2015年7月1日

MERS-CoV (84)-韓国,サウジアラビア,ECDC
エボラウイルス疾患 (84) -リベリア 2例目の患者、WHO F
クリミア・コンゴ出血熱-パキスタン (06)
トリパノソーマ症 (シャーガス病) -ベネズエラ、死亡 など

炭疽-米 (13) 検査機関のミス,長期にわたる問題
PRO/AH> Anthrax - USA (13): laboratory errors, longstanding problems
Archive Number: 20150701.3477317
情報源 Military.Com、2015年6月29日。
国防省 The Defense Department は,炭疽菌騒動 the anthrax scandal に発展した,研究機関の高度汚染 high-containment laboratories に気づけなかった上,広範囲に配置された化学・生物学防護施設の崩壊したインフラの立て直しにも失敗した,とする政府当局 the Government Accountability Office の報告が明らかになった。さらに国防省当局者 Pentagon officials は先週,国内及び世界中の契約研究機関に生きた炭疽菌サンプルを送り続けた,このずさんな10年計画にかかった費用の総額が未だ確定されていないとも述べている ... 原文参照願います。

MERS-CoV (84)-韓国,サウジアラビア,RFI
PRO/AH/EDR> MERS-CoV (84): South Korea, Saudi Arabia, RFI
Archive Number: 20150701.3477232
[1] 韓国, 1 new case, 0 new deaths - MOH 2 Jul 2015, RFI
情報源 MOH 2 Jul 2015 [machine trans]、2015年7月2日。
As of 2 Jul 2015 there have been a total of:
183 laboratory confirmed cases of MERS-CoV infection, including
33 deaths, 102 recoveries, and
48 currently under treatment.
新たに 24時間以内に発生した患者:
1 newly confirmed case (24歳の女性看護師, currently under investigation), ...
12人が危険な状態にあり,致死率は18% ...
 [Mod. MPP - The total number of laboratory confirmed cases of MERS-CoV infection in South Korea is now 183, with the most recent case involving a nurse working in Samsung Hospital. ...]
[2] サウジアラビア, 1 new case, 0 new deaths - MOH 1 Jul 2015
情報源 Saudi MOH、2015年7月1日。
As of 1 Jul 2015, there have been a total of:
1042 laboratory confirmed cases of MERS-Cov, including 460 deaths, 578 recoveries, and 4 currently active cases.
新たに24時間以内の発生した患者
1 newly confirmed case
[The reported case fatality rate is 44.1 percent.]
新たな患者の詳細情報:
A 56-year-old Saudi female, non-healthcare worker from Riyadh currently in stable condition.
 [Mod. MPP - 6日間連続で,Hufoof からの患者報告のない状況が続いている。the healthcare environment in Hufoof での感染連鎖に対する,感染対策の効果が現れていることが示唆される。リャド Riyadh においては,見えない感染連鎖 some undetected chains of transmission ongoing が存在するとみられ,この4日間で3人目の‘弧発例 "sporadic" case が報告されている。5月11日(この日リャドで新たに4例の患者が確認,うち1人にラクダとの接触あり)以降,リャドから10人の患者が報告されているが,このうち8人が "sporadic" cases と考えられており,残る2人にはラクダとの頻繁な接触が確認されている。このことから,リャドにおいて新たな医療現場での感染伝播が起きているのか,あるいは次の ECDC risk assessment にあるような unrecognized chains of transmission ongoing in Riyadh が存在するのか,という疑問が生じる]
[3] Rapid Risk Assessment - ECDC 30 Jun 2015
情報源 ECDC Rapid Risk Assessment、2015年6月30日。
対応に関する,主要な結論および選択
EU への輸入感染例 the importation of MERS cases という点で,The Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) outbreak のリスクは依然低いままである。市中での持続的な感染伝播は観察されていないが,医療従事者,および病院内の他の患者や見舞客での,輸入感染患者との濃厚接触による感染が,主として韓国内で,またフランスおよび英国,イラン国内でも報告されている。韓国への渡航者の感染リスクは,医療施設,特に感染が発生した13地域内の医療施設への暴露がない限り,きわめて低い。同様に,2015年7月のユニバーシアード韓国大会についても,開催されるイベント会場のある場所では患者が報告されていないことから,参加者の感染リスクはきわめて低い。サウジアラビアへの渡航者の感染リスクは低く,生きたラクダ,ラクダから生産される製品,もしくは医療施設との接触の有無に比例する。韓国と比較した場合,サウジアラビアでは,多数の院内感染集団発生事例が確認され,2年以上にわたって医療現場での感染伝播が継続されており,関知されていない感染伝播チェーンの存在が示唆され,またラクダやラクダ産品への暴露に比例したリスクがあることなどから,より感染リスクが高いと考えられている。WHO は MERS-CoV を理由とする渡航制限は推奨していないが,中東の感染発生国や韓国との間の渡航者に対し,ウイルス感染循環の存在や,食品や手指の衛生遵守への意識向上を勧めている。2015年ユニバーシアード大会の参加者らは,主催者側からの推奨事項 "all persons involved in the FISU Summer Universiade should take strict precautions for good health procedures (すなわち,手を洗い,他者に向かって咳をせず,体液が他者に及ばない self-contained よう注意する) に従うことが求められる。発熱,咳,あるいは呼吸器感染の所見や症状があるものは,自国から出たり,大会に参加したりしてはならない。ユニバーシアード事務局は,入国管理,人事管理 personnel control,専用調査チームと MERS 専用医療施設の準備等の予防対策を行う。専用検査センター1ヶ所と管理施設2ヶ所で,感染が疑われる患者を受け入れる。中東や韓国においては,ラクダもしくは医療現場との接触があった渡航者の感染を,早期発見することが重要であることに変わりはない。韓国での集団発生を見ても,医療関連の感染伝播には持続して起きるリスクがあり,適時の診断と対策の実施が重要であることが示された。感染流行が続いている現在,中東および韓国から帰国した渡航者らは,旅行中または帰国後14日以内に,呼吸器の症状もしくは下痢が認められた場合,医療機関を受診し渡航歴について申告しなければならない。EU 内で重症急性呼吸器疾患が現れた患者で,最近韓国または中東で MERS 患者,ラクダ,医療施設との接触があった場合は,MERS-CoV infection 検査の実施が必要である。医療関係者らは,このような発生地域からの渡航者に関連するリスクと重症急性呼吸器疾患のある帰国者については直ちに検査を行うとの知識を持たなければならない。WHO は,probable and confirmed cases を,換気が適切に行われる個室または空気感染伝播対策が施された病室へ収容するよう求めている。これらの患者を担当する医療従事者は,標準感染防止策に加え,接触感染と飛沫感染対策 (medical mask, eye protection such as goggles or face shield, gown, and gloves) を実施し,エアロゾルが発生する可能性のある処置を行う際は,空気感染防止策の実施が求められている。

公衆衛生上の問題
ユニバーシアード開催が目前の韓国での感染流行が発生し,またタイでの渡航に関連する患者が確認されたことから,今回の情報改訂が行われた。170か国から約 2万人が参加する
The Summer Universiadeis は Gwangju, South Korea from [3 to 14 Jul 2015] で開催される。

疾患の背景情報
2012年9月にサウジアラビアではじめて発生が確認されて以来,20か国以上から千人を超える患者報告されている。欧州の7か国でも患者が確認されており,いずれも直接または間接的に中東との関連性が確認されている。MERS-CoV infection の臨床症状は,無症候性のものから,敗血症性ショックや多臓器不全により死に至る場合もある,急性呼吸促迫症候群を伴う非常に重症の肺炎まで,様々である。免疫不全のある患者では,臨床経過がより重篤となる。ヒトコブラクダ the dromedary camel がウイルスの保有動物であり,ヒトでの感染源として重要な役割を果たしている,との証拠が増加しつつある。多数の患者が発生するクラスターの端緒では人獣共通感染が起きていると考えられるが,主要な MERS-CoV 感染伝播様式はヒト-ヒト感染であり,ほとんどすべての患者が医療施設内もしくは家族間で発生している。院内感染こそが MERS を特徴付けており,サウジアラビア,UAE, 最も新しい例では韓国の病院内感染流行 hospital outbreaks において報告される患者が,大多数を占めている。

イベントの背景情報,世界の状況
Since April 2012 and as of [29 Jun 2015], 世界中で 1379 cases of MERS (including 531 deaths) が報告された (Figure 1 Distribution of confirmed cases of MERS by month* and probable place of acquisition of infection, March 2012-28 Jun 2015 (n=1379) and Table 1 [below])。

現在の疫学状況
前回更新時の the ECDC Rapid Risk Assessment on MERS-CoV ([11 Jun 2015]) 以後,以下の各国から 92 new cases and 33 deaths が報告されている: 韓国 (74 cases and 23 deaths), サウジアラビア (12 cases and 8 deaths), アラブ首長国連邦 (4 cases and 1 death), ドイツ (one death in a travel-related case reported in March 2015) ならびにタイ (a travel-related MERS case from Oman to Bangkok on [18 Jun 2015]) 。大部分の患者が中東で発生しており,最多はサウジアラビアと the United Arab Emirates (Table 1) であった。しかし,2015年5月のアウトブレイク開始以降に報告された新たな患者は,韓国が最多となっている。
Table 1. 国別の患者数,上記 URL サイト参照願います。

韓国
5月20日,韓国保健当局 the Korea Centres for Disease Control and Prevention が WHO に対し,中東への渡航歴のある同国初の患者 the 1st laboratory confirmed case of MERS in a 68-year-old man を報告した。6月29日現在,保健省 the South Korean Ministry of Health and Welfare は,流行発生以降 182 cases を報告している (発端患者および中国から報告の患者を含む)。このうち,14人が危険な状態 in a severe condition, 43人は in moderate condition, 93人はすでに退院となり,32人が死亡した (Figure 3)。死亡した患者のうち 53% (17人) に合併症が確認されている。退院となった患者の平均年齢が49歳であったのに対し,死亡患者32人の平均年齢は69.5歳である。この2週間,新たに報告される患者は減少している。2012年のアウトブレイク開始以後,常に男性の割合が多くなっているが,韓国の患者ではその傾向が弱い less marked (Table 2 and Figure 4)。一方で,年齢及び性別感染率 the age and gender-specific attack rates では,韓国においても高齢男性の感染リスクが最も高く,30歳以上での感染者が最も多い。韓国での感染流行の発端となった患者の発症日は5月11日であり,診断され隔離されたのは5月20日だった。発症してから隔離されるまでの10日間 (Figure 3, yellow box ), この患者 the index case は複数の医療機関 several healthcare facilities を受診していた。これまでに 17 hospitals が,MERS cases ,または治療した患者が後に検査で感染が確認されことを報告してい(Figure 5)。これらの病院は,韓国内の13の地域に点在しているが,いずれも the organisation of the Summer Universiade には関係していない。発端となった患者と家族内感染伝播が疑われる患者の2例の患者をのぞき,報告されたすべての患者が韓国内での院内感染である。6月28日現在,the South Korean Ministry of Health は 36人 (20 percent) が医療従事者: 20 doctors or nurses, 8 caregivers and 8 medical support staff (Figure 7) としている。[24 Jun 2015], 韓国保健省の話として,国内での市中感染伝播発生の疑い a suspicion of community transmission が報じられた。先に報告のあった,6月21日に発症し隔離され,22日に検査陽性であることが判明した 74-years-old MERS case で,この男性は同10日に診断が確定し13日に死亡した,男性の妻から感染したと見られている。夫婦はともに 10日まで自宅で隔離されており,妻が死亡した後も男性には症状が認められていなかった。MERS の最大の潜伏期間が14日であることを考慮すれば,この74歳の男性は自宅で妻から感染した可能性が高い。

中国
5月30日,WHO は韓国で感染したと考えられる a case of MERS in China を報告した。この患者は,韓国内で3例目の感染患者の息子で,4例目の患者の弟だった。男性は韓国の発端患者と同じ病室にいた父親の見舞いに訪れた後,韓国から中国の広東省に渡航して入院となり,5月29日に MERS-CoV 感染と確定診断された。この患者から感染した患者は報告されていない。この患者は6月26日に退院した,と報じられている。

タイ
[18 Jun 2015], 慢性心臓疾患のある a 75-year-old male Omani national (オマーン人)が,タイで MERS-CoV infection と確認された。オマーンのメディアは,保健省当局者の話として,この男性は心臓に症状があり,6月4日にオマーンの病院に入院し,7日に退院したと伝えている。同10日に呼吸器症状を発症し医療機関を受診し,14日に別の病院を紹介された。15日に家族3人と共にタイ行のフライトに搭乗した。バンコク Bangkok 到着時には発熱はなかったが,その後発熱し肺炎が疑われた。18日,the Bamrasnaradura Diseases Institute に紹介となり,家族も同じ施設内に隔離された。現時点で男性の症状は安定している。18日に 2 laboratories (National Institute of Health and the WHO Collaborating Centre for Viral Zoonoses, Faculty of Medicine, Chulalongkorn University) に喀痰検体が送付され,いずれの機関においても MERS-CoV 検査 by real-time PCR (UpE and ORF 1a) 陽性が確認された。同伴した家族のうち,咳のあった1人と発熱のあった1人の計2人についても MERS-CoV 検査が行われている。175人の接触者が同定されている。

オマーン
The latest MERS case を,the Ministry of Health が報告したのは 31 May 2015 で,重症肺炎と高熱が見られた a 75-year-old patient で,現在も生存しているが,病状は不明である。

サウジアラビア
2015年初から6月29日までに,214 infections with MERS-CoV (Figure 8) が報告されている。The WHO Regional Office for the Eastern Mediterranean が,2 hospital outbreaks and one household cluster of community-acquired infections with MERS-CoV from Hofuf City in the Al-Ahsa region in Saudi Arabia during the period from mid-April to the end of May 2015 を報告している。感染伝播 transmission of MERS-CoV は,国内のほとんどの地域 most administrative regions において,病院内と市中の双方で発生していることが示唆されている。

ウイルス学情報
韓国内のクラスターに関連する患者らから分離されたウイルスについて,2件の全遺伝子塩基配列 Two whole genome sequences の情報が得られた。広東省の患者から分離されたウイルスは the Chinese CDC (GenBank KT006149) により,もう1人の韓国内の患者のウイルスは the Korea National Institute of Health and Seoul National University が解析を行った。韓国と中国の解析結果には,a small 22-nucleotide difference が認められたが,技術的な問題の結果と考えられており,実際,韓国は培養されたウイルスの遺伝子を解析した一方,中国は患者のスワブ検体から直接分離されたウイルを使用していた。暫定的な解析結果では,中国と韓国のウイルスで,中東で感染循環するMERS-CoV との表現型上の相違はなく,毒性 virulence や感染伝播特性の違い different virulence or transmission properties もないと考えられている。特に,MERS-CoV virus のヒト細胞への侵入を仲介し,毒性の重要な決定因子となる,糖タンパク the spike protein の構成アミノ酸組成に有意な違いがないことが示唆された。韓国と中国のウイルス遺伝子塩基配列の系統発生学的解析から,これらのウイルスが ,最近 2015年2-3月にリャド Riyadh で発生した outbreak と最も近縁に分類されたが,多様性レベルから別個の人獣共通感染による発生であるとの説明が可能であることから,(リャドと韓国で起きた)the 2 outbreaks が必ずしもリンクしているとは言えない。the EU/EEA の検査機関で広く用いられている,ウイルス感染の同定および確定 detection and confirmation of MERS-CoV infection のためのアッセイの(検出) 能力 the performance of the laboratory assays が,韓国および中国で解析されたウイルスにおいて確認された遺伝学的変化の影響を受ける可能性はないと考える。

結語
韓国とタイで渡航関連の患者 travel-related MERS cases が確認されたことは予測された事例である。過去,EU やその他の地域においても,中東への渡航歴のある感染例は確認されている。韓国の the MERS cluster は中東以外では最大となっているが,市中でのウイルスの持続的感染伝播の証拠はない。韓国の病院内で観察されている感染伝播のパターンは,中東の院内感染のそれと同じものである。韓国では新たな患者の発生が,過去2週間減少してきており,公衆衛生対策が感染伝チェーンの遮断とアウトブレイクのコントロールに効果を示していることを表している。
WHO は,韓国のアウトブレイクで分離されたウイルスの振る舞いに,これまでのウイルスとの違いは示唆されておらず,また市中において持続的なヒトからヒトへの感染伝播も認められていない,としている。感染の伝播は,複数の医療施設内における,患者,見舞客および医療従事者に限られている。潜伏期間についても,これまでに報告されている clusters と同じで,限られた範囲ながら,発症前に感染伝播が生じていた証拠があった。しかしながら,韓国において報告された三次感染例の患者数は,これまでのアウトブレイクと比較して多数であった。
中東ではウイルス感染伝播が続いており,サウジアラビア,UAE, オマーンから最も多くの患者が報告されている。現行の感染伝播は,2013年から観察され続けているパターン; 弧発の人獣共通感染患者から発生した種々のサイズの院内感染,に一致している。韓国の発端患者には,中東におけるラクダや医療現場への暴露が認められていない事実が,確認されていないヒト-ヒト感染の連鎖 unrecognised chains of human-to-human transmission が中東に存在する可能性が考えられている。Muller らは,保有動物に接触したヒトの間の,気づかれない程度の低レベルの感染が,動物に暴露していない人々の感染源となっている可能性を示唆している。
ヒトコブラクダ the dromedary camel (_Camelus dromedarius_) が MERS-CoV の保有種 a host species であることを示す,血清学的および分子学的証拠が積み重ねられている。ヒトに対する血清学研究やアウトブレイクの調査も,これを支持している。従って,2012年よりずっと以前から,アフリカ及び中東において,MERS-CoV あるいは類似のコロナウイルス MERS-like coronaviruses が感染循環していたと考えられる。感染のある保有種の周辺での,散発的な感染例の確認も予想される。

EU に対する脅威の評価 ECDC threat assessment for the EU
輸入感染 the importation of MERS cases の観点から、the EU に対して The MERS outbreak がもたらすリスクは低いままである。市中での持続的な感染伝播は確認されていないが、最も最近では韓国、またフランス、英国、イランでも、輸入感染例からの濃厚接触者への感染が、医療従事者、他の患者、および見舞客らの間で報告されている。
韓国への渡航による感染リスクは、医療施設、特に13の発生地区での曝露がない限り、極めて低い extremely low 。2015年7月のユニバーシアード韓国大会の参加についても、イベントが開催される地区ではこれまで患者が報告されていないことから extremely low といえる。
サウジアラビアの渡航者のリスクは低く low 、ラクダおよびラクダ産品ならびに医療施設との接触の有無が関係する。サウジアラビアは韓国に比べ、より多くの院内感染発生事例 nosocomial clusters が確認されていることや、2年以上にわたり医療現場での感染伝播が存続していること、特定されていない感染伝播チェーンからの感染が疑われること、そしてラクダとラクダ産品への曝露に関連したリスクがあること、などから、(感染)リスクが高いと考えられる。

対応の選択
渡航者
WHO は MERS-CoV に関係するいかなる渡航制限も推奨しておらず、むしろ、発生国との間を往来する渡航者への情報提供の強化を奨めている。EU から中東および韓国への旅行者らは、これらの渡航先でウイルス感染循環が起きていることを認識し、通常の旅行アドバイスである手指および食品の衛生遵守を銘記すべきである。
ユニバ韓国大会の参加者らは、主催者から推奨されているアドバイス、"all persons involved in the FISU Summer Universiade should take strict precautions for good health procedures (すなわち、手洗い、他者に向かって咳をしない、体液をまき散らさない self-contained) に従わなければならない。高熱、咳や呼吸器感染の自覚的・他覚的症状があれば、自国を出たり、競技に参加したりしてはならない。主催者は、入国管理、人事管理 entry control, personnel control、特別監視チームの設置のほか、専用医療施設の確認などの対策を採っている。MERS 専用検査センタ -  1ヶ所と、感染が疑われる患者を受け入れるための専用隔離施設2ヶ所も設置された。

帰国者
中東のラクダや医療施設、あるいは韓国の医療施設との曝露がある渡航者において、MERS-CoV infection の早期発見が重要であることに変わりはない。韓国のアウトブレイクでは、医療施設関連の感染伝播には持続するリスクがあり、適時の診断および予防とコントロールの実施が必要であることが証明された。従って、中東および韓国から帰国する渡航者らは、旅行中もしくは帰国後14日い以内に呼吸器の症状または下痢があれば、医療機関を受診し渡航歴を申告すべきことを銘記しておかなければならない。The EU 内において、最近の韓国または中東の MERS 患者、ラクダもしくは医療施設との曝露のある、重症急性呼吸器疾患の患者に対して、MERS-CoV infection を調べる必要がある。医療従事者は、感染発生地域から帰国した渡航者らに関係するリスク、病気の症状、迅速な診断に関する知識を持たなければならない。
WHO は、患者 probable and confirmed cases は、適切に換気できる個室 adequately ventilated single rooms または空気感染対策のある病室 rooms with airborne transmission precautions に収容すべきとしている。医療従事者は、標準感染予防対策に加え、接触および飛沫感染対策 (medical mask, eye protection such as goggles or face shield, gown, and gloves) の実施が必要であり、エアロゾルが産生される処置を行う場合には、空気感染対策を実施する。
関連項目 (83): South Korea, Saudi Arabia, WHO 20150630.3475176

エボラウイルス疾患 (84) -リベリア 2例目の患者、WHO 最新状況、HHS センター
PRO/AH/EDR> Ebola update (84): Liberia 2nd new case, WHO update, HHS centers, susp. funding
Archive Number: 20150701.3478027
[1] リベリア, 2nd new case
情報源 AP、2015年7月 1日。
リベリア政府当局が 1日、2例目の患者 a 2nd Ebola case を確認した。同じ町で数日前に、エボラ排除 Ebola-free から 7週間後に 1名のティーンエージャーの死亡が確認されている。感染した患者はモンロビア Monrovia に移送されたと保健副大臣が述べた。5月9日に WHO がエボラ排除を宣言して以来危険手当が支払われていないとして、1日、100~200人のエボラ治療センター職員らが、モンロビア東部の保健省に押しかけた ... Hard-hit by 1st outbreak ...
[2] Two new Ebola cases in Liberia
情報源 Guardian、2015年7月1日。
リベリアでは5月9日以来となるエボラ患者の死亡から数時間のうちに、新たに2人が検査の結果陽性となった。直ちに接触者の追跡調査が開始されている。[写真] WHO の排除宣言から 7週間後、新たに2人の患者がエボラ検査で陽性となった。6月28日に死亡した 17歳の少年の同居者で、首都モンロビアから 50km 離れた同町には隔離措置が採られている ... 新たな2人の感染を発表した情報省は、死亡した少年の感染が渡航によるものかどうか調査中であるとしている。シエラレオネとギニアの観戦者数は激減しているものの、沿岸部の国境地域では依然として発生がある。しかし、リベリア(国内)の国境を接する地域でのエボラ感染は報告されていなかった。
[Mod.JW - 少年と接触があり症状の見られる人々が調査されており、接触者のリストにある100人超は全員、厳密な監視を行っている、と WHO の広報担当者が取材に答えた.... Nedowein の保健当局者は、死亡前に学校に通学し近医も受診しているこの少年の接触者の確認を急いでいる[Reuters].
"政府保健当局は 6月28日にエボラウイルス感染により死亡した 17歳の少年と接触した2人の、新たなエボラウイルス感染が判明したことを確認した Margibi County の保健当局者は、詳しい血液検査の結果を待っているところではあるが、(死亡した)少年と身体的な接触のあった2人がウイルス感染した、と述べている。the World Health Organization によると、(死亡した) 10歳代の少年は 6月21日に発病し、当局は少なくとも 102人の少年との接触者を確認しており、さらに人数が増えると見られる、とされる." [Washington Post].
新たな感染が 1人なのか 2人なのか、メディアの中で混乱が生じているようだが、いずれにせよ悪いニュースである]
[3] WHO data and statistics
Situation summary, Data published on 1 Jul 2015 [as of 28 Jun 2015]
情報源 WHO、2015年7月1日。
厚労省検疫所 FORTH  [表形式] 参照願います。
[4] WHO situation report 1 Jul 2015
情報源 WHO、2015年7月1日。
厚労省検疫所 FORTH より。
7月1日付けの世界保健機(WHO)の情報によると、エボラ出血熱の発生状況は以下のとおり。
エボラ出血熱の患者数は27,550人、死亡者数は11,235となった。

要約
= 6月28日までの1週間に、前週と同じ20人のエボラ出血熱確定患者が報告され、この5週間、週毎の患者発生数は20人から27人の間にある。
ギニアでは、いずれも前週にも報告のあった 3県(ボケ、コナクリ、フォレカリア)から12人が報告された
シエラレオネでは、前週と同じ3地区(カンビア、ポート・ロコ、首都フリータウンを含む1地区)から8人が報告された。
感染リスクをさらに高める原因となる死亡後まで発見されなかった患者の割合が足かせとなり、接触者の追跡と監視における課題は感染連鎖を終わらせることへの努力を妨げています。

= 6月29日に、リベリアのMargibi(マージビ)郡で、通常のサーベイランスの中でエボラ出血熱の確定患者が発見されました。3月20日以降では、初めてとなる 17歳男性患者で、6月21日に発症した。地域の医療施設を受診した後、マラリアの治療を受けて退院したが、6月28日に死亡し、同日、安全に埋葬された。埋葬前に採取された口腔内スワブ検体から 2回連続してエボラ検査が陽性となった。102人の接触者が同定されている。現段階で、感染源は判っていない。報告によれば、患者は旅行をしておらず、感染地域からの訪問者との接触もなく、葬儀への参加もなかった ... 以下、原文 (FORTH 和訳) 参照願います。
[5] HHS [the U.S. Department of Health and Human Services ] launches National Ebola Training and Education Center
情報源 HHS.gov、2015年7月1日。
原文参照願います。
[6] Suspected, vaccines, research, funding
30 Jun 2015: リベリア Liberia's puzzle: どのようにして感染したのか ?
[6月28日に死亡した 17歳の少年[see 20150630.3473496] について、保健当局は当初、マラリア検査が陽性であったため、エボラ感染の検査の遅れを招き、見逃していた。死後、少年から検体が採取され、実施されたエボラ検査が陽性であると判明した後に、安全な埋葬を行うべくあわててチームが送られることとなった ... 少年の自宅は、今も感染拡大が続くシエラレオネやギニアとの国境からほど遠い場所にあり、これら 2か国との国境に近い地域への旅行もしていない ... リベリア国内に再びエボラウイルスが持ち込まれ、患者は、確認されていない感染者と接触した可能性がある。もしそうだとすれば、ウイルス陽性の患者(あるいは患者ら)が感染を拡げる可能性があり、深刻な状況といえる]
1 Jul 2015 リベリア: Liberia quarantines an area where new Ebola case appeared
1 Jul 2015 リベリア: Liberia loses Ebola-free status after new case is confirmed.
1 Jul 2015 ナイジェリア: Ebola--Nigerian govt raises alert level across states
29 Jun 2015 シエラレオネ: 500 army personnel, 400 police officers to contain Ebola in Port Loko
Jun 30 2015 シエラレオネ: Sierra Leone's rich and powerful are breaking the Ebola burial rules
関連項目 (83): Liberia, back 1 month 20 days after 'free' declaration, alert 20150630.3473496

クリミア・コンゴ出血熱-パキスタン (06) PB 疑い
PRO/AH/EDR> Crimean-Congo hem. fever - Pakistan (06): (PB) susp
Archive Number: 20150701.3477885
情報源 Dawn、2015年7月1日。
クリミア ・ コンゴ [ウイルス] 感染 Crimean-Congo virus と見られる女性 1名が、6月30日、the Holy Family Hospital (HFH) に入院した。Kallar Kahar in Chakwal から搬送されたこの患者 The Crimean-Congo haemorrhagic fever (CCHF) patient の症状から、同ウイルスの感染が疑われている。患者の病状は速やかに改善している、と医師は説明した。診断を確定するため、the National Institute of Health (NIH) に検体が送付されており、一両日中に結果が判明すると見られている。CCHF の患者が初めて報告されたのは 1976年のラワルピンディ Rawalpindi で、the Central General Hospital、現在の the Benazir Bhutto Hospitalで患者の治療に当たっていた医師 a Dr Mateen も死亡している。2002年にも, the Holy Family Hospital [FHF] の 25歳の医師も患者を治療中に感染し死亡した。2010年、the HFH で 8人の職員が感染したが、幸い回復している。

トリパノソーマ症 (シャーガス病) -ベネズエラ、死亡、経口感染疑い
PRO/AH/EDR> Trypanosomiasis (Chagas disease) - Venezuela: fatal, oral transmission susp
Archive Number: 20150701.3475040
情報源 Outbreak News Today、2015年6月29日。
寄生虫疾患のシャーガス病感染流行 An outbreak of the parasitic infection, Chagas disease により、ベネズエラのアンデス地方にある、the La Macarena municipality Febres Cordero, Merida state の家族 12人が感染した。保健当局 the Health Corporation (Corposalud) in Merida の医師は、州内の医療チームが治療に当たったが、3人が死亡 (2 infants and one adult) したと報告した ... 食品の取扱や廃棄に衛生上の問題があったことが感染の原因と報告されている。the World Health Organization (WHO) によると、Chagas disease, also known as American trypanosomiasis, は死亡する可能性もある病気で、寄生虫 the protozoan parasite, _Trypanosoma cruzi_ (_T. cruzi_) を原因とする。主にラテンアメリカ 21か国の常在地域で確認されている。世界中でおよそ700-800万人が感染すると見られている。トリパノソーマ _T. cruzi_ parasites は主に、感染のある、吸血性の昆虫 triatomine bugs の糞中に存在しており、寄生虫の糞などを介してトリパノソーマで汚染された食品や、感染している供血者からの輸血、感染した母親からの妊娠中・分娩時の胎児感染、臓器移植、検査室でのミスなどから感染する。