2012年6月25日

◎ クリミア・コンゴ出血熱 パキスタン 、インド(ダニ)
鳥インフルエンザ、ヒト seroprevalence Science

◎ クリミア・コンゴ出血熱 パキスタン、インド(2件)
パキスタン
PRO/EDR> Crimean-Congo hem. fever - Pakistan (03): (BA & QA) WHO 20120625.1180202
 情報源 The Express Tribune、2012年6月24日
The World Health Organisation (WHO) は、国内の複数の地域で最近発生した、麻疹とクリミア・コンゴ出血熱 the recent outbreak of measles and Crimean-Congo haemorrhagic fever (CCHF) に対する懸念を表明した。報告 the WHO Weekly Epidemiological Bulletin では、全国で 22 suspected cases of CCHF の報告があり、うち 15 cases の診断が確定し、5例の死者が確認されている [2012] 。 Balochistan の15例中、13 cases が Quetta の患者だった。 WHO のサーベイランス担当者 Disease Early Warning System (DEWS) Senior Surveillance Officer は、 "現時点で警戒レベル alarming にあるわけではないが、心配される事態ではあり、早急な対策が必要で、 患者 Cases of CCHF from Balochistan は、農場や皮革に関係する職業の人々である" と説明している。
関連項目 (02): (BA) 20120616.1170377

インド
PRO/AH/EDR> Crimean-Congo hem. fever - India (02): (GJ) nosocomial 20120625.1180179
 情報源 Times of India、2012年6月24日
Kochariya village of Bavla taluka [district] 初のクリミア・コンゴ出血熱 Crimean-Congo Haemorrhagic Fever (CCHF) の患者宅を訪れた地域保健当局者は、ダニ_Hyalomma_ ticks の多さに驚いた。この家だけでなく、近所の家々でも夥しい数のダニが確認された。村内の基幹産業が酪農であるため、これほどのダニが確認される状況となっている。 CCHF により、この患者と治療に当たった医師が死亡している。
[Mod.CP- Ahmedabad で死亡した患者が Kochariya village in Bavla taluka [district] の住民であることが判明した。
イボマダニ Ticks of the subgenus _Hyalommina_ はインド亜大陸とソマリアで発生が確認されている。6種類がそれぞれ a 3-host cycle を有している。幼若ダニ Immatures はげっ歯類などの小型哺乳動物に寄生し、成虫 adults になると家畜を好むようになるため、野生のガゼル、ウシ、ヤギ、ヒツジなどに移る。ウシや家畜のバファローに寄生する2種類として : _H. brevipunctata_ (India and Pakistan) and _H. kumari_ (India, Pakistan, Afghanistan, northwestern Iran, and Tadzhikistan) がある。3種類はヒツジやヤギを好む: _H. hussaini_ (India, Pakistan, Burma), _H. rhipicephaloides_ (Dead Sea and Red Sea areas), and _arabica_ (Yemen and Saudi Arabia)。_H. punt_ (Somalia and Ethiopia) はアンテロープ、ラクダ、ウシ、ヒツジ、ヤギから吸血する。
The subgenus _Hyalomma_ の中で獣医学および公衆衛生上重要な the 15 species があり、それぞれ 2, 3, and 4 subspecies に分けられている。このうち主なものとして the 2-host _H. anatolicum anatolicum_ がある。世界で最も大きな被害を発生させているダニ the world's most damaging ticks の1つに挙げられ (中央アジアからバングラデシュ、中近東、アラビア、欧州南東部、赤道以北のアフリカのステップや semidesert に棲息する) ラクダ、ウシ、ウマなどに広く蔓延している。
一般的に、幼虫と成虫は共に同じ種類の保有宿主に寄生する。若いうち Nymphs や吸血しない成虫 unfed adults は、乾燥した冬季を、石壁の隙間、厩舎、雑草や休耕田 fallow fields で過ごす。幼虫期に小型哺乳類、鳥類、爬虫類などに寄生した場合は、the life cycle type が 3-host となる。
_H. anatolicum anatolicum_ はタイレリア _Theileria annulata_, バベシア _Babesia equi_, _B. caballi_, アナプラズマ _Anaplasma marginale_, トリパノソーマ _Trypanosoma theileri_ や 5 種類以上のアルボウイルス arboviruses も伝播する; 
ヒトのクリミアコンゴ出血熱ウイルス感染における a significant vector でもある。 
The _H. marginatum_ complex は 4 subspecies から構成され、必ず invariably 2-host を持っている。成虫は家畜と野生の肉食動物に寄生する。幼虫は基本的に鳥類に寄生する。げっ歯類への寄生は、あってもまれである。ウサギ Hares and ハリネズミ hedgehogs が secondary hosts となる。 
The subspecies として、 _H. marginatum marginatum_ (Caspian area of Iran and former USSR to Portugal and northwestern Africa), _H. marginatum rufipes_ (south of the Sahara to South Africa, also Nile Valley and southern Arabia), _H. marginatum turanicum_ (Pakistan, Iran, southern former USSR, Arabia, parts of northeastern Africa, introduced with sheep from Iran to Karoo), and _H. marginatum isaaci_ (Sri Lanka to southern Nepal, Pakistan, northern Afghanistan) がある。
 _H. marginatum_ subspecies も important vectors of Crimean-Congo haemorrhagic fever virus であり、同時に、野生動物、家畜、ヒトに感染する、家畜の病気やウイルスも伝播する [excerpted from the Merck Veterinary Manual] ]
関連項目 20120623.1178585

● 鳥インフルエンザ、ヒト
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (57): seroprevalence debate 20120625.1179950
 情報源 CIDRAP (Center for Infectious Disease Research & Policy) News 、2012年6月22日
Debate over H5N1 fatality rate flares again

H5N1インフルエンザ感染のヒトでの致死率に関する議論の中で、気づかれていない多数のH5N1感染が起きているとの考えに、反対の立場の意見が Science に掲載されている。
この議論の発端となったのは、研究室で作成された、空気感染するH5N1ウイルスに関する2件の研究 [全文は 20120622.1177785] 発表にまつわる論争だった。この研究結果を発表することの支持者の一部に、H5N1の真の致死率 H5N1 case-fatality ratio (CFR) は、多数の軽症もしくは無症候性患者がカウントされていない可能性があり、確定診断されている患者での 60%よりずっと低いのではないかとの意見が出されていた。 
2012年2月 Science 誌は Mount Sinai School of Medicine のチームによる血清抗体陽性率調査に基づくメタアナリシスの結果を掲載し、H5N1ウイルスに曝露したヒトでの感染率が 1-2% であり、世界中で数百万人が感染している可能性があるとの結果を発表した。
今回 [22 Jun 2012] の記事では "(前述の論文の著者らが) 抗体陽性率の結果を拡大解釈 overinterpret し潜在的な不確実性 underlying uncertainties を過小評価している。
真の致死率 the true risk of death from H5N1 infection は確定診断されている患者での 60%より低くなると思われるが、発見されていない多数の感染患者 millions of missed infections があったとの証拠は見当たらない" としている。the Mount Sinai group からの反応も同時に掲載されており、H5N1 outbreaks の発生地域の農村部の人口を合計すれば約 10億人と考えられ、 抗体検査による調査 seroprevalence studies では多数の患者がもれてしまうと主張している。 
Imperial College London に所属する [今回の論文の] 著者らは、確定患者との接触者、処分に関わった人々、家きんでの流行発生地域の住民などの、ウイルスに曝露した可能性があるが、発病しなかった人々のH5N1抗体を血清学的調査により調べることで、asymptomatic or subclinical cases を同定する方法を採用した。2003年以降実施されてきた同種の調査のほぼ全てで、抗体検査陽性となった人はほとんどいなかった。致死率の計算を行う際の、分母子どちらにも見逃されている症例があるのは間違いないが、a recent systematic review では、ほとんどの調査で抗体陽性患者は皆無であり、他の研究でも 3% 未満に留まっている、と述べられている。抗体検査の限界も指摘されており、低レベルの陽性率を過大評価することへの警戒も必要とされている。血清学的アッセイが標準化されていないこと、陽性と判断する基準が決まっていないこと、季節性インフルエンザウイルス感染やワクチンとの交差反応性なども、解釈の妨げになっているとされている ....
References
1. Van Kerkhove MD, Riley S, Lipsitch M, et al: Comment on "Seroprevalence for H5N1 influenza virus infections in humans: meta-analysis." Science 2012; 336(6088): 1506
2. Wang TT, Palese P: Response to comment on "Seroprevalence for H5N1 influenza infections in humans: meta-analysis." Science 2012; 336(6088): 1506
3. Wang TT, Parides M, Palese P: Seroevidence for H5N1 influenza infections in humans: meta-analysis. Science 2012; 335(6075): 1463

● サルモネラ感染症 米国 
PRO/AH/EDR> Salmonellosis - USA: (WA) laboratory link 20120625.1178945
 情報源 KOIN 、2012年6月22日
6月にティーンエージャー1名が、Clark College の微生物学実験室に由来するサルモネラ菌に感染した。サルモネラ菌の生菌培養の授業に出席した生徒のルームメイトだった

● ブルセラ菌 オランダ
PRO/AH/EDR> Brucella melitensis - Netherlands: mycobacterial culture contamination 20120625.1180010
 情報源 Omroep Gelderland (Broadcasting Gelderland) [in Dutch]、2012年6月22日
5月21日、ナイメーヘン Nijmegen の検査室から、複数の国内の他施設に送付された結核菌の検体にブルセラ菌 _Brucella melitensis_ が混入していることが判明した。ブルセラ症、別名マルタ熱 Malta fever の原因菌である。The Nijmegen research laboratory は全ての施設に対し、この検体を取り扱った職員のリストの提出と、健康状態の監視を求めている。自覚されないまま慢性感染となる可能性があり、心臓弁膜感染や中枢神経感染症などの重篤な合併症を発症するケースもある。抗微生物薬により治療可能である。
[Mod.LL- おそらく精度管理のために他の研究施設に送付されたものだろう。Concern regarding the spread of brucellae in the clinical laboratory is real]

● シュマーレンベルグウイルス 欧州
PRO/AH/EDR> Schmallenberg virus - Europe (47): epidemiology, impact 20120625.1180263
 情報源 European Food Safety Authority (EFSA), Parma, Italy - Scientific report; EFSA Journal 2012;10(6):2768、2012年6月18日
Schmallenberg" virus: Analysis of the Epidemiological Data and Assessment of Impact
要約
ドイツで初めて確認されたシュマーレンベルグウイルス "Schmallenberg" virus (SBV) は、(EU) 加盟国内全体の農場 3745ヶ所から、検査で確定診断された SBV cases が報告されている。 SBV は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、バイソンでの感染が確認されている。SBV に対する抗体はシカで確認されいるが、これらのほかの種での感染は確認されていない。ヒトへのリスクの可能性は極めて小さい very unlikely とした、先の ECDC the European Center for Disease Control and Prevention の評価は、新たな研究によっても支持されている。感染経路については、捕獲されたヌカカ biting midges of the _Culicoides obsoletus_ group で、SBV が確認されている。経胎盤感染とベクターによる感染以外の感染経路の存在は確認されていない。ヒツジに関しては最大で1カ国当たり 4%、地域別では 7.6%の農場で感染が発生する一方、ウシについては国別・地域別ともに 1.3%未満にとどまっている。 SBV 発生の影響 the impact of SBV (spatial and temporal spread, proportion of affected holding and potential projection of arthrogryposis hydranencephaly syndrome cases) を評価するため、3つのモデルを検討した。SBV の発生が確認された地域において、感染が広く蔓延した後に集団免疫が期待されることから、次期出産シーズン the 2012-2013 calving and lambing season への影響は低いことが予想される。しかし、SBV は the winter of 2011 を越冬したと考えられ、発生がなかった地域のうち、ベクターによる集団内感染伝播に適合する気温と感受性のある種 (ウシとヒツジ) が高密度に存在する地域においては、これらのモデルにより感染が拡大する可能性が高いことが示されている .....
[Mod.AS- The full report (89 pages) より、
The following knowledge gaps should be addressed:
1. SBV vector competency and other vector host transmission parameters (e.g. data on the extrinsic incubation period);
2. Distribution, density and over wintering of Culicoides vectors;
3. SBV host vector transmission parameters;
4. Other routes of transmission;
5. Host susceptibility, species range, virulence and vulnerable period during gestation;
6. Development and duration of post infection immunity;
7. Potential extensions of the geographical spread model]

● 口蹄疫 ルワンダ、ウガンダから
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease - Rwanda: (ES) ex Uganda, bovine, RFI 20120625.1179577
 情報源 AllAfrica, The New Times report、2012年6月23日
East Africa: outbreak of cattle disease puts Rwanda on alert
Uganda's western districts of Ntungamo and Isingiro での口蹄疫 the outbreak of foot-and-mouth disease [FMD] 発生後、ウガンダからルワンダへのウシの移動は禁止されている ..... 動物検疫担当者 Animal Quarantine in the Eastern Province は隣国ウガンダからの波及を懸念している。ルワンダで最後に [FMD?] 発生したのは2008年で、それ以後国境を越えた隣国からの違法な動物取引に対する厳戒態勢を布いている、という。

● バナナの病気、パナマ病 フィリピン
PRO/PL> Panama disease, banana - Philippines: (Mindanao), update 20120625.1179417
 情報源 Mindanao Times、2012年6月22日
Panama disease continues to hit banana farms in Davao
the Davao Region [Mindanao] のバナナ農園に、パナマ病 The Panama disease の感染が拡がっている ...
[Mod.DHA- Panama disease of banana (PD, also called fungal or fusarium wilt) は、土壌由来の真菌 the soilborne fungus _Fusarium oxysporum_ f.sp. _cubense_ を原因とする]

● リュウガンの病気、Witches' broom ベトナム
PRO/PL> Witches' broom, longan - Viet Nam: (Mekong Delta), update 20120625.1179386
 情報源 Viet Nam News (VNS) 、2012年6月23日
Disease strikes Delta longan crop
the Cuu Long (Mekong) Delta の栽培地域 the longan-growing area の 60%以上で、Witches' broom disease による大きな被害が発生している ....
[Mod.DHA- Longan (_Dimocarpus longan_) は、アジアの一部地域の重要な果実作物で、 Witches' broom (or rosette shoot) はこの作物の最大 50%の損失が報告されている深刻な病気である。 1941年に中国で初めて報告された時は、100%の樹木が感染した。その後、タイや台湾などの国々からも報告されている]