2011年11月29日

M 痘(サル痘)-中央アフリカ共和国 Lancet
狂犬病-エクアドル

● M 痘(サル痘)-中央アフリカ共和国
PRO/AH/EDR> Monkeypox, human, rodent - Central African Republic
Archive Number: 20111129.3488
Maculopapular lesions in the Central African Republic (原著タイトル)
 情報源 The Lancet, Volume 378, Issue 9799, Page 1354、2011年10月8日。
[registration required 皮膚病変のイラストが美しい]
2010年6月、14歳15歳の少年2人に膿疱と痂皮を伴う、びまん性丘疹病変 maculopapular lesions が認められた。2人は中央アフリカ共和国 Central African Republic (CAR) 南部の深い森林地域にすんでいた。これらの症例が the Institut Pasteur at Bangui に報告された。少年らが野生のげっ歯類 (bemba) の狩猟と摂食を行った後、病変が出現した。皮膚病変が拡大し、顔面、体幹、四肢に及んだため、1週間後に医療機関を受診した。いずれの患者も全身状態はよく、発熱やはっきりしたリンパ節腫脹は認められなかった。血清及び皮膚病変と、皮膚病変から採取した内容液の接種後5日目の幼弱マウス脳の生検検体についての検査学的検索が行われた。partial haemagglutinin gene を用いた quantitative PCR により、M 痘(サル痘)ウイルス Monkeypox virus が検出され、 sequencing によって確かめられた。系統発生学的にアフリカ中央部で感染循環するコンゴ共和国 the Democratic Republic of the Congo (DRC, 旧 Zaire) 株と同じであることが判明した。また2001年に今回の患者が発生した地点から480km離れた the CAR and the DRC 国境に住む Bantu family 一家に発生したアウトブレイク an outbreak of monkeypox に関係することが判明した。今回の患者らは隔離病棟に収容され、現在感染性はない。2010年6月の退院時に体調に問題はなく、後遺症も見られなかった。サル痘の宿主は幅広く、野生動物の宿主間で感染が維持され、主にアフリカ中央部および西アフリカの熱帯雨林地帯の辺境地在住のヒトにも感染する。ヒトの間で大規模な感染流行が発生したのは the DRC 国内のみである。アフリカにおける致死率は1%から10%の間である。特異的な治療法やワクチンはないが、痘瘡ワクチンにより85%のサル痘の感染が予防できる。2003年、西半球で初めてのヒトの間でのサル痘感染流行 the 1st human monkeypox outbreak が報告されている。ガーナから輸入されたげっ歯類による米国内での発生例であった。今回われわれは、同じウイルス株 the same viral genotype による感染発生から10年ぶりに起きた、2例の典型的なサル痘感染について報告した。サル痘はまれであるが、類似疾患との相違については注意が必要と考えられる。
[Mod.CP- monkeypox virus が初めて確認されたのは、1958年のコペンハーゲン Copenhagen の捕獲されたサル captive monkeys であったが、主な自然界の宿主はアフリカ中央部および西アフリカのげっ歯類やリスである。しかし、ヒトに感染することがあり、天然痘ウイルス smallpox virus の病変に似る。smallpox virus と違い、ヒト-ヒト感染は起こりにくい。ウイルス遺伝子の核酸塩基配列分析 Sequencing of the monkeypox genome により、天然痘ウイルス variola virus (smallpox virus) との関係は、あまり近くないことが確かめられている]

● C 型肝炎-中国,未滅菌の注射針
PRO/EDR> Hepatitis C - China: (AH), unsterilised needles 20111129.3484
Dirty needle suspected in outbreak of hepatitis
 情報源 Shanghai Daily、2011年11月29日。
中央部河南省 Henan Province のある医院で、滅菌処理が行われていない注射針の使用によると見られる、小児56人の C 型肝炎 Hepatitis C 集団感染が発生した。感染のあった、隣接する安徽省 Anhui Province・Dacheng Town からの小児らは、すべて Miaoqian Village clinic において注射を受けていた。保護者らは、1本の針を消毒することなく、数十人の小児らに対して使用していたことについて医師に抗議している。Guoyang County, Anhui の数か所の村の住民らは、省の境界にあるこのクリニックを利用している。初めて C 型肝炎と診断されたのは定期健診を受けた5歳児で、州都・合肥 Hefei の病院で毎日点滴の治療を受けている。感染のあった小児らは、合肥、北京、上海、南京の病院で治療中である。

● 狂犬病-エクアドル
PRO/AH/EDR> Rabies - Ecuador (04) (MS): vampire bat, human 20111129.3483
 情報源 El Comercio [in Spanish]、2011年11月28日。
27日、モロナサンチアゴ Morona-Santiago で新たに1人が狂犬病 Rabies で死亡し、今月の死者は6人となった。保健当局は検査で確認された4人のみを患者として登録している。The Achuar [indigenous] Nationality of Ecuador (NAE) organization は、the Achuar de Tarimiat and Suarik Nuevo communities (the Taisha canton) において吸血コウモリの咬傷による狂犬病で死亡した、小児6人を確認している。このほか、身体を揺する、痙攣、発熱、頭痛、よだれなどの狂犬病の症状を示す8人の小児があり、うち3人は the General de Macas Hospital に入院中であるが、危篤状態にある。住民へのワクチン接種が検討されたが、狂犬病ワクチン不足により行えていない (4900 doses が配給されたが、全員に7回ずつ接種しなければならないので)... the Acap, Arutam, Capavi, and Macusar communities でのワクチン一斉接種が指示された
[Mod.TY- 9月に同じ地域で、狂犬病の吸血コウモリによるウシの感染例が発生している (20110925.2907)。今回は Achuar の小児が感染した。Achuar は先住民族で、エクアドルとペルー間の国境の両国側の複数のコミュニティに住むアマゾン先住民の1つである。ペルー側の様子に触れられていないが、 the Peruvian Amazon では2011年に吸血コウモリによる複数のヒトの狂犬病感染例が発生している。感染流行に関係するのはおそらく、この地域で最も多い吸血コウモリの _Desmodus rotundus_ だと考えられる。この高温多湿の地域の先住民らは、ドアのない家 open shelters で暮らしているため、就寝中にコウモリに襲われやすい。通常コウモリは、ウシやウマを好んで吸血する傾向にある。2011年、エクアドルの3つの地域でウシの狂犬病感染が問題となっている。2011年のエクアドルからのヒトの狂犬病感染流行の報告は、今回が初めてであった。7回のワクチン接種が必要とされる理由は明らかではない。WHO は曝露前なら3回、曝露後は咬傷部位へのグロブリン接種を併用して4回の接種を行うよう勧めている。使用されているワクチンの種類についても記載がない]

● チクングニア熱 -インド
PRO/EDR> Chikungunya (31): India (GA) 20111129.3482
 情報源 The Times of India, Times News Network (TNN)、2011年11月26日。
12日から24日までの期間のベクターによる疾患の報告によると、68人のチクングニア熱 Chikungunya 検査[ウイルス?抗体?] が陽性となり、このうち確定診断されたのは UHC [Urban Health Center] Panaji の1人のみだった。1月からの総検体数は611件で、45件が陽性だった。
[Mod.TY- Goa のチクングニアウイルス感染患者数は、8月14日の39人(20110814.2466)から、3ヵ月後の今回は45人に増えている。Goa では2011年の第1週から患者が報告されていた。2011年はインド各地から散発例が報告されている。the capital of Goa state ではデング熱との混合感染流行が発生していると見られる。いずれのウイルスも the same _Aedes aegypti_ vector mosquito により伝播される]

● 食中毒-米国
PRO/EDR> Foodborne illness - USA: (ND) prison inmates 20111129.3481
 情報源 Inforum、2011年11月28日。
the Cass County Jail に収容されている 184人のおよそ 90%が、 [27-28 Nov 2011に] 体調を崩し、食中毒が疑われている。下痢、嘔吐、腹痛などのインフルエンザ様症状であると、28日に明らかにされた。治療のために入院となった患者はいなかったが、より重い症状の患者に対して、補液やGatorade [sports drink made of water, carbohydrates, and electrolytes] の摂取による治療が行われた。職員の中で発病したものはいない ... 27日の夕食として収容者らに出されたものは、シチメンチョウのひき肉 ground turkey, チリchili, and マカロニ macaroni の煮込み; コーン; コーンブレッド; ホイップバター; クッキー; 粉末飲料だった。

● リフトバレー熱-フランス 、ジンバブエから 否定
PRO/AH/EDR> Rift Valley fever, human - France (02): ex Zimbabwe (ME) NOT 20111129.3486
Rift Valley Fever, France ex Zimbabwe
: not confirmed
 投稿者 仏 ・ Institut Pasteur、Dr Marc Grandadam、2011年11月29日。
10月20日、ProMED-mail (20111020.3132) でジンバブエからフランスへのリフトバレー熱 Rift Valley fever (RVF) の輸入感染の1例について報告された。確定診断のため the National Reference Laboratory for Arboviruses に検体が提出され、発症から25日目の第1血清検体について、抗アルボウイルス(デング熱、チクングニヤ熱、ウエストナイル熱、リフトバレー熱ウイルス)抗体の再確認を行ったところ、RVF virus に対してボーダーラインのIgM 抗体反応 IgM reactivity が認められたのみであった。67日目に採取された第2血清検体では、検査された全てのウイルス抗原に対して、IgM IgG 共に陰性だった。IgM 反応の増強も、IgG の陽転も見られないことから、初期検体だけに見られた一過性の IgM response は、非特異的反応であるとの結論に至った。従って RVF 感染に関しては 'not confirmed' と結論付けた。

● BSE -日本: 37例目、非定型 → 否定
PRO/AH/EDR> BSE - Japan: 37th case, atypical, RFI 20111129.3480
 情報源 Outbreak News 、2011年11月25日。
厚労省は生後 23ヶ月のウシ 1頭が、狂牛病 mad cow disease, or bovine spongiform encephalopathy (BSE) であることが確認されたことを公表した;世界で最も若いウシで BSE 感染が確認されたことになる。日本国内では 8例目 [sic.] で、さらに注意すべき点は、 新型の the strain of BSE であったことにある。この新たな種類の BSE は、日本で現在行われているスクリーニング法では、検出されないことがある点が最も懸念されている。CDC によると、BSE (bovine spongiform encephalopathy) は、伝染性物質である異常プリオンによる、ウシの進行性神経異常疾患である。この the transmissible agent の性質については、まだよく分かっていない。現在、the agent は、プリオン蛋白と呼ばれる正常なたんぱく質が変化したもの modified form と言う説が最も受け入れられている。まだ解明されていない機序によって、正常のプリオン蛋白が病原性を有する(有害な) 型に変化し、ウシの中枢神経に障害を与える。
[Mod.AS 注-2001年9月に日本国内で初めての BSE が確認されて以来、その後 2009年1月までに35例の感染が確認されていたが、2009年1月以降、今回の陽性例の報告まで、1例も報告されていなかった。日本での強化されたサーベイランスは、生後 21ヶ月以上の「と畜」されるウシ slaughtered cattle の全頭検査、 fallen stock (検査結果判明までの保管のこと?)、BSE が疑われる場合の調査報告義務、から成り立っている。この方式で、これまでに 1000万頭以上のウシが、ほとんどが「と畜」場で実施された検査を受けた。発生のピークは2006年ごろで、感染牛は乳牛が中心で; 1996年及び 2000年に生まれた北海道産のウシだった。2001-2009年までの各年の発生数は順に 3, 2, 4, 5, 7, 10, 3, 1, 1 であった; 今回の症例が確認されるまでの最新の症例は、2009年1月に北海道で記録されている。2例を除く全例が "classical" BSE (C-BSE) に分類されている。 食肉処理場でと畜された2頭のウシが、 Western blotting (WB) and/or immunohistochemistry (IHC) の詳しい検査の結果、atypical BSE と診断された。their glycoform profiles に基づき、L-BSE に分類された。The 1st L-BSE case は a young Holstein steer (23 months old); the 2nd case は、an old Japanese meat cow (186 months old).だった。記事の中にある、 今回の症例は "the youngest animal in the world to be confirmed as having BSE" の記述は疑問である。生後24ヶ月未満の BSE cases はまれではあるが、2003年10月の、日本で初めての Japan's 1st BSE-L case は young animal であった; 英国でも 1989年と1992年に、animals under 24 months の BSE が報告されている (20031008.2526)。今回の BSE 症例は Japan's 37th である]

PRO/AH/EDR> BSE - Japan (02): 37th case, NOT 20111129.3485
 投稿者 Linda Detweiler、2011年11月29日。
20111129.3480 の記事内容は、2003年の the "real" 8th case(20031008.2526)の記事に酷似している。本当に正しい記事だろうか。古い投稿が再掲されていないだろうか?
[ご指摘のとおり古い事例でした]

● 鳥インフルエンザ-ネパール
PRO/AH/EDR> Avian influenza (74): Nepal (BK), recurrence, RFI 20111129.3487
Bird flu re-emerged after declaration of bird flu free country
 情報源 NNN-Nepalnews、2011年11月29日。
ネパール政府当局が鳥インフルエンザ Avian influenza 清浄化宣言を行ってから数ヵ月後に、(再び) 感染が確認されている。Jadibuti area of Bhaktapur 近郊で鳥インフルエンザの感染が確認されたため、500羽以上のニワトリが処分されたと当局 the District Livestock Service Office Bhaktapur が発表した。住民らから多数のニワトリやダックの死亡が続いていると報告されていた。the Central Veterinary Disease Control Laboratory が英国に送付した検体の確定結果の報告を受け、鳥インフルエンザの確認が初めて公表された。7月13日、政府はネパール国内は bird flu free country であると宣言していた。2010年、国内の家禽産業は、鳥インフルエンザ感染流行により深刻な打撃を受けた。
[Mod.AS- FAO's data では、ネパール国内で初めての HPAI H5N1鳥インフルエンザが報告されたのは2009年1月8日で、最後に発生したのは2010年10月25日だった。ヒトと野鳥の感染は報告されたことがない]

● E 型肝炎-米国,ウサギ目
PRO/AH/EDR> Hepatitis E, lagomorphs - USA 20111129.3479
 情報源 The Roanoke Times、2011年11月27日。
the Virginia-Maryland Regional College of Veterinary Medicine at Virginia Tech の研究者らが、米国内の飼育されたウサギでは初めてのE 型肝炎 Hepatitis E ウイルス感染を確認した。ウサギの E 型肝炎ウイルス感染は、2009年に中国で初めて確認されている。動物での感染が初めて確認されたのは、1997年のブタでの確認となる。その後、ラット、シカ科、野生のイノシシなどでも確認されている。ブタのE 型肝炎ウイルスは、ヒトに感染する可能性があり、ウサギで確認されたウイルスも、糞口感染によりヒトに感染する危険性がある。