2012年7月9日

原因不明の疾患 カンボジア EV71 WHO
ポリオ ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタン

● 炭疽 タジキスタン、デンマーク(2件)
タジキスタン
PRO/AH/EDR> Anthrax, human, bovine - Tajikistan: (KL)
Archive Number: 20120709.1195322
 情報源 Avesta.Tj 、2012年7月5日
タジキスタン Tajikistan 東部で、8人が炭疽 Anthrax 感染の症状で入院となったことが、保健当局者 the Deputy Minister of Health of Tajikistan の話で明らかになった。いずれも Gofilobod village, Kadiob Jamoat of Rogun の住民で、"感染したウシの処分作業による皮膚炭疽" と説明されている。 8 人はそれぞれ Faizabad district と Rogun の病院に入院中だが、いずれも状態は安定している。

デンマーク 
PRO/AH/EDR> Anthrax, human - Denmark (03): fatal conf. heroin case 20120709.1195198
 投稿者 丁 ・ Department of Infectious Diseases、Dr. Soren Thybo, consultant、2012年7月9日
55歳の HCV and HIV positive(C 型肝炎ウイルスおよび HIV 陽性) の薬物注射常用者 IV drug user が 5日、コペンハーゲンCopenhagen の大学病院 the university hospital Rigshospitalet に入院となった。左そけいぶのヘロイン注射部位の、おそらく血管外部分の感染を疑われた。当初、CRP は基準値以下で発熱もなかったが、翌 6日に発熱し敗血症となり、心停止を起こした。直ちに蘇生と気管内挿管を行い、ICU に移動した。左大腿部の腫脹がひどくなり、腹部も著しく膨隆し固くなった。腸蠕動は聴取されなかったが吸引されず (胃内容? no aspirates) 、超音波や CT 検査でも後腹膜腔の高度の浮腫の所見のみで、腹水と思われた部分の穿刺 (排液) を試みたが何も得られなかった (dry)。患者の血圧は低下し、ノルアドレナリンや輸液に十分反応せず、100% の酸素を投与したが血中酸素濃度は上がらなかった。初回に使用された抗生物質は、 meropenem and ciprofloxazine であったが、敗血症の状態は変わらなかった。左下肢の超音波所見では、コンパートメント症候群 compartment syndrome や膿瘍形成は認められなかった。炭疽感染が疑われたため、 clindamycin が追加された。7日の血液培養で、典型的な連鎖状のグラム陽性菌 gram positive bacteria in chains を認め、その後炭疽菌 _Bacillus anthracis_ であることが確かめられた。患者は同日、ショックから回復しないまま死亡した。デンマークで確定診断された case of injection related anthrax の第 1例目となった
関連項目 Denmark (02): NOT 20120624.1179204

● バベシア症、アナプラズマ症 米国
PRO/AH/EDR> Babesiosis, anaplasmosis - USA: (MA) 20120709.1195265
 情報源 Cape Cod Online、2012年7月9日
Cape Codders の住民にとって、ダニからうつる恐ろしい病気は、ライム病だけではない。マサチューセッツ Massachusetts 州内では、2010年から 2011年の間に、バベシア症 Babesiosis やアナプラズマ症 anaplasmosis の患者が 2倍に増え、ライム病のように、the Cape and Islands では (他の) いくつもの病気が発生するホットスポットとなっている。ナンタケット熱 Nantucket fever とも呼ばれる babesiosis は、1970年代までは発生が確認されていなかった。2011年、州公衆衛生当局 the Massachusetts Department of Public Health に確認された患者は 191 cases、このうち 57 in Barnstable County and 46 cases in Dukes and Nantucket counties だった
Confirmed babesiosis cases 2011 .
Total for Massachusetts: 191*
Barnstable County: 57
Dukes and Nantucket counties: 46
.. 過去の発生数など、やや長文です。
[Mod.EP- 指摘されているように Cape Cod and Nantucket Island はバベシア症の高度侵淫 highly endemic 地域である。輸血による感染リスクがよく知られている。アナプラズマ _Anaplasma phagocytophilum_ は、ヒトの顆粒球性アナプラズマ症 granulocytic anaplasmosis (GA) の原因菌で、ダニ _Ixodes_ ticks が媒介する。以前 Anaplasmosis は "human granulocytic ehrlichiosis" と呼ばれていたが、_Ehrlichia_ and _Anaplasma_ は、別の細菌である。免疫状態に問題がないimmunocompetent individuals 場合、 babesia and anaplasma による慢性持続性の感染は考えにくい。慢性感染症を診断するには、感染を示唆する血清検査の結果と、PCR 法による特異的核酸の検出が必要で、バベシア babesia は鏡検陽性の結果も用いられる。鏡検による検査の感度は低い (the least sensitive method) ]

● 原因不明の疾患 カンボジア EV71 WHO

PRO/EDR> Undiagnosed illness, fatal, child - Cambodia (04): EV71, WHO 20120709.1195264
 情報源 WHO, CSR, Disease Outbreak News、2012年7月9日
原因不明の疾患の調査を行う中で、カンボジア保健省はすべての入院患者 all suspected hospitalised cases の評価を終了しつつある。4月から7月5日までの間に発生した新たな2例の患者が追加され、罹患した小児は合計 59例となった。このうち52例が死亡している。患児の年齢は生後 3ヶ月から 11歳で、大部分が 3歳未満だった。全体の男女比は 1.3:1 だった。適切な検体が採取される前に死亡したため、症例の多くで検査用の検体が入手できなかった。最新の検査結果によると、かなりの割合の検体で手足口病 hand foot and mouth disease (HFMD) の原因となるエンテロウイルス enterovirus 71 (EV-71) が陽性となった。 The EV-71 virus は、一部の患者で重篤な合併症を起こすことがよく知られている。さらに、検体の一部から、デング熱およびブタ連鎖球菌 _Streptococcus suis_ などの他の病原体も確認されている。 H5N1 and other influenza viruses, SARS and Nipah viruses については陰性だった。臨床症状、検査所見、疫学情報をマッチさせる詳細な調査を継続して行っており、数日以内に結論に至ると思われる。WHO と協力機関であるパスツール研究所 Institut Pasteur 並びに米 ・ CDC the US Centers for Disease Control and Prevention が、保健省のイベントへの対応を支援した。同省は市民に対し、こまめな手洗いなどの衛生遵守を呼びかけている。
[Mod.CP- HFMD は通常では軽症感染症だが、一部のEV 71 感染例の例外がある ... 今回の疾患の特殊性や、環境もしくは他の病原体の関与の可能性について、さらなる解明が望まれる]
関連項目 20120708.1193960

● ラッサ熱 ナイジェリア
PRO/AH/EDR> Lassa fever - Nigeria (07): neglected disease 20120709.1195196
 情報源 The Nigerian Observer、2012年7月9日
全国でこれまでに 855例のラッサ熱患者 Lassa [haemorrhagic] fever の報告があり、このうち 87人が死亡した。恐ろしい病気であるエイズ the dreaded acquired immune deficiency syndrome (AIDS) より致死率が高い、と医療従事者らが注意を呼びかけている ... "もともとは齧歯類が保有するウイルスであったが、1969年に ラッサ Lassa (現在の Borno state 北東部の集落) で初めて確認されてから 2012年 5月までの間に、ナイジェリア国内だけで 86 000 lives が失われている。ナイジェリア、シエラレオネ、ギニア、リベリアの西アフリカ諸国全体で毎年、30万から 50万人がラッサ熱に感染し、5千人以上が死亡している ...
[Mod.CP- Lassa haemorrhagic fever はウイルスによる感染症で、主に多乳房ラット the "multimammate mouse/rat" と呼ばれる齧歯類の_Mastomys natalensis_ により、感染が広がる。ラットの糞や尿に直接触ったり、それらに汚染されたものや食品などからヒトに感染する。 Lassa fever は、ヒトからヒトに感染することもあり、症状として発熱、胸壁下の痛み ? pain behind the chest、咽頭痛、背中の痛み、咳、腹痛、嘔吐、下痢、鼻と口からの出血などがある。 感染患者の中には、聴力障害や振戦、顔面と眼瞼の浮腫、脳浮腫が認められるものもある。妊婦がラッサ熱に感染すると、性器出血や流産を起こすことが多く、死亡する場合もある。西アフリカで発生し、ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアから患者が報告されている。しかし、ラッサ熱を伝播する齧歯類は、他のアフリカ諸国にも生息しており、さらに感染地域が広がる可能性もある。西アフリカの年間の患者数は1 0万から 30万、死者は約 5000人と推定されている。すべての地域で調査が行われているわけではなく、いずれも推計値である。シエラレオネとリベリアの一部の地域では、入院患者の 10から 16% がラッサ熱に感染するとされ、住民に深刻な影響を及ぼしていることがうかがえる。1年を通じて発生が見られるが、1月から 5月までが多い。空気感染する可能性があり、ある条件下で死亡率が高まる可能性もあるため、ラッサウイルスは、category A バイオテロ病原体 (bioterrorism agen) に分類されている。発症時の症状が非特異的でわかりにくいため、早期診断は困難であり、ウイルスの遺伝学的多様性のため RT-PCR assays の信頼性も乏しい。適切な診断ツールがないことが、院内感染を助長するとともに、治療の機会を失わせている (See: Leparc-Goffart I, Emonet SF. Med Trop (Mars). 2011 Dec;71(6):541-5) ]
関連項目 (06) travel alert 20120428.1117076

● ポリオ ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタン

PRO/EDR> Poliomyelitis - Worldwide (05): Nigeria, Pakistan, Afghanistan 20120709.1194958
[1] ナイジェリア Nigeria
 情報源 Leadership、2012年7月9日
2012年初以来、10カ所の州で合計 48 cases of wild polio virus (WPV) が報告されており、発生地域は Kano, Jigawa, Bauchi, Borno, Yobe, Sokoto, Zamfara, Kaduna, Katsina and Niger である ... "48 cases of WPV の発生地域の中に、過去3年間発生がなかったが、隣接する州からの移動する牧民の子ども 1人の感染が確認された Niger が含まれていた ... "
[2] パキスタン Pakistan & アフガニスタン Afghanistan
 情報源 Express Pharma Online、2012年7月9日
世界中で今もポリオが残るたった3カ国のうちの2つ、パキスタンとアフガニスタンからポリオを根絶させるために、十分な接種回数のワクチンを受けられている子どもの数が、あまりにも少なすぎることが、 Online First in The Lancet 掲載の論文 [The effect of mass immunisation campaigns and new oral poliovirus vaccines on the incidence of poliomyelitis in Pakistan and Afghanistan, 2001-11: a retrospective analysis. Lancet. 2012 Jul 3. [Epub ahead of print] ] で明らかになった。新たに導入された 2価 経口ワクチン the newly introduced bivalent oral poliovirus vaccine (OPV) は、十分な数の子供らに接種できさえすれば、これらの国でポリオを根絶することが可能である。"2011年、 パキスタンとアフガニスタン南部の最も感染が深刻な地域で、3歳未満の小児のおよそ 40% に、最も多い type 1 に対するワクチンが接種されていなかった unprotected " と英国の研究者が説明している。 "接種率が低い原因の1つは、治安が悪い insecurity ためにワクチン接種を受けに来ることができず、some parts of Southern Region in Afghanistan, and Federally Administered Tribal Areas (FATA) in Pakistan で特にその傾向が強く、この地域が、ポリオのない国々 polio-free countries にとっての (ウイルス再導入の) 温床となり、地球上からの根絶 worldwide polio eradication を妨げている" と述べている ...
[3] Polio Eradication Initiative update as of 4 Jul 2012
 情報源 Polio Eradication Initiative、2012年7月4日
Total cases: Year-to-date 2012 / Year-to-date 2011 / Total in 2011*
Globally: 88 / 252 / 650
 - in endemic countries: 84 / 84 / 341
 - in non-endemic countries: 4 / 168 / 309
[Mod. MPP- the Polio Eradication Initiative update statistics にあるとおり、2012年の wild poliovirus (WPV) activity は ナイジェリア、アフガニスタン、パキスタンの the 3 remaining countries endemic for WPV にほぼ限られている。これ以外で唯一の other documented WPV activity が確認されているチャドでは、5月11日を最新の発症日とする 4 WPV type 1 cases が報告されている。2つの記事に掲載された明白な懸念材料として、既知の 3常在国のハイリスク地域で選択的に実施される、経口ポリオワクチン the oral polio vaccine (OPV) の満足なカバー率達成の困難さである。パキスタンおよびナイジェリアでは、西側により意図的にワクチンに異物が混入されている、とのデマにより、住民らからワクチン接種が拒否されていることが報告されている。アフガニスタンとパキスタンでは、特定地域の治安の悪化で、ワクチン接種率が低下している。過去の経験から、常在国で野生株ポリオウイルスの感染循環が継続することで、一旦は感染伝播が断ち切られたものの、その後も定期接種を続けることによる高いカバー率を維持し続けることが困難な国に、WPV が再び導入されてしまう不安が現実のものとなる]

● コレラ マリ・ガーナ・ウガンダ・インド、キューバ(2件)
マリガーナ・ウガンダインド
PRO/EDR> Cholera, diarrhea & dysentery update 2012 (27): Africa, Asia 20120709.1191289
[1] マリ Mali (Gao Region):AllAfrica, International Committee of the Red Cross press release、2012年7月5日
2日以降、 the village of Wabaria(北部 Gao 近郊で the Niger River 川沿い) において、 32 cases of cholera が確認されている ...
[2] ガーナ Ghana (Brong Ahafo):Daily Guide (Ghana) 、2012年7月5日
Atebubu in Brong Ahafo region で少なくとも9人のコレラ感染が確認され、ほか複数の感染があるとみられている。 5月に初めての感染が確認された ...
[3] ウガンダ Uganda
 - (Bududa District):AllAfrica, The New Vision (Uganda) report、2012年7月2日
Bunakasala parish (Bulucheke sub-county in Bududa district) でコレラ感染流行が発生し、6月25日の週に起きた地滑りの上に不幸が重なった形となっている。 3 cholera patients from Bunakasala parish が医療センター Bushika Health Centre を受診した
 - (Kisoro District, Congo DR border):All Africa, The New Vision report、2012年7月2日。
Karambo (near Bunagana border post and Busanza border line at Uganda's border with DR Congo) で、1件のコレラ感染流行が発生した、と当局者 Kisoro District Health Officer が発表した。コンゴ民主共和国からウガンダへの難民流入がピークとなった時期に流行が発生した ... 2月には、(難民) キャンプで赤痢 an outbreak of dysentery が発生している
[4] インド India
 - (Banaskantha district, Gujarat State):Daily News & Analysis (DNA) 、2012年7月5日
Dhanera town of Banaskantha district でこの3-4日間に少なくとも5人がコレラ感染により死亡し、約200人が下痢のような症状を発症した ... 4日当局は、人口約 2万5千人の Dhanera にコレラ感染が発生したと発表した ...
 - (Ahmedabad, Gujarat State):Daily News & Analysis (DNA) 、2012年7月3日。
Ahmedabad 市では、6ヶ月の1ヶ月間に、各病院から 25例のコレラ患者が報告され、1月以来の患者数が45人に達した。 2011年の1年間の総患者数は 57人だった

キューバ
PRO/EDR> Cholera, diarrhea & dysentery update 2012 (26): Cuba (GR) Havana case 20120709.1194769
 情報源 BBC News, Latin America & Caribbean、2012年7月7日
キューバの首都 ハバナ Havana で 1名のコレラ Cholera 感染が診断されたとの情報を得た。南東部の Manzanillo で珍しい流行が発生し3人が死亡した数日後のことである。 50人以上が感染、約 1000人が医療機関を受診した。患者の大部分は、ハバナから 750km 以上離れた、南東部 Granma province の患者である。この地域から多数の医療関係者が、2010年の地震の後に数万人のコレラ患者が発生しているハイチで、患者の診療に当足り、今も続いている ... ハバナの医師らは、妊婦や高齢者を中心に、コレラの様な症状がないか注意して診察しており、今回、4日に入院した 60-year-old woman のコレラ感染が確定診断された。最後にコレラ感染流行が報告されたのは、1959年の革命直後のことである。
関連項目 Cuba (GR) possible spread 20120707.1193285

● 結核 英国
PRO/EDR> Tuberculosis - UK: increasing drug resistance 20120709.1194280
 情報源 Coventry Telegraph、2012年7月7日
the West Midlands において、2011年以来、薬剤耐性結核 tuberculosis (TB) 患者数の増加が続いている。 2011年に診断された結核患者の14人に1人が、少なくとも 1種類の通常使用される薬剤に耐性を示した (菌に感染していた)。複数の薬剤に耐性を示した患者も多数あった。 Coventry は国内でも結核感染率の高い地域の1つである
 
● 炭疽 カナダ、バイソン
PRO/AH/EDR> Anthrax, bison - Canada (02): (NT) 20120709.1194889
[1] 情報源 Edmonton Sun、2012年7月6日
ノーザンテリトリ the Northwest Territories における、20年ぶりの 最悪の炭疽流行 The worst outbreak of killer anthrax spores により、Fort Providence 北西部で 128 wood bison が死亡した ...
[2] 質問事項への回答 7件:加 ・ Government of the NWT、Troy Ellsworth、2012年7月9日
[3] 投稿者 加 ・ Government of the Northwest Territories、Terry Armstrong, PhD、2012年7月8日
関連項目 Canada (NT) 20120706.1192749

● 伝染性サケ貧血 カナダ 
PRO/AH/EDR> Infectious salmon anemia - Canada (04): (NF) 20120709.1194076
 情報源 Metro News, The Canadian Press report、2012年7月7日
Newfoundland and Labrador 当局は、1カ所の養殖場 aquaculture site で発生した、初めての伝染性サケ貧血 1st outbreak of infectious salmon anemia に対応している。これまでにも野生のサケでの発生は確認されていたが、今回の Conne River 付近の養殖場での確認は初めてのことであった