2020年1月26日

新型コロナウイルス-中国(19) 伝播の流れ

新型コロナウイルス-中国(19) 伝播の流れ
PRO/AH/EDR> Novel coronavirus (19): China (HU) Transmission dynamics
Archive Number: 20200126.6918012
[1] Novel 2019 coronavirus transmission dynamics
投稿者 University of Toronto・ David N. Fisman, MD MPH FRCP(C) 2020年1月26日
過去数週間の湖北省 Hubei Province における疫学状況の観察 observations on the epidemiology of 2019-nCoV から ... 様々な情報源からの情報によると,今回の新型ウイルスは,2019年11月ないし12月におそらく武漢の市場 the Wuhan Seafood Market で新興した,動物由来の組み替えベータコロナウイルス a recombinant beta-coronavirus が示唆されている。2019年12月後半に市場に関係する肺炎の集団発生が確認されたあと疫学的解析が開始され,海鮮市場という名前ではあるが,この市場ではたくさんの生きた動物が売られ,野生動物も含まれていた。動物どうしは互いに近い場所に置かれていたことえ,ウイルスの組み替えが起きたのではないだろうか。同じような混在 Similar disrupted ecology が,SARS の発生を引き起こした。生きた動物を売る市場において短期間に,動物由来の新型の病原体による患者が多数発生したことから,動物からヒトへの感染拡大を伴う単焦点からのアウトブレイク a point source outbreak であったことが示唆される。おそらく,初期の約 40例の集団発生は,ほとんどがこのような (動物からヒトへの) 感染伝播によるものであり,ヒト-ヒト感染はほとんど起きていなかったと考えられる。しかし,1月23日の the WHO からの the report of its IHR Emergency Committee for nCoV 報告によると; "第 4世代までの感染伝播 fourth generation transmission" が発生しており,解析では the basic reproduction number (R0,基本再生産数) は between 1.4 and 2.5 と推定されている ... (ref.1)。ほぼ同時期に異なるグループからも Several estimates of R0 が出されており; these estimates were remarkable in their consistency, ranging from 1.4 to 3.8 (refs.2-7) であった。入手可能なデータが限られており,異なる方法が用いられたにもかかわらず,このような一致が見られたことは,これらの推定値にある一定の表面妥当性 face validity を与えている。多数のより大きな小集積 larger case clusters の発生や,スーパースプレッダー super-spreader events (すでに one 14-case cluster in a hospital が確認されている),おそらくは後のより正確な患者数の確認等により,推定値は上方修正される可能性もある ... 最低値 the lower bound R0 (およそ 2) はおそらくほぼ正しいと考えており,nCoV とかなりの遺伝学的相同性を有する,SARS coronavirus の推定値に近い

およそ 1か月間に 4世代までの感染伝播が起きている,RO が 2までの疾患が意味するものは,何だろうか。
この時間経過と軌を一にして,同期間中に確認された症例数が 40例から 600例に増加した。仮に nCoV の a generation time が (SARS と同じ) 約 10日間だとすると,12月後半の the initial 40 cases から,1月上旬に 80 secondary cases (120 total cases); 1月中旬頃に these 80 cases からは,160 incident cases (280 total cases) が生じ, さらに 1月22日に another 320 cases (600 total cases) という計算になる。これは,1月22日に発表された患者数のデータに見事に一致するが,残念ながらそれは正しくなかった。突然に確定患者数が急増 (1月26日に 1423例) したことは,上述のような患者数増加のプロセスには一致せず,a SARS-compatible generation time of 6-10 days にも合致しないだろう。事実,the authors of the MRC [medical reserach council ?] model (3) はこれまでの報告の中で,中国国外で確認された輸出感染例数 the volume of observed exported cases から,その時点で報告数をはるかに上回るより大きな流行が起きていることが予想され,the market-associated outbreak の覚知の 1か月前に,すでに流行が開始していた可能性があると述べており,系統発生学的解析に基づくウイルスの新興時期にも一致する ... カウントされる症例数が実数より少ないと考えられる事の副次的 evidence は,中国全体の平均年齢が 37から 38歳であるのに対し,症例の年齢が高い (平均年齢 59歳) ことと,死亡例はさらに高齢 (初期の 17例の死亡例の平均 75歳) であることに関係する。全人口の平均年齢より患者の年齢が高いことは,(より軽症となる可能性のある) 若年患者が報告されていない可能性がある。患者数が突然増えたように見えることの少なくとも一部は,感染伝播に起きた変化を現したものではなく,これまでカウントされていなかった患者の確認が増加したことによる可能性が高いとみていいのではないか。

R0 がなぜそれほど重要か?
R0 は感染性を有する期間に比例しており,患者が他者を感染させる期間 the infective period of cases を短縮することで,再生産 (感染) 数 the effective reproduction number を減らすことができる。R0 ~ 2 の病原体については,the effective duration of infectivity を 50% 以上短縮することで,the average reproduction number は 1未満となり,経時的にウイルスの感染拡大のコントロールにつなげることができる。対策の実施に伴い,発症から患者が隔離されるまでの平均時間が,6日以上かかっていたものが 1日未満に短縮されたと報告されているのは朗報である。集会や公共交通機関の延期や停止などの,社会的隔離対策 Social distancing measures を,医療従事者の感染防護具の使用などの接触感染対策,によっても,再生産 (感染) 症例数の減少が期待される ...  

average estimates of R0 are helpful ではあるが,(SARS, MERS などの) other beta-coronaviruses は,公衆衛生上,その再生産 (感染) 例の過分散性 (スーパースプレッダーなどにより,感染例が著しく撒き散らされること; the "overdispersion " of their reproductive numbers) が重要であったことを銘記しておくことも重要である。テクニカルに偏らないようにしても,the average R0 (平均) は,各値 the variability in the R0 とは大きな乖離があることを意味する ...
1. 疾患コントロールの可否や方法は,the average R0 により決まる。nCoV と多くの共有点を有するように見える SARS and MERS との類似性から,the spread of this virus should be controllable.
2. Superspreader events の発生 (もしくは既に発生) の可能性が高く,outbreak control efforts が重要: 対応に当たる人は怯み,危険に身をさらすことになる。気管内挿管などの during aerosol-generating procedures 発生時の病院内で起きやすい ...
3. superspreader events は起きない方がよいが,a salutary sign for the control of this outbreak 良いきっかけとなるかもしれない。An average R0 of 2 では... ,疫学上 多くの感染患者は "dead ends" となる。superspreader events はその衝撃性から目立つことが多いが,superspreaders によるアウトブレイクによって,封じ込めの対応策が導かれる結果となる。一方,より平坦なアウトブレイク a more homogeneous outbreak の方が,コントロール策は難しい。
References
1. World Health Organization. Statement on the meeting of the International Health Regulations (2005) Emergency Committee regarding the outbreak of novel coronavirus (2019-nCoV). Available via the Internet at https://www.who.int/news-room/detail/23-01-2020-statement-on-the-meeting-of-the-international-health-regulations-(2005)-emergency-committee-regarding-the-outbreak-of-novel-coronavirus-(2019-ncov).
2. Riou J, Althus C. Pattern of early human-to-human transmission of Wuhan 2019-nCoV. Preprint. Available via the Internet at https://github.com/jriou/wcov/blob/master/manuscript/ncov.pdf.
3. Imai N, Cori A, Dorigatti I, Baguelin M, Donnelly C, Riley S, et al. Report 3: Transmissibility of 2019-nCoV. Available via the Internet at https://www.imperial.ac.uk/mrc-global-infectious-disease-analysis/news--wuhan-coronavirus/.
4. Majumdar M, Mandl K. Early transmissibility assessment of a novel coronavirus in Wuhan, China. Preprint. Available via the Internet at https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3524675.
5. Bedford T, Neher R, Hadfield J, Hodcroft E, Ilcisin M, Müller N. Genomic analysis of nCoV spread. Situation report 2020-01-23. Available via the Internet at https://nextstrain.org/narratives/ncov/sit-rep/2020-01-23?n=0.
6. Liu T, Hu J, Lin L, Zhong H, Xiao J, He G, et al. Transmission dynamics of 2019 novel coronavirus (2019-nCoV). Available via the Internet at https://twitter.com/biorxivpreprint/status/1221529332369281024.
7. Read J, Bridgen J, Cummings D, Ho A, Jewell C. Novel coronavirus 2019-nCoV: early estimation of epidemiological parameters and epidemic predictions. Note that the authors have stated that the R0 estimates here are overestimates and will be revised downward. Available via the Internet at https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.01.23.20018549v1.
[2] Transmissibility of 2019-nCoV
Natsuko Imai, Anne Cori, Ilaria Dorigatti, Marc Baguelin, Christl A. Donnelly, Steven Riley, Neil M. Ferguson
WHO Collaborating Centre for Infectious Disease Modelling, MRC Centre for Global Infectious Disease Analysis, J-IDEA, Imperial College London, UK
Correspondence: neil.ferguson@imperial.ac.uk
Note: This is an extended version of an analysis previously shared with WHO, governments and academic networks between 22/1/20-24/1/20
https://www.imperial.ac.uk/media/imperial-college/medicine/sph/ide/gida-fellowships/Imperial-2019-nCoV-transmissibility.pdf
要約
武漢市のアウトブレイクの規模を説明できるものは唯一,Self-sustaining human-to-human transmission of the novel coronavirus (2019-nCov) である。われわれの 1月18日時点での推定によれば,各症例あたりeach case 平均して 2.6 (uncertainty range: 1.5-3.5) 人の他者を感染させている。これは,an analysis combining our past estimates of the size of the outbreak in Wuhan with computational modelling of potential epidemic trajectories (流跡) の結果である。この結果から,有効なアウトブレイクのコントロールには,60 % 以上の感染伝播ブロックが必要であることを意味する。SARS and MERS-CoV の経験に基づけば,a case of 2019-nCoV からの再生産 (感染) 例の患者数には (各症例ごとに) 大きな幅がある highly variable 可能性がある - すなわち,多くの患者では再生産 (感染) は生じず,少数の患者からは多数の感染例が発生する。現在と同じ勢いで at the same rate 感染伝播が続くかどうかは,中国が実施するコントロール策の有効性と,感染発生地域の住民がどこまでリスク減少行動を取ることができるか,にかかっている。抗ウイルス薬もワクチンもない中,コントロールの成否は,症状のある患者の早期発見と隔離に依存する。現時点で,アウトブレイクを中国国内だけに封じ込めることが可能かは明確ではない; この不確実性は,ウイルスによる疾患の重症度の範囲や,比較的軽症例からのウイルス感染効率などにもよる。可能な限り,感染の可能性のある患者を特定して検査を行うことが必要。
[3] Novel coronavirus 2019-nCoV: early estimation of epidemiological parameters and epidemic predictions
medRxiv 2020.01.23.20018549; doi: https://doi.org/10.1101/2020.01.23.20018549
要約
2019年12月に a novel coronavirus (2019-nCoV) が武漢市で新興したとみられている ... 重要な疫学対策の評価と,流行予測に資する目的で,1月21日までの情報を a transmission model に当てはめた ... the basic reproduction number of the infection (R_0) を 3.8 (95% confidence interval, 3.6-4.0) と推定し,流行拡大阻止のためには 72-75% of transmissions の感染を防ぐ必要があると試算した。武漢市内で起きた感染のうち特定されたのは only 5.1% (95%CI, 4.8-5.5) of infections にすぎず,年初から 1月24日までに武漢市内で感染した患者は 11,341人 (prediction interval, 9,217-14,245) を見込まれた。このまま武漢市内の流行の勢いが衰えない場合,2月4日に 19万人以上 (191,529 infections; prediction interval, 132,751-273,649) が感染すると推定され,中国国内の他の都市も流行状況となり,他国での輸出感染例の発生もより頻繁になると考えられる。われわれのモデルでは,武漢市への渡航制限 travel restrictions from and to Wuhan city が,中国全土への感染伝播阻止に有効である可能性は低い; a 99% effective reduction in travel の制限を行っても,2月4日時点での,武漢市以外での感染流行サイズの減少効果は,わずか 24.9% に過ぎない。
関連項目 Novel coronavirus (18): China (HU) animal reservoir 20200125.6915411

● ニューカッスル病-ロシア OIE
Newcastle disease [NCD] Russia,Recurrence of a listed disease
PRO/AH/EDR> Newcastle disease - Russia: (KS) poultry, OIE
Archive Number: 20200126.6919793
情報源 OIE, WAHID  2020年1月22日
感染開始時期  2020年1月9日
前回流行時期  2020年1月2日
原因ウイルス Newcastle disease virus
新たな感染流行 (2)
Outbreak location 1: Kursk, Kurskaya Oblast [Kursk]: Backyard
Outbreak location 2: Shhigry, Shhigrovsky,, Kurskaya Oblast [Kursk]: Backyard
感染した種/頭数/症例数/死亡/殺処分・廃棄/処理
鳥類 Birds / 37 / 25 / 25 / 5 / 0

● 出血性敗血症,水牛-インド
PRO/AH/EDR> Hemorrhagic septicemia - India: (OR) water buffalo
Archive Number: 20200126.6919673
情報源 Down to Earth - News 2020年1月23日
the Garadapur block of Odisha's Kendrapara の複数の村で,4日間で約 40頭のバファローが死亡し,suspected Sahana disease (hemorrhagic septicemia) が原因と見られている。

● MERS-CoV 研究
PRO/AH/EDR> MERS-CoV (05): research
Archive Number: 20200126.6919398
投稿者 エジプト・Ain Shams University,Dr. Ali Zaki 2020年1月26日
要約 中東呼吸器症候群コロナウイルス Middle East Respiratory syndrome coronavirus は,Vero cells で最大 passage 400 継代された。Next generation sequencing showed progressive deletions leading to total loss of ORF 3, 4a,4b, and most of ORF 5. The transmissibility and virulence of this deletion variant remains to be evaluated ...

ポリオ-パキスタン
PRO/EDR> Poliomyelitis update (11): Pakistan (KP) tribal districts
Archive Number: 20200126.6919131
[1]
情報源 MENAFN 2020年1月26日
Landikotal tehsil in Khyber tribal district において新たに 2例のポリオ患者 more polio cases の発生が確認され,2020年の Khyber Pakhtunkhwa 州内の患者数が 4例となった ...
[2]
情報源 Urdu Point 2020年1月26日
2020年のポリオ感染症例数が 4例となった。Khyber Pakhtunkhwa で 2例,Sindh で 2例 (2019年の症例) が確認され,2019年の症例数は 139例となっている。the Emergency Operation Center (EOS) 当局が明らかにした。