2015年7月10日

ボルナウイルス -独 (02)
狂犬病-米 (22)
髄膜炎菌性髄膜炎-サウジアラビア、ハッジ
日本脳炎など-印 (03)
重症熱性血小板減少症候群-韓、中 など

ボルナウイルス、Borna virus-独 (02) リス、2011-2013
PRO/AH/EDR> Borna virus disease, 2011-2013 - Germany (02): squirrel, human, fatal
Archive Number: 20150710.3502149
情報源 New England Journal of Medicine 373:154-162、2015年7月9日。
原著タイトル A variegated squirrel bornavirus associated with fatal human encephalitis. N Engl J Med. 373:154-162.
[すでに 20150309.3217942 として投稿されているが、全文掲載され、新たな詳細事項が加わっている]
要旨
2011年から2013年の間、3人のリス繁殖業者 breeders of variegated squirrels (_Sciurus variegatoides_) が、類似の症状を伴う脳炎を発症し、2から4ヶ月後に死亡した。次世代遺伝子塩基配列解析法と、リアルタイム定量 PCR (RT-qPCR) 法を組み合わせた、メタゲノミックアプローチ a metagenomic approach を用いることにより、リストの接触者および 3人の患者の脳組織から未知の bornavirus を同定することに成功した。暫定的に variegated squirrel 1 bornavirus (VSBV-1) と命名した同ウイルスは、系統発生学的解析から、既知のボルナウイルス種から枝分かれした系統
a lineage に属することが判明した。
 [Mod.TY - 7月8日発行の Live Science  の中に、"今回の新たな研究において、同ウイルスが脳炎の原因である厳密な証明がなされていない、と研究者自身が指摘している。しかし、さらなる研究結果が積み重ねられるまで、'生死に関わらずリス living or dead variegated squirrels に、エサを与えたり直接触れたりすることは避けることが賢明である' と、the European Centre for Disease Control は述べている。いくつかの残された疑問の仲に、自然界でのウイルスの生息場所はどこで、感染経路は何か、がある。さらに、原因不明の脳炎患者に同ウイルスに対する検査が行えるか、ということも指摘されている" とある。ボルナ病 Borna disease は、1885年にウマでの脳炎 equine encephalitis が流行した、ドイツのサクソニー Saxony, Germany, where にある町の名前 the town of Borna に因み命名された。その後、中欧のヒツジやヤギでも確認された。このウイルスは神経系組織に長時間留まることが確かめられており、ウマ、ヒツジ、ウシ、ネコ、イヌ、ダチョウなど、その種は幅広く、最近ではヒトでも確認された。20080813.2510 でも、Mod.CP がコメントしている。ボルナウイルスがリスで確認されたことは、生物学的には想定内のことである not surprising biologically。 VSBV-1 が脳炎の症例の病原体であることの証拠は、かなり強力だと思われる。より確かとなれば、種を越えて感染した病原体の新たな例となる]

狂犬病-米 (22) WA, KS コウモリ、野生動物 ヒトの曝露
PRO/AH/EDR> Rabies - USA (22): (WA,KS) bat, wildlife, human exp
Archive Number: 20150710.3501034
[1] ワシントン Washington: コウモリ
Rabid bat bites child at Liberty Lake Park
情報源 KREM 2 News、2015年7月9日。
ワシントン州公衆衛生当局 Washington State Public Health Laboratories は [8 Jul 2015] 、4日に Liberty Lake Regional Park  [Spokane County } でこども 1人を襲った 1頭のコウモリが、狂犬病検査で陽性となったことを確認した。このこどもと、自身は咬傷を受けていないその母親とが、コウモリと接触しており、狂犬病ワクチンの接種が行われている。Spokane County では 18年ぶりのケースとなった。
[2] ワシントン Washington: コウモリ
Girl getting rabies vaccines after being bitten by infected bat
情報源 The Spokesman-Review、2015年7月9日。
保健当局 Health district 広報担当者は、母親とその友人とともに公園にいた少女がコウモリに襲われた際に、何も挑発的なことはしていなかった、と説明した。友人が衣服を使って少女からコウモリを引きはがしたが、コウモリはそのまま飛び去ってしまった。その後まもなく、別のグループが同じ公園内のピクニックテーブルにいるコウモリを発見し、プラスチックカップで捕獲した。騒ぎを聞きつけた少女の母親に引き渡されたコウモリとともに、少女は病院を受診した。コウモリはまだ生きていた ... Spokane County では、3頭のコウモリの感染が検査で確認された 2007年以来のコウモリの狂犬病の報告となった ...
[3] カンザス Kansas: animal
Rabies cases rise in Kansas
情報源 High Plains/Midwest Ag Journal、2015年7月9日。
カンザス州動物衛生当局 The Kansas Department of Agriculture's Division of Animal Health は、今年 [2015] に入り、狂犬病症例 rabies cases の報告の増加を認めている。6月30日現在、州内で 69 cases of rabies が報告されている。狂犬病の検査を行っている the Kansas State University Veterinary Diagnostic Laboratory において、2014年の 1年間に確認された症例が 69例だった。2015年の 69例中、13例が飼育動物 domestic animals で、ウシ 9頭、ネコ4匹だった。

髄膜炎菌性髄膜炎-サウジアラビア、感染予防 巡礼時の渡航上の勧告
PRO/EDR> Meningitis, meningococcal - Saudi Arabia: prevention, Hajj travel advice
Archive Number: 20150710.3500894
情報源 Pakistan Today、2015年7月9日。
サウジアラビア政府当局は、2015年のハッジ [ムスリムによるメッカ巡礼] に際し、渡航を計画する全ての人々に対し、髄膜炎菌ワクチン接種を義務づけ compulsory ている。保健省広報担当者は、サウジアラビア外務省が(同国の) 在外公館に対し、巡礼を目的とする査証発給の際に、検疫規則を遵守するよう求める回章を送付した、と述べた。巡礼に向かう者は、サウジアラビアに入国する 10日前までに髄膜炎菌ワクチンの接種を受けなければならない。ワクチンは 3年間有効であるが、妊婦に接種することはできない [しなくても良い?  it is not administered to pregnant women] と説明されている。さらに、保健省の国家科学委員会が、世界各国から到着する巡礼者すべての監視を行う予定であるとも述べている。西部 the western province にある 14ヶ所の港湾に当局者を配置し、巡礼者に混じって入国する感染症患者の監視に当たる。
 [Mod.ML - 毎年、183か国から 200万人以上の人々が、ハッジ巡礼 the Hajj pilgrimage に訪れる。人口密度が高まる intense crowding ことと、巡礼者の髄膜炎菌 _Neisseria meningitidis_ の保菌率が高い high carrier rates ことから、これまでハッジに関連して髄膜炎流行が発生してきた。当初は、1987年の meningococcal serogroup A によるもので、ハッジ参加者への 2価ワクチン the bivalent A and C meningococcal vaccine 接種要求後、serogroup A によるアウトブレイクは起こらなくなったが、2000年と、その後ふたたび 2001年に、巡礼者およびその家族に、meningococcal serogroup W135 による大規模流行が発生した。ハッジ巡礼者に対するワクチン接種要求を、2価ワクチンから 4価 (serogroups A, C, Y, and W135) ワクチンに変更したところ、その後は新たなアウトブレイクは発生していない。Hajj or Umrah の巡礼者は、入国する 10日以前かつ 3年以内の、ACYW135 の 4価ワクチンによる接種証明書の呈示が要求される。ワクチン接種証明書がなければ、ビザ Hajj visas は発給されない。多糖体ワクチン polysaccharide meningococcal vaccines は、集団免疫付与に向かない lack of herd immunity ことと、接種後の保菌が見られる persistence of meningococcal carriage という理由から、結合型ワクチン Conjugated meningococcal vaccines が好んで用いられている。結合型の 4価(serogroups A, C, W135 and Y) ワクチンには、Menveo and Nimenrix の 2種類があり、Nimenrix は破傷風トキソイドに結合させている。

サウジアラビアからの公的情報
- Saudi Ministry of Health Regulations 
- Royal Embassy of Saudi Arabia requirements to apply for a Hajj visa 

米政府からの情報 The US Centers for Disease Control and Prevention (CDC) has also outlined its recommendations for pilgrims during the Hajj: 健康状態が良好な者だけが巡礼に参加し、他のワクチン (ポリオ、インフルエンザ、MMR、DPT 等) の接種状況も確認。髄膜炎菌とA,B 型ワクチン、腸チフスワクチンの接種も奨めている]

日本脳炎など-印 (03) WB
PRO/AH/EDR> Japanese encephalitis & other - India (03): (WB)
Archive Number: 20150710.3499921
情報源 Zee News、2015年7月8日。
北部西ベンガル West Bengal  http://healthmap.org/promed/p/323 州では、今年 5月以降、9人が脳炎で死亡している、と8日、保健当局者が述べた。6人は急性脳炎症候群 acute encephalitis syndrome、3人は日本脳炎 Japanese encephalitis [JE] と診断されている、と North Bengal Medical College and Hospital's の副学長が説明した。このほか、10人の脳炎患者が現在、入院して治療を受けており、3つの地区 -- Jalpaiguri, Alipurduar, and Darjeeling [West Bengal] から新たな脳炎患者 fresh positive cases of encephalitis が報告されている。Assam [state] の患者 1名が含まれている。
 [Mod.TY -これまでにもコメントされてきたように、インド北東部の脳炎に関する記述は複雑で、一部の患者では日本脳炎ウイルスが検査で確定されている一方、多くの患者の診断が、未確定もしくは日本脳炎ウイルスの除外までで終わっていて、他の原因、たとえば、ライ症候群様疾患 Reye syndrome-like disease やライチ摂取 lychee consumption が疑われてきた。上記の患者、および居住地域での、日本脳炎ワクチンの接種状況に関する記載がない。日本脳炎の発生予防には、ベクターコントロールよりもずっと、ワクチン接種が効果的である。とりわけ、ベクターであるイエカ属蚊族 culex vector mosquito の繁殖場所が豊富な稲田地帯では、なおさらである。インド北東部 northeastern India における日本脳炎ウイルスの風土病感染は間違いなく、保有宿主は. Ardeid birds (heron family、サギ科) 鳥類である。

重症熱性血小板減少症候群-韓国、中国
PRO/AH/EDR> Severe fever w/ thrombocytopenia synd. - South Korea, China
Archive Number: 20150710.3499775
[1] 韓国
情報源 The Korea Herald、2015年7月9日。
 H5N1 県当局によると、先月 [June 2015] 以降、韓国国内で合計 4名がダニが媒介する致死性ウイルスにより死亡した。死亡した患者はいずれも 70歳以上の高齢者だった。重症熱性血小板減少症候群 severe fever with thrombocytopenia syndrome [SFTS] と呼ばれるこの病気が初めて報告されたのは 2009年の中国だった。6-14日間の潜伏期間の後、発熱、下痢、多臓器不全、白血球減少などの症状が現れる。2015年初の死亡患者は、済州島 Jejudo Island で農作業中に感染し、6月14日に死亡した 74歳で、その後新たに Gyeonggi and South Gyeongsang provinces の 3人の患者が死亡した。4月から11月にかけての時期には、農作業虫には長袖の衣服を着て、芝生に寝ころぶ際にはマットを敷くよう、アドバイスされている。中国では、致死率が 12%に達している。
 [Mod.TY - ProMED-mail で 2015年の韓国で初めての患者が報告されたのは、South Chungcheong province の地方都市に住む、73歳女性だった。the Korea Centers for Disease Control and Prevention (KCDC) によると、ダニ媒介性ウイルスの感染による SFTS の症状を発症後 3日目の、5月12日に Daejeon の病院に入院した。現在、他の地域に在住の合計 4人の死亡患者が発生していることから、韓国国内各地にウイルスが地方感染している endemic と見てよい。SFTS virus は、ダニが媒介するブニヤウイルス科のフレボウイルス phlebovirus in the _Bunyaviridae_ family である。ある論文によると、主要なダニのベクター the principal tick vector of SFTSV は__Haemaphysalis longicornis_ ticks と考えられているが、_Amblyomma testudinarium_ and _Ixodes nipponensis_ ticks でもウイルスが確認されており、韓国においてベクター potential vectors of this virus の役割を果たしている可能性がある。ダニの体内でウイルスの遺伝子 viral RNA が確認されたとしても、ウイルスを感染伝播させることの確証にはならない (20140705.2589725)]
[2] 中国 (山西省 Shaanxi and other provinces)
情報源 International Journal of Infectious Diseases、2015年6月0日。
原著タイトル The first human infection with severe fever with thrombocytopenia syndrome virus in Shaanxi Province, China. Int J Infect Dis. 2015; 35: 37-9. doi: 10.1016/j.ijid.2015.02.014
背景
2009年、中国で Severe fever with thrombocytopenia syndrome (SFTS) が新興した。2013年7月、西部・山西省 Shaanxi Province において、初めてのヒトの感染例 human infection with SFTS virus (SFTSV) が確認された。
方法
Shaanxi Province 内の an SFTS endemic village において、農業関係者 363人に対象を絞った、血清学的調査 A seroprevalence study among humans を実施した。an ELISA により、血中の抗体 SFTSV antibodies の有無を確認した。
結果
合計 20人 (5.51%) で抗体 SFTSV antibodies が確認された。性別および年齢間の有意差は認められなかった。
結語
山西省に SFTSV ウイルスが広くまん延していることが明らかになった。
討論
湖北省 Hubei Province (6.37 per cent) や浙江省 Zhejiang Province (5.51 per cent) の
報告に近い数字であったが、山東省 Shandong Province (0.84 per cent) と江蘇省 Jiangsu Province (0.94 per cent) と比べ高値となった。これは各研究間の、採血時期、性、年齢、検査法の違いと考えられる。また、いずれの患者にも、発端患者との接触歴はなく、自然界での保有宿主への曝露による感染と考えられた。
 [Mod.TY -同ウイルスの分布として、新たな地方感染地域が加わった]

炭疽-加 SK バイソン
PRO/AH/EDR> Anthrax - Canada: (SK) bison
Archive Number: 20150710.3499232
情報源 Saskatchewan Ministry of Agriculture、2015年7月9日。
Battleford 北西部でバイソンの感染が確定診断されたことにより、サスカチュワン州農業当局 Saskatchewan Agriculture は生産者に対し、炭疽 anthrax への厳重な監視が呼びかけられている