2012年5月13日-14日

マラリア-東アフリカ アルテミシニン耐性
◎ 食中毒-米国 セレウス菌

● マラリア-東アフリカ アルテミシニン耐性
PRO> Malaria, artemisinin resistance - East Africa
Archive Number: 20120514.1132936
ACTs [artemisinin-based combination therapies]-resistant malaria comes to East Africa
 情報源 The East African、2012年5月12日。
最も強力な抗マラリア薬の1つであるアルテミシニン artemisinin に対する抵抗性を持つ、熱帯熱マラリア _Plasmodium falciparum_ が東アフリカで確認されている。ケニアタンザニアのほか 9カ国のアフリカ諸国を旅行した外国人から採取された血液検体の検査で発見された。この型 This particular strain (のマラリア) は、タイとミャンマーの国境で確認されていたが、他の抗マラリア薬への耐性のように、インドやアフリカに波及することが予測されていた。英 St George's, University of London の研究者らによる調査で、東アフリカもしくは他のアフリカ諸国への感染拡大、あるいは現地のマラリア原虫の耐性 (抵抗性) 獲得が示唆された .... これらの国々のマラリア感染の患者 28人中 11人で、原虫の耐性が確認された。アーテメーターの効果 artemether's effectiveness が平均して 1/2に減少していた。各原虫で同じ遺伝子の変化 genetic mutations が認められた、と研究者は述べている。この種の薬剤 The artemisinin group of drugs はマラリアの治療効果が最も高く、広く利用されている。他の薬剤との併用療法 artemisinin-based combination therapies (ACTs) を行えば、最も効果的で、かつ、耐性が生じる可能性が低くなる ..... この研究者らは次に、熱帯熱マラリアの患者と原虫について研究を行い、原虫については 4種類のアルテミシニン系薬剤: artemisinin itself, artemether, dihydroartemisinin, and artesunate への感受性が調べられた。その結果、耐性を示した 11体の原虫のカルシウムポンプ (カルシウム輸送に関わる重要器官) と呼ばれる体内システムに、同一の遺伝子変異が起きていることが分かった。2003年に自分たちが初めて、アルテミシニンが作用するための標的 (器官) であることを示したカルシウムポンプが、耐性発現の原因にもなっている可能性を疑っていたが、これまで確認することができなかったと研究者が説明した。現在も、Artemether and ACTs の有効性は十分保たれているが、マラリア原虫に変異が生じ、抵抗性を獲得することへの不安が裏付けられる結果となった。世界が耐性発生を注視する東南アジアだけでなく、アフリカでも大きな問題となるに違いない。この研究者は、他のアルテミシニン the other artemisinins の有効性は、変異による影響をほとんど受けていないとしている。これは、(その他のアルテミシニン系薬剤が、カルシウムポンプ以外の) 他の原虫内の輸送システムに作用することで、変異に伴って生じたカルシウムポンプ (の変化による) 薬剤への耐性を補っているのではないか、と考えられている ....
原著 Artemether resistance in vitro is linked to mutations in PfATP6 that also interact with mutations in PfMDR1 in travellers returning with _Plasmodium falciparum_ infections. Malaria J 2012; 11(1):131 doi:10.1186/1475-2875-11-131

◎ 食中毒-米国、セレウス菌
PRO/EDR> Foodborne illness - USA (04): (NY) Bacillus cereus susp. 20120514.1132522
 情報源 WABC-TV、2012年5月14日。
13日の母の日を祝うおよそ150人に食中毒が発生した。Putnam、 Westchester、 Rockland の各郡で、同じ時間に大勢の食中毒患者が病院を受診した。New York City から89kmの寺院 the Chuang Yen Monastery in Kent への旅行で、the Buddhist garden festival に参加したチャイナタウンの500人を含む700人は、同じバスで Woodbury Commons での買い物に向かう途中、下痢嘔吐を発症した。救急車が出動するほどの激しい症状で、フェスティバルで出されたもち米のボール sticky rice balls が原因である可能性について、当局が調べている ....
[Mod.LL潜伏期間短いことから、pre-formed enterotoxin が疑われ、その原因食品 the suspected vehicle がコメ rice であるとすれば、セレウス菌 _Bacillus cereus_ が原因菌と考えられる。
一般にセレウス菌食中毒 _Bacillus cereus_ food poisoning という用語が使われるが、この病原菌による 2種類の食中毒の型 (下痢型 diarrheal and 嘔気型 emetic) があることが知られている。
嘔気症候群 emetic syndrome は熱やpHに安定なペプチドトキシンである cereulide を原因とする。このトキシンに汚染された食品の摂取から、0.5ないし5時間以内に嘔吐を生じる。黄色ブドウ球菌 _Staphylococcus aureus_ food poisoning に症状が似ている。
下痢型 The diarrheal illness (北米や欧州に多い) は高分子量蛋白 high molecular weight protein を原因とするのに対し、嘔気嘔吐型 the emetic or vomiting typeof food poisoning  (日本国内では下痢型より多い) は、低分子量で熱に強い蛋白が原因となる。一部の集団発生では the diarrheal and the emetic types of illness が混在することもある。
下痢型 _B. cereus_ diarrheal type food poisoning の症状としては、腹痛、水様下痢、テネスムス rectal tenesmus、下痢を伴い、嘔吐はほとんど見られない、発熱のない軽度の嘔気で、6-15時間後に発生し24時間持続する。症状は比較的穏やかで、ウェルシュ菌 _Clostridium perfringens_ food poisoning の症状に近い。The diarrheal syndrome は小腸内でのセレウス菌増殖過程で産生されるエンテロトキシン enterotoxins が原因となる。概して、症状は一過性で、報告されることが少ない。発症には多数の細胞 (菌?) Large numbers of cells が必要で、食品 (多くの場合コメ) が菌の増殖を防ぐために適切な温度に保管されていなかったときに起きる。軽症であることが多いものの、肝不全による死亡例の報告 (Fulminant liver failure in association with the emetic toxin of _Bacillus cereus_. N Engl J Med 1997; 336(16): 1142-8) がある]

● チクングニア熱-インド
PRO/EDR> Chikungunya (05): India (OR) 20120514.1132124
 情報源 The Times of India、2012年5月13日。
Boxipalli village において、蚊族媒介性のチクングニア熱 Chikungunya [virus] 感染と見られる症状を呈する多数の患者が確認されており、Ganjam district で再発生した疑いがもたれている .. 2日前に、漁業の町であるこの村で発生が報告され、患者数は12人に増えている。4月には、Golabandh [in the Balangir district, Orissa state] での発生が確認されている

● 麻疹 (20)
PRO/EDR> Measles update 2012 (20) 20120513.1131857
[1] ECDC press release
Measles transmission during 2012 season lower than in 2011 and 2010
 情報源 European Centre for Disease Prevention and Control, press release 、2012年5月8日。
最新の欧州月間統計によると、 during the period 1 Jan to 28 Feb 2012 に、加盟29カ国から 1447 cases of measles が報告されており、2011年 (5731 cases) and 2010年 (5752 cases) の同時期の2ヶ月間 と比べ大幅に減少した。感染流行の発生数も減っている 
[2] ロシア Russia (Lipetskaya Oblast)
Outbreak of measles in Lipetskaya Oblast reported
 情報源 Gorodlip.ru 、2012年5月11日。
保健当局 The Department of Health Administration of Lipetsk Oblast は11日、the Gryazi area で複数の麻疹感染が発生した、との報告を行った
 * The Lipetskaya Oblast、with Its administrative centre the city of Lipetsk. Population: 1 172 818 (2010 Census) 
[3] イスラエル Israel
Measles Outbreak Among Foreign Job-Seekers
 情報源 Arutz Sheva、2012年5月9日。
1月以降、職を求める外国人労働者とその子どもの間で、複数の麻疹感染が報告されていることが、9日保健省から発表された。先週、テルアビブ Tel Aviv 在住の外国人7人が麻疹と診断され、そのうち6人が乳児で入院が必要となった。 the young children of foreign job-seekers and their parents へのワクチン接種キャンペーンが開始された。
[4] ベネズエラ Venezuela (ex Lebanon)
The Minister of Health denies existence of outbreak of measles in Venezuela
 情報源 AVN (Agencia Venezolana de Noticias) [In Spanish]、2012年5月7日。
保健大臣 The Venezuelan Minister for Health は麻疹感染の流行発生を否定したが、世間での噂はこれに反したものとなっている [20120506.1124592]

● 百日咳-米国
PRO/EDR> Pertussis - USA (08) 20120513.1122809
[1] Massachusetts (Hampden County) infant fatality:WBUR、2012年4月27日。
[2] Idaho (Bannock County) infant fatality:Local News 8 、2012年5月3日。
[3] Iowa (Howard County):Cresco Times、2012年5月2日。
[4] Iowa (Fayette County):KWWL、2012年5月1日。
[5] New York (Suffolk County):Patch. com 、2012年5月1日。
[6] Washington State (statewide):Washington State Department of Health 、2012年4月30日。
2012 year to date (YTD) confirmed and probable cases reported through [28 Apr 2012] (week 17)
情報源 
[7] Washington (Grant County):NCW-TV 、2012年5月2日。
[8] Montana (statewide):Montana Department of Public Health and Human Services、2012年4月30日。
[9] Wisconsin (Dane County):Maidson.com 、2012年4月26日。
[10] Arizona (Maricopa County), infant fatality:AZ Central 、2012年4月25日。
[Mod.LL- オランダの Dr Frits R Mooi (Pertussis - Australia (04): newly emerging clones, discussion 20120322.1078115) 並びに オーストラリアの Dr Lyn Gilbert (Pertussis - Australia (03): newly emerging clones 20120321.1076103) のいずれの研究報告においても、現在循環する百日咳のクローン circulating clones of _Bordetella pertussis_ に抗原性変化 antigenic changes が生じ、世界的な百日咳患者増加の原因となっている可能性が示されている。この結果、無細胞百日咳ワクチンを用いた現在の接種スケジュールを変更する必要性が取りざたされている。現在、妊娠の第1期 the 1st trimester 終了後に妊娠女性に対し dTap vaccinations を接種することを含めた、胎児の保護 'cocooning' infants が推奨されている。父親、おじおば、祖父母への接種も含まれている。前述のように無細胞ワクチン the acellular vaccine (の効果が) が懸念されていることから、胎児へのリスクを有する百日咳保菌者が、百日咳菌の死菌による全細胞ワクチン the original whole cell なのか、無細胞ワクチンによる予防接種を受けていたかを把握することは重要]

● 炭疽-アルゼンチン、米国(2001)
PRO/AH/EDR> Anthrax, bovine - Agentina (06): (SL) 20120513.1131076
 投稿者 亜 ・ Laboratorio Azul Diagnostico S.A.、Ramon Noseda、2012年5月11日。
州都 San Luis から20km離れたウシ農場1か所の、1群れのウシ mixed-breed herd of cattle で、自然口からの出血を伴った 4頭のウシの突然死が発生した。剖検で中等度の肝炎と脾腫が確認され、中手骨の検体で炭疽菌_Bacillus anthracis_ が確認された

PRO/AH> Anthrax, human, 2001 - USA (02): chemical RFI 20120513.1131856
 投稿者 米・Dennis H. Grant, MD 、2012年5月11日。

● コイヘルペスウイルス-イタリア OIE
PRO/AH/EDR> Koi herpesvirus disease - Italy: (VN), OIE 20120513.1131835
Koi herpesvirus disease, Italy、First occurrence of a listed disease
 情報源 OIE, WAHID、2012年5月8日。
感染開始時期 2012年4月20日
原因ウイルス Koi herpesvirus
新たな感染流行
発生地 CAMPAGNA LUPIA, VENICE, VENETO 飼育場
感染した種: Common carp (_Cyprinus carpio_)
Morbidity: 100 percent
Mortality: 2.68 percent
Susceptible: 3288
Cases: 3288
Deaths: 88
Destroyed: 3200
Slaughtered: 0