についてのデータを持ち合わせていないが; 大抵の文書に "very rare"とだけ書かれている)]

● ダニ媒介性回帰熱 ロシア

PRO/AH/EDR> Tick-borne relpasing fever - Russia: (SV) Borrelia miyamotoi 20110920.2858
 情報源 Insciences、2011年9月20日
原著 Humans infected with relapsing fever spirochete Borrelia miyamotoi, Russia. Emerg Infect Dis. 2011 Oct; (Epub ahead of print) DOI:
エール大学 Yale School of Public Health とロシアの研究者らが[比較的新しく報告された]ダニ媒介性細菌が、米国などで病気を発生させていることを発見したと the journal Emerging Infectious Diseases で発表した。
_Borrelia miyamotoi_ と呼ばれるスピロヘータで、ライム病 Lyme disease の起因菌である _Borrelia burgdorferi とは遠い関係にある。これまで日本のダニでしか確認 [1995年] されたことがなかったこのスピロヘータは、2001年にコネチカット Connecticut のダニ deer ticks でも確認されたが、ヒトに対する病原性があることは知られていなかった。この菌はその後、欧米全域のライム病を媒介するすべての種類のダニで確認されている。
研究者らは、この新たなスピロヘータによるロシアのダニ媒介性疾患の患者と、米国内のライム病患者との比較を行った。
(ロシアの) 疾患は、治療されない場合は繰り返される高熱を特徴とし,ライム病と混同される可能性があった。現在一般的検査は市販されていないが、米当局 the National Institutes of Health (NIH) から資金を受け、診断検査法が開発されることになった。
the Northeast and Upper Midwest parts of the USA のダニの約2%で _B. miyamotoi_ が確認され、ダニからマウスへの感染実験が行われている。deer ticks により毎年2万5千人以上がライム病に感染していることから、米国内でほかにも _B. miyamotoi_ infection による疾患が発生していないかについて、研究チームは調査を急ぐことにしている。
[Mod.LL- オリジナルの投稿には何度も "new" が出て来るが、16年前に報告された new ではない病原体であり、結果として起きる病気 relapsing fever も然りである。さらに the relapsing fever group of borreliae の一員であるこの病原体が、マダニ ixodid ticks で確認されたのも初めてではない。米国西部で発生する回帰熱 Classical tickborne relapsing fever は、soft tick of the _Ornithodoros_ genus により感染が伝播される。ここで注目すべき relevant は、米国内で発生する tick-borne relapsing fever にきわめて症状が類似するが、末梢血のライト染色 the Wright stained では検出することができないという、ヒトでの臨床症状が記載されている点にある。
(報告されたスピロヘータが)米国内のマダニで確認されたことから,non-endemic area で発生した回帰熱の症状のある患者では,この病原体が原因でライムボレリア症 Lyme borreliosis の所見に一致しない場合もあることを、医療従事者は知っておくべきである。私の経験ではライム病ではしばしば回帰熱で見られるような発熱が認められないことがある]

● コレラ(2件)
PRO/EDR> Cholera, diarrhea & dysentery update 2011 (30): Africa 20110921.2867
[1] コレラ-西アフリカと中央アフリカ
 情報源 UN Office for the Coordination of Humanitarian Affairs (OCHA)、2011年9月7日
2011年初以来、7 West and Central African countries で、コレラ感染流行により、1400人以上の死者が発生したことが、6日のthe UN office for the Coordination of Humanitarian Affairs  の報告で明らかにされた。
カメルーン: 9 of the country's 10 provinces have reported outbreaks of cholera, with a total of 10 582 cases and 379 deaths as of mid-August 2011.
チャド: There is a rapid spread of the disease from the west to the east of the country with a total of 11 345 cases and 340 deaths as of the end of August 2011.
コンゴ DR: A cholera epidemic that started in the east of the country has spread along the Congo River to the west, with 5171 cases and 301 deaths as of 22 Aug 2011.
マリ: Health authorities said there have been cholera outbreaks in 3 regions of the country, leaving 880 people infected and 36 dead as of 23 Aug 2011.
ニジェール: There have been outbreaks in about 10 districts in the south and southeast districts of the country, leading to 1008 people being infected and 26 deaths as of mid-August 2011.
ナイジェリア: Reports say there have been cholera epidemics in 23 of the country's 36 states, with 13 551 cases and 353 deaths as of mid-August 2011.
コンゴ共和国: There have been cholera outbreaks in 4 provinces in the country, Brazzaville, Cuvette, Likouala and Plateaux, with 341 people said to have been infected and 20 deaths.
[2] ブルンジ
 情報源 UN Integrated Regional Information Networks (IRIN) 、2011年9月14日
8月以降、コレラ感染流行により12人が死亡し600人が感染した。各地で収まりつつあるものの、首都 Bujumbura の当局者は Nyanza Lac, Makamba province で新たな流行が発生し80人が感染したと述べた。住民がたびたび Lake Tanganyika の安全でない水を使用し、コレラ感染の発生が多い Bururi province 南部の Rumonge で8月5日に感染流行が報告された。その後首都 Bujumbura と Bujumbura Rural, Bubanza, Cibitoke and Makamba の各地に急速に拡大した
[3] チャド
 情報源 The Spec、2011年9月7日
赤十字社によると、チャド国内でコレラ感染が流行し2011年に12713人の患者と364人の死者が発生している。33 of Chad's 62 districts に拡大し、秋の雨期には数週間で感染者数が倍増する可能性もある
[4] ソマリア(Mogadishu)
 情報源 Press TV、2011年9月15日
ソマリアの首都 Mogadishu で新たに58人がコレラ感染により死亡した ... WHO によると感染力の強い下痢症患者全体のおよそ75%が5才未満の小児である。コレラの発生が確認されているのは Banadir, Bay, Mudug and Lower Shabelle regions of Somalia である
[5] ガーナ
 情報源 Ghana News Agency、2011年9月6日
Kenyanko (the Tarkwa Nsueam Assembly) で最近発生したコレラ感染流行により、29歳から50歳までの4人が死亡した。8月29日に初めての患者が発生した ... Nkwanta, Agona, Pataho and Keyankor.などの地域にも感染が広がっている。
[6] ナイジェリア Nigeria
 - (Osun):Nigerian Tribune、2011年9月14日
Ede Community in Osun State の発生状況
 - (Oyo):Nigerian Tribune、2011年9月15日
Oyo State で、6-9月に 947 suspected cases of cholera
 - (Nasarawa):The Nation 、2011年8月29日
Nasarawa State の Lafia Local Government と Karu Local Government, near the Federal Capital Territory (FCT)で計11人の死者発生。
 - (Bauchi, Yobe, Sokoto):Agence France-Presse (AFP) 、2011年9月6日
北部 Bauchi state で新たにコレラ感染流行が発生し、18人が死亡した。

PRO/EDR> Cholera, diarrhea & dysentery update 2011 (29): HAITI, DR 20110920.2856
[1] ハイチ
 情報源 Voice of America、2011年9月12日
多くの地域で安全な水と良好な衛生状態が得られない中、ハイチでは今もコレラ Cholera 感染流行が発生し、2010年に確認されてから今までの患者が43万9600人に達した。当局の対応により死亡率が抑えられており、 the rolling 14-day case fatality rate は1%未満を保っている。
[2] 南東部では致死率 5.3%
 情報源 New York Times Editorial、2011年9月7日
2010年10月以降、ハイチのコレラ感染流行により6000人以上が死亡し、制圧には程遠い状態である。ポルトプランス Port-au-Prince の北部郊外で発生して以来、42万人以上が感染した。国連の平和維持部隊からの排水が the Artibonite River を汚染したことが原因と見られている。コレラは予防可能で治療も容易であるが、ハイチのように、慢性の物資の不足や欠如、安全な飲料水と良好な衛生環境の無い国の、特に初めて感染が発生し、最も大きな被害を受けている農村部では、制圧はきわめて困難である。ハイチの中でも感染に弱い南東部では、7月までの致死率が 5.3%に達している。適切な治療が受けられれば、1%未満に抑えることができる ... 政情が不安定であることなど。
[3] ドミニカ共和国
 情報源 Florida Center for Investigative Reporting、2011年9月5日
2011年、6月18日時点のドミニカ共和国内のコレラ感染が確定した患者は1681人で、58人が死亡した。ドミニカ共和国の1歳未満の乳児死亡の半数が、下痢症を原因としている ... Independencia などの場所の事態はさらに深刻で、ある 2週間に小児の 21%超が下痢を経験した。他の地域では14.7%であることが、2007年の人口統計 the 2007 Demographics and Health Report by the Dominican Center for Social and Demographical Studies で示されている。この地域の、2007年の5才未満の小児死亡率は1000人対44人で、全国平均は36% (33人?) となっている。

● リステリア症 米国
PRO/AH/EDR> Listeriosis, fatal - USA (04): cantaloupe, alert 20110921.2866
[1] CDC update、2011年9月19日
CDC は関係各局と協力し、複数の州でのリステリア症 Listeriosis 流行の対応に当たっている。細菌 _Listeria monocytogenes_ 汚染のある食品摂取を原因とする重症感染症である。outbreak 関連の _Listeria monocytogenes_ に感染しているのは、10州の合計35人: California (1), Colorado (12), Illinois (1), Indiana (1), Montana (1), Nebraska (4), New Mexico (5), Oklahoma (6), Texas (3), and West Virginia (1) で、いずれも 8月4日以降に発症している ... 米国内では、毎年約800人がリステリア感染症と診断され、3ないし4件の食中毒によるリステリア症 outbreaks が報告されている。食中毒の原因となることの多い食品は deli meats, hot dogs, and Mexican-style soft cheeses made with unpasteurized milk である。農産物 Produce が感染源となることは少ないが、2009年の流行の原因はスプラウトであり、2010年はセロリが原因だった
調査結果
cantaloupe が原因と見られている。食事内容が判明した患者27人中、26人 (96%) がcantaloupesを摂取したと述べている
回収
Jensen Farms は Rocky Ford Cantaloupes の自主回収を発表したことを FDA が明らかにした。
[2] "Smoking melon"
 情報源 Colorado Dept of Public Health and Environment 、2011年9月16日
the Listeria outbreak の患者と cantaloupe labeled as "Rocky Fords" from Jensen Farms in Holly. の、直接の関連性が検査で確認された

● ポリオ ケニア、中国、パキスタン
PRO/EDR> Poliomyelitis - worldwide (13): Kenya, China, Pakistan
Archive Number: 20110920.2860
[1] ケニア Kenya - Western Province
Thousands of children to be immunized amid polio outbreak
 情報源 AlertNet / IRIN、2011年9月19日
ケニア西部において最近、3例野生株 1型ポリオウイルス the Wild Polio Virus Type 1 の感染患者が発生したことから、保健当局は十分注意するよう呼びかけている。このウイルスは非常に感染拡大が早いため、1例でも発生すれば an outbreak と見なされる、と当局者が述べた。the Kamagambo area of Rongo District, Western Province [複数のマップを見たが Kamagambo and Rongo District があるのは Nyanza Province - Mod.MPP] の3例で確認されたウイルスはいずれも、2010年にウガンダ Uganda's Bugiri District で確認されたウイルスと同じだった、と説明されている。このウイルスに感染した場合、最も多く見られるのは麻痺で、平均すると感染者200人に1人の割合で不可逆性の麻痺を通常は下肢に生じる。ケニアでは根絶に向けた努力が行われているものの、2006年と2009年に the northern Garissa and Turkana districts から sporadic outbreaks が報告されている。今回の流行は、隣国のソマリアと南スーダンで発生中のポリオ感染流行に関係したものであると政府当局は述べている。2009-2010年にそれまでポリオが根絶されていた23カ国で輸入されたウイルスによる再燃 re-infected が起きている。一斉ワクチン接種キャンペーン massive immunization campaign は Rongo と隣接する Homabay, Kisii, Kisumu, Nyamira, Migori and Transmara districts で実施される予定である
[Mod.MPP- 上記報告で2010年の Bugiri Uganda (20101027.3900) と同じ the WPV1 が Western Kenya で確認された点が注目される。2010年に確認されたウイルスは、 Turkana in NorthWest Kenya (20090914.202049) の患者と遺伝子型が同じ the WPV1 であり、2009 in Turkana Kenya の the WPV1 は Southern Sudan を感染循環する WPV1 と遺伝子型が同じだった。スーダンはかつて、2002年と2003年にポリオ清浄国とされていたが、2004年にナイジェリアから再びウイルスが持ち込まれ2004-2005年に広範囲での感染伝播が起き、2006年は0であったが、2007年に1例、2008年以降は感染が継続して発生している (20090226.0808)。 従って、ケニア、ウガンダ、スーダンで現在起きている出来事は、周囲の他の地域では WNV の感染が続いている中で、WPV の感染を断ち切った後に直面する不安定な状況を反映したもので、高い予防接種カバー率を維持して再導入 reintroduction of WPV transmission を防止することが重要であるのは明白だが、多くの国々にとって試練を伴うのである]
地図 Kenya showing provinces  
[2] 中国 新疆自治区、患者7人
WHO: Polio strain spreads to China from Pakistan
 情報源 USA Today、2011年9月20日
The World Health Organization は、パキスタンから中国に危険な型 'dangerous' strain のポリオが導入されたことに対し、各国への注意を呼びかけている。中国で確認された野生株1型ポリオウイルス wild poliovirus type 1と、パキスタンで感染循環するウイルスの間に、遺伝子上の関連性が確認されたことが明らかにされた。パキスタンとの国境にある新疆自治区 Xinjiang で2か月間でこれまでに7人の感染が確定診断されている。WHO の報道官は、 type 1 は type 3 に比べ麻痺を生じやすく感染力が強い点で、より危険なウイルスであると説明した。Type 2 polio は根絶されている。 [The last wild poliovirus type 2 isolated は、1999年10月のインド Aligarh, Western Uttar Pradesh とされている: Apparent Global Interruption of Wild Poliovirus Type 2 Transmission. MMWR. 30 Mar 2001. 50(12);222-4]
[Mod.MPP- 20110902.2683 の4人から7人に増え、発生地域での感染拡大が示唆される。世界で今もポリオ感染が継続する4か国のうちの1つである、パキスタンの循環ウイルスと遺伝型が同じウイルス WPV による流行である点に注目しなければならない]
[3] 中国 9例
WHO reports polio outbreak in China, warns of spread
 情報源 Reuters、2011年9月20日
1999年以来となる中国でのポリオ感染流行発生はパキスタンからの輸入によるもので、ハッジ the annual Haj pilgrimage 期間中に危険なウイルスの感染がさらに拡大する危険性が高いことが20日 WHO から示された。中国国内で合計9例の患者が確定診断され、パキスタンでは、政情不安による the Khyber tribal region を含む地域でのワクチン接種の中断により全国的にポリオ感染が拡大していると見られると WHO 報道官が述べた。Umra and the upcoming Haj による大規模な人口の移動により、パキスタンから国境を越えた野生株ポリオウイルスの導入は、今後数ヶ月間にわたってさらに拡大すると見られると述べた。
[4] 中国,パキスタンから - WHO confirmation
Confirmed international spread of wild poliovirus from Pakistan
 情報源 WHO Global Alert and Response、2011年9月20日。
現在パキスタンで感染循環するウイルスの遺伝型に関連のある、野生株1型ポリオウイルス Wild poliovirus type 1 (WPV1) が中国国内で分離されている。パキスタンは全国で WPV1 の循環が確認され、2011年のアジアで唯一3型 wild poliovirus type 3 (WPV3、アジア大陸からほとんど根絶されかけている株) 患者が確認された国である。13日現在、パキスタンで報告されている患者数は84人で、2010年同期は48例だった。2011年、パキスタンでの追加予防接種活動 supplementary immunization activities (SIAs) が、重要なハイリスク地域で十分に行えていない。the Federally Administered Tribal Areas (FATA) の特に Khyber agency の治安に問題のある一部地域の 20万人の小児が、過去2年間の SIAs から常に漏れていた。Khyber Pakhtunkhwa and FATA 以外にも、Khyber のアクセス可能な地域や  the provinces of Balochistan and Sindh を中心とする重要な感染伝播地域でも the quality of SIAs 維持に多大な困難を伴なっている。またサーベイランスの問題で検出されていない感染循環があることも否定できない。国を超えて感染が広がったとされる WPV1の広範囲の拡大と、2011年のアジアで唯一 の WPV3 確認などの要因をふまえ,the World Health Organization (WHO) はパキスタンから海外への WPV 感染拡大のリスクを 'high' にランクした。今後数ヶ月間にわたって行われる Umrah and the upcoming Hajj (pilgrimage to Mecca, Kingdom of Saudi Arabia) に伴った大規模な人口移動が見込まれるため、なおさら (注意が必要)である。パキスタン政府当局は、野生株ポリオウイルスの感染拡大への早急な対処のため大統領の支援を得て緊急対策を実施した。しかし現段階でその効果は見えていない ... ワクチン接種計画など ... アジアから地中海東部にかけての国々が、急性弛緩性麻痺 acute flaccid paralysis (AFP) へのサーベイランスを強化し、輸入されるポリオウイルスを早い段階ですべて検出し、輸入に対し迅速に対応を可能とすることが重要である。国内で、全タイプに対する追加ワクチン接種を継続して行い、ウイルス再導入の際の影響を抑えることも、同じく重要である。WHO's International travel and health の勧告にあるとおり、パキスタンへ入国または出国する旅行者は全て、ワクチン接種完了による予防が必要である。OPV を過去に3回以上接種されているパキスタンへの旅行者は、出発までに1回の追加接種を受けるべきである。接種が済んでいない旅行者は、必ず全てのワクチン接種を完了してから出発する必要がある。パキスタンから出国する旅行者は、出発までに全てのワクチン接種を完了していなければならない。ポリオ清浄国では、パキスタンからの旅行者の入国ビザの発給に当たり、ポリオワクチンの接種を要求することも可能である。Hajj and Umrah season がすでに始まり、サウジアラビア王国は、 Umrah and Hajj のための旅行者(全年齢)に対する、ワクチン接種要求を発出した。WHO's International travel and health に沿った要求に加え、ポリオ常在国からの全年齢の旅行者に対し、サウジアラビアへの旅行の6週間前の、OPV ワクチン接種証明の提示と、到着時の1回の追加接種を求めている。
[5] パキスタン Baluchistan
Polio cases at all-time high in Balochistan
 情報源 Daily Times、2011年9月20日
Pishin and Loralai districts で新たに2例のポリオ患者が確認され、 Balochistan で2011年のこれまでに確認されたポリオ患者は37人となった。ポリオの感染が分かったのは、Ghasiabad in Tehsil Dukki of Loralai district の生後12ヶ月の男児と、Union Council Karbala in Pishin の男児の2名である。Pishin district で確認された患者はこれで9人となり、患者の多く(13人) がKila Abdullah district の患者である、と当局者が述べた ... ほか、5 in Quetta, 3 in Khuzdar, 3 in Naushki, one in Kolhu Kalat, Loralai and Dera Bugti each など。

● 日本脳炎など インド
PRO/AH/EDR> Japanese encephalitis & other - India (19): (UP), RFI 20110920.2857
 情報源 The Times of India、2011年9月19日
Lucknow の北東約125kmにあるこの地区で、10日間で脳炎により少なくとも61人が死亡し、662人が入院となり、流行が発生した可能性がある。当局者は、脳炎の原因が、よどんだ水に発生する蚊族(によるウイルス感染)だと述べた ... インドではモンスーン後を中心に、新生児を含めたすべての年齢層の主な死亡原因は単純ヘルペスウイルス the herpes simplex virus による病気である、と述べた。2010年、脳炎による多数の死者が発生したのは、Bihar and UP [Uttar Pradesh) だった
地図 the Bahralch district in Uttar Pradesh state

● ペスト 米国,敗血症性
PRO/AH/EDR> Plague - USA (04): (OR), septicemic 20110920.2855
 情報源 The News Tribune、2011年9月19日
Umatilla County, Oregon で16日、地元の男性1名が敗血症性ペスト septicemic plague で入院となったことが、保健当局により確認された。Lake County, Oregon でのハンティングの際に感染したと見られている。現在男性は治療中である。
"ペストは感染性のノミの刺咬によりヒトに感染する重篤な疾患であるが、早期であれば抗生物質により治療可能である"と Umatilla County public health administrator がのべた。
オレゴン Oregon 州でペスト感染と診断された患者は1995年以降3人しかいない。2人は 2010年に Lake County で感染し3人全員が治癒している ... ペットのノミ治療を行い、ノミ忌避剤を使用し、げっ歯類の多い地域ではソックスの中にパンツのすそを入れ、野生動物に近づかないなどの注意が必要である。
[Mod.LL- 米国内のペスト菌 _Yersinia pestis_ 感染は、ほとんどが the states of Colorado, Utah, Arizona and New Mexico の州境が集まる the Four Corners area of the USA で発生している。
the CDC (Centers for Disease Control and Prevention) は: 
"腺ペスト bubonic plague による死亡が発生するのは、感染性横痃 the infected bubo 内のペスト菌 _Yersinia pestis_ が血流に入り (septicemic plague 敗血症性ペスト)、敗血症症候群の症状を発症した場合である。 播種性血管内凝固 Disseminated intravascular coagulation (DIC) によって起きた皮下出血が、中世に黒死病 the 'Black Death' と呼ばれた由縁である。ペスト菌が肺に侵入して、二次性ペスト肺炎 (菌血症に続発する) が発生したり、髄膜に及んだ場合は髄膜炎となることもある。いずれのケースも高い致死率となり、肺炎 the secondary plague pneumonia はエアロゾルによるヒト-ヒト感染の経路となる。 
"ヒトのペスト感染で最も典型的な症状は、自発痛を伴い激しい圧痛のあるリンパ腫脹で、 "bubo(横痃) " と呼ばれる。リンパ節腫脹、発熱、悪寒、頭痛、激しい体力低下があり、感染したげっ歯類、ウサギ、ノミと接触した可能性のある患者では、腺ペスト Bubonic plague が疑われる。感染から bubonic plague の症状を発症するまで通常2-6日間である。 
"腺ペストが治療されないまま放置されると、ペスト菌が血流に侵入して血管内で増殖し、速やかに全身に波及し、重症化や死に至ることがある。ペスト菌が肺に感染すると、重症呼吸器疾患の肺ペスト the pneumonic form of plague となる。感染した患者は、高熱、悪寒、咳、呼吸困難、血痰などの症状が認められる。適切な抗生物質による治療が行われない場合、急速に進行して死に至る。米国内の全ペスト患者の約 14 per cent (1 in 7) が死亡している" と書かれている]

● 流行性出血病、シカ科 米国
PRO/AH/EDR> Epizootic hemorrhagic disease, cervids - USA (07): (MI) 20110921.2870
 情報源 Michigan Department of Natural Resources、2011年9月20日
環境当局 The Department of Natural Resources は20日、Cass County の2頭の white-tailed deer が、伝染性出血性疾患 epizootic hemorrhagic disease (EHD) と診断されたことを明らかにした。捕獲された、1.5歳と3.5歳の2頭のメスが、検査の結果陽性となった

● 鳥インフルエンザ インド
PRO/AH/EDR> Avian influenza (59): India (WB), susp. RFI 20110921.2868
 情報源 NDTV、2011年9月20日
インド東部の西ベンガル West Bengal 州当局は、H5 亜型鳥インフルエンザ Avian influenza 感染流行発生への対応として、ニワトリの処分と卵の廃棄を開始すると20日発表した。アジア各地で変異ウイルスの感染が拡大している ... 2011年8月、 the UN Food and Agriculture Organisation (FAO) は、鳥インフルエンザの感染が増え変異H5N1ウイルスがアジアで勢力を拡大していることを発表した。今回のインドの感染流行がこのアジアの新たなウイルスによるものであるかはまだ明らかになっていない。ウイルス学者らは中国とベトナムで最近確認されたH5N1 ウイルスに対するワクチンはなく、ヒトへの潜在的なリスクを持つとして家禽と野鳥からの感染拡大防止のための監視強化を呼びかけていた。インドで鳥インフルエンザが初めて確認されたのは2006年で、その後多数のニワトリとダックが処分されたが、何度となく発生が繰り返されてきた。
[Mod.AS- H5N1 mutant clade 2.3.2.1. (20110829.2654) 等の新たなウイルス株によるのかに興味がもたれる。 OIE's information (20110901.2678) では、中国・ハルビン Harbin の the OIE Reference Laboratory が、実験上新たなクレードのウイルスに対する防御効果を持つ a new vaccine seed strain を開発したとされている。H5N1 virus clade 2.3.2.1 が確認されている国々での使用が開始されるだろう。the new seed strain は登録と製造段階にある]

● トウモロコシの病気,Goss's wilt 米国
PRO/PL> Goss's wilt, maize - USA: new strain susp. 20110921.2865
 情報源 Minnesota Public Radio News、2011年9月19日
University of Minnesota (MSU) の研究者らは、細菌感染症である Goss's leaf blight and wilt.の発生は確認できたものの、感染した葉の検体が必要なため、農家からの協力を呼びかけている
[Mod.DHA- Goss's wilt and blight of maize は細菌の _Clavibacter michiganensis_ subsp. _nebraskensis_. を原因として発生する]

● 口蹄疫 パラグアイ
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease, bovine - Paraguay 20110921.2864
 情報源 Washington Post、2011年9月19日
口蹄疫 Foot & mouth disease 感染流行発生に対し、パラグアイは全ての牛肉の輸出を禁止した。Fernando Lugo の自治当局は、パラグアイ第2の輸出農産物である牛肉はきわめて重要な農産物である

● インフルエンザ、イヌ 米国
PRO/AH/EDR> Influenza, canine - USA: (TX) 20110921.2863
 情報源 My San Antonio.com 、2011年9月17日
地元のある獣医師によると、過去30日間に20頭の San Antonio dogs がイヌインフルエンザ canine influenza と確定され70頭も感染が疑われている。dog flu と呼ばれるこの病気は Austin and Dallas からも報告されている。the H3N8 virus に曝露しているのはテキサス Texas 州など38の州に及んでいる ...
[Mod.TG- Canine influenza は a type A orthomyxovirus で "kennel cough" or _Bordetella brochiseptica_/parainfluenza virus complex, などと似た症状を呈し、止めることができないように見える空咳 hacking cough のようである]

● パラミクソウイルス、ハト オーストラリア
PRO/AH/EDR> Paramyxovirus, pigeons - Australia (02): (VI) 20110921.2862
 情報源 Whittlesea Leader、2011年9月20日
メルボルン Melbourne 北部一帯でまれな鳥のウイルスの avian paramyxovirus の感染が拡大し、ハト domestic and racing pigeon flocks の死亡が発生していることから、Four Whittlesea properties が検疫体制に置かれている。当局 The Department of Primary Industries が Lalor と Thomastown で同ウイルスを確認した
参考項目 20110908.2735

● 馬ヘルペスウイルス 北米
PRO/AH/EDR> Equine herpesvirus, equine - North America (14): (TN) 20110921.2861
 情報源 The Horse.com Article 18847、2011年9月19日
The University of Tennessee (UT) Veterinary Medical Center は、発病後に受診した1頭のウマが安楽死させられたことを受け、州獣医官より検疫 a 7-day quarantine を指示された。検査の結果、神経型 equine herpesvirus-1 (EHV-1) 感染であることが判明した

● 伝染病、家畜 アラブ首長国連合 対策
PRO/AH/EDR> Epizootic diseases, livestock - UAE: Control 20110920.2859
 情報源 The Gulf Today、2011年9月18日
ADFCA launches campaigns to protect animal health
アブダビ食品管理局 The Abu Dhabi Food Control Authority (ADFCA) は17日、4種類の感染症: 口蹄疫、伝染性ヤギ胸膜肺炎、小反芻獣疫、およびヤギ ・ ヒツジ痘の感染拡大防止のための、2つのキャンペーンを開始することを発表した。キャンペーンの目的は、伝染病の根絶と、伝播する外寄生虫の駆除で、家畜の免疫を高め、家畜頭数の増加と生産性の向上につなげる狙いがある